年が明けて数週間経った頃、アリスは庭の異変に気付いた。
「あら? 花壇が荒らされてるわ? 一体どうしたのかしら?」
アリスは踏み潰された花を抜き去り、新しく種をまいた。
「お花を踏み潰すなんて、白蛇さんはそんなことはしないでしょう?」
残された花たちに話しかけて、アリスは体をこわばらせた。
「……何ですって!? 魔物が現れたの?」
アリスは残っていた花たちの話を聞いて、戦慄した。
「おばあさまの魔除けの呪文で家は守られたようだけど、町の人は大丈夫かしら?」
アリスは急いで町に駆けつけた。
「ブルーノ様、いらっしゃいますか?」
アリスはブルーノが泊まっている宿に行くと、店の従業員に尋ねた。
「あなたは?」
「私は森に住んでいる、アリスと申します」
「ああ、アリスさんか。ブルーノさんは討伐のため、今日の朝から出かけているよ?」
「そうですか。ありがとうございます」
アリスは町の様子に変わりが無いことを確認して、森に帰った。
「ブルーノ様、大丈夫かしら? 花壇の荒れ方を見ると、ずいぶん大きな生き物みたいだけれども……」
アリスは少し震えながら家に入ると、二階にあがり森の奥に視線を向けた。
「私に出来ることは無いかしら?」
アリスは祖母の残したメモを見ながら考えた。
「あら? これは魔封じの呪文だわ! これを覚えれば、また魔物を封印できるかもしれないわ」
アリスはそう言って、祖母の残した呪文を記憶し、家を出る準備を始めた。
「これでブルーノ様のお役に立てるかもしれない……。森の奥まで、行ってみましょう」
アリスは決心し祖母のメモと、いくつかの回復薬を小さな肩掛けカバンに入れて、森の奥に向かって歩き出した。