「固いわ……!!」
「
スコラ平原で、
ゴブリン相手では難なく耐えていた、レベルのあがった
特に今対決しているビッグラビット――大きさは成人男性並の高さ――肉も分厚く剣激が入りにくい。
「
「
「くそっ!ゴブリンとじゃこんなに格が違ぇのか!」
兎田山と
「
雷鳴と共に、肉が裂けて焼ける音が響いた。ビッグラビットは一瞬グラりとしたが、重い前進は続いた。
「
兎田山の『スキル』が、ビッグラビットの目を抉る。見えなくなった虚ろな眼窩から、青い血が流れ出した。
「
「
猫宮の『スキル』はビッグラビットの急所に当たった。そこへ追い討ちの犬丸の『スキル』がとどめを刺す。
どうやら、分厚い胸肉が弱点だったらしい。
ビッグラビット一匹の討伐で、総力戦。
しかし、気を引く暇もなく別のキラーラビットが兎田山のバリアシールドを破った。
「
再び張り治して、兎田山はビッグラビットの死体をアイテムボックスに丸ごと収納する。犬丸も倒したキラーラビットの死体を無理やりアイテムボックスにしまった。
「中間距離まで走りましょう!立ち止まったままなら延々と攻撃されます!」
全員が汗だくのまま、走れるだけ走る。途中、幾度となくキラーラビットの突撃で
「あれじゃねえか?!」
犬丸が指さしたのは、なにやら黒く塗られた台座のようなものだ。
日本ではお昼すぎ――異世界では夜中――を過ぎて、ゲートの中は空がしらみ始めている。
「あれですね、多分!」
「まだ少し遠いわね」
何百メートル走ったのか、犬丸の呼吸も切れ始めたところで謎の台座にたどり着いた。
「これは……はぁはぁ……どーなってんだ?」
台座には、コインが入るくらいの小さな穴が空いていて、ほかには異世界語の表記があるだけだ。
「えーとなになに……代金はここへ。スコラ平原の『転送石』が欲しい者は一つ銀貨十枚入れてください」
「どっから『転送石』が出てくんだ?」
「いれればわかるでしょう、どの道我々はこちらの通貨には困ってない――でしょう?」
ソース類とウエットティッシュで金貨もかなり溜まっている。その商人のシュトルトの配慮で、銀貨や銅貨も混ぜて支払って貰っていた。
兎田山が銀貨十枚を穴にいれると、台座の下からぽとりと『転送石』が落ちる。
「なるほど、銀貨の重さと枚数で自動に出てくるんですね」
「次は私がやってみるわ――でも、さっきからキラーラビットも襲ってこないのは何故?」
「この台座、魔物避けのお香で塗り込められていますね。それで破壊されずに済んでるみたいです」
魔物避けの香にも、上級と下級があるそうだが匂いのキツさからこれは上級のようだ。
アルタ村でも下級の香を毎日焚いているが、ビッグスパイダーなどの大物には効かないのだった。
「魔物避けね、俺らは避けてらんねぇが」
「今夜は
犬丸も猫宮も無事、『転送石』を入手する。
「問題はここからですね――スコラ平原のど真ん中なわけですが、このまま進んで湿地帯の側までいけば、カナヤ村につくわけですが」
「ここでレベル十まで戦って、出た『スキル』に賭ける?」
猫宮がまあまあ物騒な提案をした。さすがに兎田山は息を呑む。
犬丸は、猫宮の意見に納得しかけたが首を振った。
護衛としても、その作戦は出たとこ勝負のリスキーがすぎる。
「もっと安全策をとりてぇな。ここまでの魔物の強さだと、ぶっ倒しながら進むのは危険すぎる。ちょくちょく魔物避けの香を使いながら休憩とって、カナヤ村を拠点に地道にレベルあげてーな」
「まだ距離もありますし、既に歩き通しですからね、そうしませんか?猫宮さん」
犬丸にスポーツタオルを渡されて、顔を拭いていた猫宮が顔をあげる。
その目には、まだまだ不敵な光があった。
「ええ、行きましょう。でも、私、まだまだ動けるわ」