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第28話 未知の世界②

「固いわ……!!」

結界シールド!」

スコラ平原で、兎田山うだやまたちは苦戦していた。


ゴブリン相手では難なく耐えていた、レベルのあがった 結界シールドが、二体のキラーラビットの突撃によって数分置きに砕ける。

特に今対決しているビッグラビット――大きさは成人男性並の高さ――肉も分厚く剣激が入りにくい。


一閃射フラッシュショット!」

犬丸いぬまるくん、キラーラビットに集中してください!動きが早くて僕の水斬撃ウォータースラッシュは当てにくいです」

「くそっ!ゴブリンとじゃこんなに格が違ぇのか!」


兎田山と猫宮ねこみやは正面のビッグラビットを、犬丸は動けない三人目掛けて飛びかかるキラーラビットをターゲットに連携しながら次道に進む。


雷鳴刃サンダーアタック!」

雷鳴と共に、肉が裂けて焼ける音が響いた。ビッグラビットは一瞬グラりとしたが、重い前進は続いた。


水斬撃ウォータースラッシュ!」

兎田山の『スキル』が、ビッグラビットの目を抉る。見えなくなった虚ろな眼窩から、青い血が流れ出した。


雷鳴刃サンダーアタック!」

一閃射フラッシュショット


猫宮の『スキル』はビッグラビットの急所に当たった。そこへ追い討ちの犬丸の『スキル』がとどめを刺す。

どうやら、分厚い胸肉が弱点だったらしい。


ビッグラビット一匹の討伐で、総力戦。

しかし、気を引く暇もなく別のキラーラビットが兎田山のバリアシールドを破った。

結界シールド!」


再び張り治して、兎田山はビッグラビットの死体をアイテムボックスに丸ごと収納する。犬丸も倒したキラーラビットの死体を無理やりアイテムボックスにしまった。


「中間距離まで走りましょう!立ち止まったままなら延々と攻撃されます!」


全員が汗だくのまま、走れるだけ走る。途中、幾度となくキラーラビットの突撃で 結界シールドを破壊されつつ、張り直して駆けた。


「あれじゃねえか?!」

犬丸が指さしたのは、なにやら黒く塗られた台座のようなものだ。


日本ではお昼すぎ――異世界では夜中――を過ぎて、ゲートの中は空がしらみ始めている。


「あれですね、多分!」

「まだ少し遠いわね」

何百メートル走ったのか、犬丸の呼吸も切れ始めたところで謎の台座にたどり着いた。


「これは……はぁはぁ……どーなってんだ?」

台座には、コインが入るくらいの小さな穴が空いていて、ほかには異世界語の表記があるだけだ。


「えーとなになに……代金はここへ。スコラ平原の『転送石』が欲しい者は一つ銀貨十枚入れてください」

「どっから『転送石』が出てくんだ?」

「いれればわかるでしょう、どの道我々はこちらの通貨には困ってない――でしょう?」


ソース類とウエットティッシュで金貨もかなり溜まっている。その商人のシュトルトの配慮で、銀貨や銅貨も混ぜて支払って貰っていた。

兎田山が銀貨十枚を穴にいれると、台座の下からぽとりと『転送石』が落ちる。


「なるほど、銀貨の重さと枚数で自動に出てくるんですね」

「次は私がやってみるわ――でも、さっきからキラーラビットも襲ってこないのは何故?」

「この台座、魔物避けのお香で塗り込められていますね。それで破壊されずに済んでるみたいです」


魔物避けの香にも、上級と下級があるそうだが匂いのキツさからこれは上級のようだ。

アルタ村でも下級の香を毎日焚いているが、ビッグスパイダーなどの大物には効かないのだった。


「魔物避けね、俺らは避けてらんねぇが」

「今夜は異世界こちらで休むでしょう?寝る時用に魔物避けのお香は買ってありますよ」


犬丸も猫宮も無事、『転送石』を入手する。

おおとりが、半年もすればラビットを倒せると言っていたが、その言葉を今思い知っていた。


「問題はここからですね――スコラ平原のど真ん中なわけですが、このまま進んで湿地帯の側までいけば、カナヤ村につくわけですが」

「ここでレベル十まで戦って、出た『スキル』に賭ける?」


猫宮がまあまあ物騒な提案をした。さすがに兎田山は息を呑む。

犬丸は、猫宮の意見に納得しかけたが首を振った。

護衛としても、その作戦は出たとこ勝負のリスキーがすぎる。


「もっと安全策をとりてぇな。ここまでの魔物の強さだと、ぶっ倒しながら進むのは危険すぎる。ちょくちょく魔物避けの香を使いながら休憩とって、カナヤ村を拠点に地道にレベルあげてーな」


「まだ距離もありますし、既に歩き通しですからね、そうしませんか?猫宮さん」


犬丸にスポーツタオルを渡されて、顔を拭いていた猫宮が顔をあげる。

その目には、まだまだ不敵な光があった。

「ええ、行きましょう。でも、私、まだまだ動けるわ」

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