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第18話 今、カケルがエッチなことを考えましたっ!

 俺の監視ね、けっこう緩い監視ではあるんだけど、血が濁るからって理由で、純潔は保たないといけないってきつく言われているんですわ……。超悲しいっ!


「勝手にそういうことをしたのがバレると、処罰の対象なんすわ……」


 わりと重めの。

 たぶん一生投獄される系?


 チヒ姉が俺の腕を取って再び抱き着いてくる。


「バレないようにこっそり……しよ?」


 その容姿でその発言は……小悪魔過ぎるでしょ! つい頷きそうになっちゃうから、ちょっと離れてもらって良いですか⁉ あとさ、やたらと良い匂いがするし、理性的なものの限界とかね? 法律を守る紳士……の前に思春期真っただ中の男の子なので!


「つ、通報しておいたわ」


 スマホを片手に震えているアヤ。


「えっ?」


「不純異性交遊の現行犯を取り押さえましたって」


「ちょっと、アヤさん⁉」


 マジで言ってるの、それ⁉

 部活中に不純異性交遊なんて、不祥事が過ぎるし、この部活が廃部になっちゃうのでは⁉


「オラ~! 私に無断でイチャついている異性ってのはどいつらだ~? 殺すぞっ!」


 うわー、咲坂先生サッキーだー。通報して1分も経っていないぞ?

 なんかめっちゃオラついているし、私怨が入っているっぽい発言でヤバいな。


「こ、この露出狂です!」


 アヤが震える指でチヒ姉を指さす。


 アヤさん容赦ないっすね。

 しかも露出狂って……。

 咲坂先生露出狂チヒ姉露出狂を取り締まれって、ちょっとウケるな。


「なんだ、お前か。来て損したわ」


 咲坂先生サッキーは、チヒ姉のことを見て小さくため息を吐いた。


「先生、新入部員がカッちゃんだってどうして教えてくれなかったんですか⁉」


 ああ、そういえばチヒ姉は事前に聞かされていなかったっぽいね。

 俺が部室に入った時、めちゃくちゃ驚いていたし。


「感動の再会、だっただろ? 懐かしさを武器に多少は燃え上っても良いが、絶対に最後まではヤルなよ? 私の管轄内でそんな事件を起こされたら、私が処罰されちまうからな」


 この悪魔族、やっぱり無茶苦茶だな。

 俺の童貞よりも、保身のほうが大事っすか? 無能力者アンチの血って、かなり貴重らしいっすよ? あんまり自覚ないけど。


「どこまでなら……平気なんですか……? キスはセーフですか? 触りっこくらいなら……」


 チヒ姉も攻めるねー。

 でも、そういう生々しい話は、本人のいないところでお願いしますよ。どんな顔をしてそれを聞いていれば良いのかわからないんで。


「そりゃ、最後までヤラなきゃ平気だろ」


 最後って何なんですかね?

 ちょっと俺も知りたいかもしれない……。男のそれって、要は気持ちの問題な気がするんだよなあ。女みたいにそういう証みたいなのはないじゃん? 言った者勝ちみたいな?


「許されるのは味見までです」


 と、プレハブ小屋に次の来訪者が。


「レオンさん」


「ちっ、良いところで。……≪上級監察官≫殿! 我が『占い魔術研究部』にようこそ。いかがいたしましたでしょうか!」


 咲坂先生サッキーが最敬礼でレオンさんを迎える。


 レオンさんが≪上級監察官≫で咲坂先生サッキーが一般の≪監察官≫だから、2人の立場には大きな違いがあるらしい。≪監察官≫の組織って、わりと体育会系のノリみたいで大変そう。


「通報があったので様子を見に来ました」


 アヤは咲坂先生サッキーだけじゃなくて、レオンさんも呼んでいたのか。

 まあそりゃそうか。

 俺のことをどうにかしたかったら、身内に相談したほうが手っ取り早そうだもんな。


「カケルンの童貞卒業の定義について議論をしていた、それで間違いありませんか?」


 レオンさんの呼びかけに、女性陣全員が神妙な顔をして頷く。


 え、この話題まだ続くの? 俺の童貞煽りでふざけているんだとばかり……。マジなのはちょっと……。


「定義について語る前に、まずはカケルンが本当に童貞かどうか確かめさせていただきます」


「えっ、どうやってですか⁉」


 レオンさん? なんで無言なんですか……?

 なんでちょっとずつ近づいてくるんですか⁉


「軽く試せば、そのぎこちなさですぐわかるでしょう」


 人のズボンに手を掛けるんじゃない!


「軽く試した時点で、卒業しちゃっていると思うんですが……?」


「私としたことがうっかりしておりました。途中までにしておきましょう」


「途中って何⁉」


 だからズボンを脱がそうとするな!

 ちょっとアヤ、助けなさい! 

 耳まで真っ赤になりながら、顔を覆った手の隙間からチラ見しなくて良いから! お前は古典作品のヒロインか何かなのか⁉ って、チヒ姉もかよ! その初心な感じは顔に似合ってないからね! 何? この部活ではそのベタベタな演出が流行っているの⁉


「カケルン、冗談ですよ」


「なんだ冗談ですか。もう、レオンさん、そういう冗談はやめてくださいよー。俺、政府に逆らって一生収監されるのなんて嫌ですからね?」


「私も!……パートナーのカケルが収監されたら困るわ!」


 アヤはいつまで顔を真っ赤にしているんだ? ズボン脱いでないから、普通にこっちを見ても平気だよ。


「カッちゃん、そうなる前に世界の果てまで一緒に逃げましょう!」


「世界の果てって言われてもな。この≪特別自治区≫はそんなに逃げられるほど広くはないと思うんだけど……」


「逃げても無駄です。カケルンの脳には発信機を埋め込んでありますから、≪上級監察官≫の私なら、こうしてすぐに駆け付けることができます」


「脳に発信機⁉ またまたご冗談を……」


 えっ、なんでニコニコしているんですか?

 冗談……じゃない⁉


「カケルン、冗談ですよ」


「また騙された……」


 レオンさんは表情からホントかウソかが読み取れないんだよな……。

 アヤくらいわかりやすければ助かるのに。


「でも≪パートナー契約≫を結んでいるお嬢様なら、カケルンの居場所くらいはすぐにわかると思います」


「≪パートナー契約≫ってそういうものなんですか⁉ アヤ、わかるの?」


 それは初耳だわ。


「え、ええ、なんとなくならわかるわ。カケルがいる方角やカケルの抱いている感情は読み取れていると思うわ」


「感情も⁉ た、たとえばどんな……?」


 方角は良いとしても感情って……いろいろあるよね?


「私と話をしている時にエッチなことを考えているかどうか、かしらね」


「……そんなこと考えたこともございませんが何かの間違いではないでしょうか」


 マジかよ……。

 マジヤバかよ……。


「なるほど、とても興味深いですね。≪パートナー契約≫は相性に左右されると言われていますし、魂の混ざり具合によって、そういった作用が現れることもあるのでしょうか。感情の共有はこれまで報告にない事例ですね」


「竹井カケルの特異な血のせいなのかもしれんな。大変興味深い」


 レオンさんと咲坂先生サッキーが俺の体をベタベタと触りだす。

 ≪監察官≫としての調査だとはわかっているんだが、2人とも……ちょこちょこ胸が当たっているんですよ?


「今よ!」


 アヤが険しい表情で俺の顔を指さしてくる。


「何⁉」


「今、カケルがエッチなことを考えましたっ!」


「あ、当たってる!」


 マジで当たっていて、死ぬほど嫌だーーーーーーーーー!

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