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《参考資料〇七番 手記らしき汚れたノート》


 後ろから声を掛けられた。

 何でも知ってる、金色のカタツムリだ。


〈危ない、危ないよ!〉


 僕は答える。


 ――危なくなんてないよ。


〈ピエロが来るよ。近付いてくる。

 真っ白、のっぺりなピエロが来るよ!〉


 ――ピエロだからね。


〈見ちゃダメだよ! 小さいんだ、ホントは!

 とっても、とっても、とっても!〉


 ――小さかったら見えないよ。


〈でも見えるよ。でも見ちゃダメなんだ!〉



 ……ふと、気付いた。

 金色のカタツムリの向こうに――。



 色とりどりの、風船が見えた。



〈ダメだよ! 知ってしまう!〉



 ――ぞくりとした。


 風船を持った小さな男の子が、見えた。



 ……見てしまった。




  ※ここで途絶える。

   多分記憶に留まった最初の夢。


     でも、もう何度目?



       つまり、あれがそうなのか?




   ――――――――――――――――――




  日にちを数え始めてから、1ヶ月ほどになる。


 いくら美しいと言われるような光景でも、

  ずっとそれだけを見続けるとなると拷問だ。



  目を背けたくなるトラウマと何も変わらない。



   責め苛むように嫌みたらしく金色に輝き、


    世界を毒々しい赤に塗りたくって、


  まだその位置から昇ることも沈むこともせず、

     水平線にもたれ掛かって。



    太陽は、僕らを嗤っている。



  ――あの目と同じ。あの目と同じだ。

      無機質に、僕らをただ嗤っている。





      小さな違和感が拭えない。

               本当なのか?




           まさか



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