「フォーコ、死になさい」
「は? 小娘が何を言うんだい?」
フィーコは一瞬笑ったが、顔をこわばらせた。アリスから恐ろしいほどの魔力を感じたからだ。
「……インフェルノ……!!」
アリスが呪文を唱えると、フォーコの周りに、いくつもの火柱が立ち上った。
「何!? 炎の魔女の私に、炎の魔法を使う気かい? ふざけるのも大概に……」
フォーコはアリスの作り出した青い火柱に囲まれたまま呪文を唱えた。
「ディスアピア! 炎よ、消失せよ!!」
しかし、アリスの青い炎は消えることはなかった。
「アリス、殺してはいけない……」
「……」
ブルーノの言葉はアリスには届かなかった。アリスの目は虹色に輝いたままだった。
「これで、最後です!! 消えなさい、フォーコ!!」
アリスが両手を天にかざすと、大きな火球が空から降ってきた。
「アリス!!」
ブルーノが叫んだ。
アリスの目から不思議な輝きが消えた。
「え……? 私……」
アリスの目の前で、フォーコが燃えさかっている。そしてフォーコは焼け尽くされた。
「私、何てことを……!?」
アリスは燃え尽きたフォーコの灰を見て、愕然とした。
その場に座り込んだアリスの肩に、ブルーノは手を置こうとして、止めた。
「ブルーノ様……?」
「アリスさん、フォーコは寿命を迎えたと報告しよう」
ブルーノはそう言うと、アリスのことをじっと見つめた。
「何故ですか?」
アリスはブルーノの固い表情を見て、不安になった。
「……アリスさんの魔力が暴走すると、フォーコよりも国の脅威になると王子は判断するだろう」
ブルーノは自分に言い聞かせるように、ちいさな声で言った。
「それはどういう意味ですか?」
魔力が尽き重くなった体を、両手で支えながらアリスはブルーノに尋ねた。
「分からないか? アリスさん? 事と次第によっては、私は貴方を殺さなければならなくなる」
ブルーノの瞳の中に、今まで見たことのない表情が浮かんでいる。
それは、アリスに対する恐怖の色だった。