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第三章 五話「交錯する因縁と新たな一歩」

「どした? なんかあったのか?」


 ガイの問いに、ルークは歩きながら今日起こった一連の出来事を二人に話した。


 話を聞き終えたガイとララは、小難しい表情を浮かべる。


「あー……一通り聞いたけど、意味わかんねぇな。ルークは別に悪くないだろ」


「私もそう思う。むしろ、ミレーナさんの方がしつこいよ。なんか、ルークにだけヘイト向けてる感じがするし」


 二人の見解を聞き、ルークは少し肩の力を抜いた。だが、そうなるとますます、ミレーナの敵意の理由がわからない。


「てか、そのミレーナって……ミレーナ・コールソンじゃないのか?」


 ガイが口にしたフルネームに、ルークは首を傾げる。


 そんなルークに、ララが補足を入れる。


「ルーク、知らない? ハボック商会の設立時に大口の資金援助したコールソン子爵。その娘さんだよ、たぶん」


 ララの説明を聞き、ルークはセモルがミレーナを「嬢」と呼んでいたことを思い出す。


 なるほど、と腑に落ちた。


「で、なんでそんなお嬢様が俺だけ目の敵にしてるんだ?」


 再び投げかけた問いに、ガイもララも答えられず、黙り込む。


 三人で考えながら歩いていると、やがて寮の分かれ道にたどり着いた。


「一回、私の方でも調べてみるよ! わかったら連絡するね!」


 ララが元気よく手を振り、女子寮の方へと別れていく。


 ルークとガイもそのまま男子寮へ向かった。


 寮のエントランスを開けると、賑やかな喧騒けんそうに包まれた。


「おー? やっぱ受かってたか、ルーク! こっちこいよ!」


 筋肉質な体に派手なアクセサリーをじゃらつかせた生徒――ロイドが大声で呼びかけてくる。


「……何やってんすか、ロイド先輩」


「けっけっけ、てめーらヒヨッコの入学祝いだッ!」


 肩を組まれ、強引に引き寄せられる。


 ルークは苦笑しながら、ガイに小声で告げた。


「終わった二次試験で、すんなり負けてくれた“先輩”だ」


「ああ……なるほどな」


 ガイは苦笑いしながら、納得した様子で頷く。


 そんな空気を察することなく、ロイドは嬉しそうに笑った。


「細けぇことはいいんだよ! 今日はお前らが主役だ! 楽しめ、赤髪の坊主もな!」


 強引にルークとガイは、パーティの中心に引きずられていった。


 エントランスに並ぶ机には、豪華な料理や飲み物が所狭しと並べられ、各学年入り混じって盛り上がっている。


「今日はダンジョン行ってた奴らも多かったのに、結構戻ってきてるな」


 飲み物を手に戻ったガイが、ルークにもグラスを渡しながら言う。


「さんきゅ。朝からギルド行ったのか?」


「ああ。新種の魔物が出たらしくて、調査クエストが出てたんだと」


「新種か……それはそりゃ皆戻ってくるわな」


 魔素を吸って進化した魔物の素材は貴重だ。


 価値も高く、研究対象としても引く手数多。


 ただし、それ相応の危険も伴うのも事実。


「なぁ、ルーク。お前も一緒にダンジョン行かねぇか?」


 ガイの誘いに、ルークは少し考え込んだ。


「ビギナーランクじゃ、新種が出るダンジョンは無理だろ?」


「それがさ、今日いくつかクエスト回ったら、俺とララ、Eランクに昇格してたんだよ。条件はわからねぇけど、いくつかこなせばランク上がるっぽい」


 ガイはにやりと笑う。ルークも内心、興味はあった。


 けれど――


(ミレーナのことが、まだ頭に引っかかってる)


 ルークの迷いを察したのか、ガイが肩を軽く叩く。


「放っとけよ。考えたってしょうがねぇだろ。お前はお前で、楽しめ」


 その言葉に、ルークは小さく笑った。


「……そうだな。明日、クエスト受けてみるよ」


「よっしゃ! 終わったらリンクで連絡してくれ! 俺たちも合流するからさ」


「ああ、わかった」


 二人はグラスを合わせ、乾杯の代わりに笑い合った。


 この夜――ルークは、先輩たちに絡まれながらも久しぶりに心から笑い、楽しい時間を過ごすのだった。

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