アリスは一人、森の奥へと歩いて行った。
途中の道は、何者かに踏み荒らされている。
「もしかして、おばあさまのメモにあったドラゴンが復活してしまったのかしら?」
アリスは注意深く歩いて行くと、森の奥の小さなほこらに着いた。
しかし、ほこらは壊されていた。
「このほこらには、氷のドラゴンが封じられていたはず……ブルーノ様は無事かしら?」
アリスは辺りの木々に訊ねた。
「この辺りに人が来ませんでしたか? え? 先月頃に二人組の男女、今日は男性が一人ですって?」
アリスは木々に礼をして、森の更に奥に入った。
ドオオンと地響きがする。
アリスは身構えながら音のする方に向かった。
「ブルーノ様!?」
「アリスさん!? どうしてここに!?」
氷のドラゴンと戦っていたブルーノは、腕に怪我を負っている。
アリスは大地に手を当てて、呪文を唱えてから呟いた。
「大地の精霊よ、私たちを守って下さい」
すると大地から蔓が伸び、ドラゴン体に巻き付き、その動きを封じた。
「では、とどめを!」
立ち上がり剣を構えるブルーノにアリスは言った。
「止めて! ドラゴンさんを傷つけないで!」
「では、どうするのですか!?」
ブルーノの問いかけにアリスは答えた。
「ドラゴンを封印します」
アリスは小さなカバンから、青く光る魔石を取り出し呪文を唱えた。
「ドラゴンさん、ごめんなさい。もう一度、眠りについて下さい」
アリスはそう言ってから魔石をドラゴンに向かって投げると叫んだ。
「ドラゴンよ、その力を封じます」
魔石が輝き、ドラゴンはゆっくりと倒れ込んだ。
アリスは壊れたほこらから、大きな水晶を取り出し、代わりに青く光る魔石を置いた。
「これで、ドラゴンはしばらく力を失うでしょう」
「アリスさん……」
アリスは力を使い果たしたのか、ぐったりとしている。
「ブルーノ様、回復薬を飲んで下さい。私のカバンの中に入っています」
「分かった。ありがとうアリスさん」
アリスはブルーノが回復薬を飲んで、傷が治っていくのを見てホッとしたのか、そのまま意識を失ってしまった。