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第26話 潜め!兎と犬と猫のかくれんぼ②

結界シールド!」

兎田山うだやまが展開する『スキル』で、全方位に結界が張られた。


雷鳴刃サンダーアタック!」

一閃射フラッシュショット


 ゴブリンナイトが袈裟斬りになる。

 跳ね返る返り血も、 結界シールドは防いでくれた。


犬丸いぬまるの魔弾はゴブリンレンジャーの脳天を見事撃ち抜いている。


「便利だな、 結界シールド!マジで向こうの攻撃は阻むし、こっちから攻撃し放題じゃねえか」

「レベルも四にあがったわ!」


 エンドゲートに再度潜り、アルタ村の裏手の林でレベリング中だ。

 兎田山は何度か休憩を進言したが、犬丸たちが狂戦士化したように戦うのでゴブリンを宿敵のように屠っている。


 兎田山も、 結界シールドのレベルが五にあがり、合間に放つ水斬撃ウォータースラッシュはレベル六にあがった。


 魔力ポーションは、鹿下かのしたの好意で買えるだけ買ってある。それぞれマジックバッグから、水がわりに魔力ポーションを飲んでいた。


 当初、せっかく隠密のブレスレットをしているのだからバレないように無言で狩りをしていたのだが、詠唱なしだと『スキル』の威力は落ちる。


 そこから、『スキル』詠唱を始めてるうちに少しくらい話をしていても見えなきゃバレないのではないか――にシフトして今に至った。


 ゴブリンたちからしてみれば、声は聞こえど姿は見えず、一方的に攻撃されてたまったものではあるまい。


「この林を抜けると、ラビットゾーンです。途中からフロッグ系もきますが、大丈夫ですか?」

「ええ、いけるわ」

「カエルかよ……」

 犬丸の声に嘆きが混じる。


「確か、ラビットゾーンの途中で無人売店があるはずなんです。スコラ平原の『転移石』が売ってるそうです」

「その『転移石』があれば、ゲートからまた一気にいけるわけだな?」

「便利ね、魔道具って一番異世界って感じがするわ」


 大まかな地図は、アルタ村でエンテたちに教えて貰って書き込んだ手づくりのものだ。

 自衛隊たちはそれぞれ情報共有しているので、最新の地図を持っているようだが、一放浪者ノーマッドたちとなるとそうはいかない。


 足で歩いて自作する。情報は金なのだ。


「僕は翻訳トランスレーションで読めますが、おふたりはアルタ村の『転送石』と間違えないように気をつけてください」

「えっ他の方はどうしているのかしら」

「戦闘の『ジョブ』についてる方の多くは翻訳トランスレーション鑑定アプレイズも持っていませんから、空白部分に油性マジックで直接書くようです」

「異世界情緒ォ死んでるじゃねーか、いいのかそれで」

「間違えて他に転送されるよりはマシなのでは?」


 一段落して、倒したゴブリンから『魔核』を取り出す。犬丸たちも大分手慣れてきた。


「スライムと違ってゴブリンからは素材とれねーんだよな?死体ってどうなってんだ?」

「一定時間置くと、消えているそうですが――しっ!お静かに」


 ぴたりと三人は動きを止める。遠くから聞きなれた声が聞こえてきた。


「リアム、犬丸はいたかい?」

「わっかんねーよ、全然気配が……ぶえっくしょい!」

「汚いです空鷲先輩、気合いいれて止めやがれです」


 トリプルおバカユニットだわ――猫宮が密やかに呟く。

 隠密のブレスレットはどうやら効き目があったようだ。


「村に行ったのかもしれない、出入口を見張ろう」

「わーかったよ、いくぞ、ブラックウルフ!」

「はい、四狼先輩!!」


 トリプルおバカユニットは、空鷲のテイムするブラックウルフに一人ずつ騎乗すると、アルタ村の方角に駆け出していく。


「もう村には荷物置いてったっつーの、バーカ」

犬丸が小声で毒づいた。


 兎田山としては、四狼の空中移動スカイムーブメント以外に、空鷲のブラックウルフでの移動方法もあることが分かって脅威判定は更に上がることとなる。


「まだまだ諦めそうにないですね」

「レベルあげ、頑張りましょう!」


 猫宮の声には、挫けた様子がない。

 兎田山は、さすが推しだと感心した。

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