町に続く道をアリスが歩いていると、一人の兵士が倒れていた。
アリスは兵士に駆け寄ると話しかけた。
「どうしましたか? 大丈夫ですか?」
「ああ、私は毒蛇に噛まれてしまったのです。毒は吸い出したのですが、腫れてしまって動けないのです」
そう言って兵士は脚の甲冑を外すと、左足首が酷く腫れていた。
「まあ、可哀想。ちょっと待って下さいね」
アリスは荷物の中から、所々赤い毒消し草と薬草を採りだし、良く揉んだ。
そして、携帯用の小さなすり鉢にそれを入れて、良く擦ってペースト状にした。
「これを塗れば、良くなるはずです。昔おばあさまに教えて貰いました」
アリスが薬を塗り、しばらくすると兵士の脚の腫れが引いていった。
「ありがとうございます。痛みがなくなりました。もう歩けそうです」
「良かった。私はアリス・スミスと言います。森の傍の古い屋敷に住んでいます」
兵士が兜を取ると、栗色の髪が風になびいた。瞳は黒曜石のように輝いている。
「私はブルーノ・ジェファソンです。エルバの町で兵士をやっています」
ブルーノはアリスを見つめて問いかけた。
「どちらまで行かれるのですか?」
「私もエルバの町まで」
アリスはそう言って、荷物を持って歩き始めた。
すると、ブルーノはアリスの隣にならんで、荷物を取り上げた。
「アリスさん、ずいぶん重い荷物を運んでいたんですね。私が町まで持っていきましょう」
「いいえ、大丈夫です。怪我が治ったばかりなのに、無理をしてはいけませんよ」
アリスの言葉にブルーノは微笑んだ。
「大丈夫です。こう見えて丈夫さだけが取り柄なので」
「……それでは、一緒に荷物を持っていただくと言うことでよろしいでしょうか?」
「分かりました」
アリスとブルーノは大きな荷物を真ん中にして、並んで歩いた。
「エルバの町までは後一時間ほど歩けばつくと思いますよ」
「そうですか? 思っていたよりも近いんですね」
アリスはそう言って、ブルーノを見上げた。
精悍な顔立ち、立ち居振る舞いの良さ、きっと町では女性にモテるのだろうな、とアリスは思った。