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第7話 モヤモヤ

 山岸さんが先に帰ってしまい、優星先輩と何となく気まづい雰囲気の中、美味しい生ハムとチーズを食べながら、赤ワインをいただく。


「う〜ん、美味しい〜!」思わず生ハムの美味しさに呟いてしまった。

「おお、そうか、じゃあ俺も」と食べている優星先輩。

「うん、美味い!」と喜んでいる。

「でしょう!」

思わず笑い合ってしまった。


──意地悪言わないで、ずっとこうして笑っていれば良いのに……


すると、

「ん?」と聞くので、また、私はアルコールの力を借りて、有ろうことか、

「そうやって、ずっと優しく笑ってる方が良いのに!」と言ってしまった。

「え?」


もう、こうなったら、先輩も後輩もない!

「笑えるんじゃないですか!」と失礼なことを言っていた。

なのに、

「フッ、そりゃあ、俺だって笑うよ」と言った。

「ふ〜ん、いつも私には意地悪なドS先輩ですけど?」とも言っていた。

「それは……お前が、揶揄い甲斐があるからだ」と言った。

「はあ〜? いつまで子どもなんですか? ったく……」と怒ったのに、


しばらく黙ったまま見られていたような気がした。

「ん?」

──今のは流石にヤバかった? 

と思ったが、

「いや……」と言ってワイングラスに口を付けていた。


そして、

「お前、優輝のことは、どうすんだ?」と聞かれた。

どうもこうも、彼女さんがいるのだろうか? とただただ気になっている。

だから、せっかく連絡先を教えてもらったので、連絡して聞いてみようとは、思っている。

と話すと、

「ふ〜ん」と言った。


──ったく、なんなんだ! 

何もしないよりかは、たとえ撃沈したとしても告白してスッキリした方が良いかもって、せっかく決めたのに……


「はあ〜もうお腹いっぱい! 山岸さんも帰ってしまったことだし、そろそろ帰りましょうか?」と言うと、

「おお、そうだな。お前んち早明高校の近くだよな?」と聞かれたので、

「はい」と答えると、

「じゃあ、こんな時間だし、お前もだから送って行く」と言われた。


「えっ? まだ9時半だし大丈夫ですよ! てか女の子って認めてくれるんですね? 」と言うと、

「男の子では無さそうだからな!」と返された。

「フン! なるほどね〜大丈夫ですよ」と言うも、

「お前ココが何処だが分かってるのか?」と言われて、


「え〜っと……」


来た道を思い出していたが、山岸さんと喋りながら、ただ連れて来られただけなので、超絶方向音痴の私の脳みそでは、いくら考えても思い出せなかった。


「だ、大丈夫ですよ、タクシーに乗りますから」と言うと、

「クッ、やっぱ分かってねぇ〜じゃん!」と笑われた。


無視して帰ろうと、私が財布からお金を出そうとすると、

「良いよ」と言われた。

「いえ、そう言うわけには……」と言ったが、

「出世したら奢って貰うから」と笑われた。


──私、出世するの? 何年かかるの?

と思っていると……

既にスタッフさんを呼んで支払いをしてくれていた。

「あっ、ご馳走様でした」と言うと、

「うん、素直でよろしい!」と全然素直じゃない人に褒められてもなあ〜とモヤモヤした。


そして、優星先輩が、

「行くぞ」と立ち上がったので、私も立ち上がってお店を出た。

すると、アプリでタクシーを呼んでくれていたようで、すぐに1台のタクシーが止まった。


「え?」

「乗るぞ」と言って腕を引っ張られて、先に奥へと乗り込む形になり、後から優星先輩も隣りに座った。

そして、優星先輩が運転手さんに、

「早明高校方面までお願いします」と告げてくれた。


小声で、住所を言わなくても良いのかと聞くと、何があるか分からないから、安易に住所を告げるなと言われた。

なるほど〜と思った。お店や駅なら良いが自宅の住所を他人に細かく伝えるなと言うことだ。


それに、後部座席は、運転手の後ろが1番安全な席だと言われているので、上司を座らせる席だと習った。

なのに、優星先輩は私を先に乗せた。

──これは、ただの偶然なのか? それとも気遣い?


そして、早明高校の前に到着すると、支払いをしてくれて、2人でタクシーを降りた。


「ありがとうございます。乗って帰らないんですか?」と聞くと、

「うん、まだ電車あるし、それより家の前まで送って行く」と言われて驚いた。


──ココからは、徒歩2分ほどなのに……

タクシーの運転手さんには、住所を安易に教えるなと言ったのに、自分は家の前まで? 

優星先輩は、良いのかなあ?


そう思っていた。


「懐かしいな」と高校を見ている優星先輩。

「あ、卒業以来ですか?」と聞くと、

「ああ、そうだな。変わってないな」と言った。


そこから、徒歩2分、

「あ、ココなんで」と私が言うと、

「おお、そっか、じゃあ〜お疲れ!」と言われたので、

「今日は、ありがとうございました」と言うと、

「おお、じゃあ又来週な!」と優星先輩は言った。

「はい、では、お気をつけて」と言うと、

「おお、あっ! 優輝に連絡するんだろ?」と言われた。

「あ……はい!」

「まあ、頑張れよ!」と……

「はい! ありがとうございます」

「じゃあ、もう入れ」と言ってくれた。

「ありがとうございました」と、

お辞儀をして、門の中に入った。


そして、チラッと見ると、ようやく歩き出した優星先輩が見えた。

──私が中に入るまで見ててくれてたんだ

案外優しいんだな




そして、

「ただいま〜」と家の中に入ると、母が起きていた。

「お帰り〜! ん? 電車?」と、いつもの電車到着時刻ではないことに気づいた母。

「ううん、先輩がタクシーで送ってくれたから」と言うと、

「へ〜同じ方向だったの?」と聞かれ、

「あ、いや違ったから又今電車で帰って行った」と言うと、

「え? こんな時間に大丈夫? ん? 先輩って男性?」と聞かれた。


「あ〜うん……」

もう後々面倒なので、母にはきちんと話しておかなきゃと思い、歓迎会から2次会へ行ったが、直属の上司である山岸さんが急用で帰ってしまった旨を話した。


「あ、そうだったのね。家まで送ってくれるって優しい人じゃない」と言う母。

「ねぇ、お母さん覚えてる? 高校の時の岡本兄弟!」と言うと、

「うん、あ〜双子の?」とよく覚えていた。

「うん、その弟さんの方」と言うと、

「え────! 同じ会社なの?」と驚いている。

「そうなの、同じ部署。私も驚いた」と話すと、

「凄いじゃない! 運命ね!」と言うので、

「私が好きだったのは、お兄さんの優輝さんの方よ!」と言うと、

「まあ、そうだけど、この際良いんじゃない?」と適当なことを言う母だ。


そして、その優輝先輩にも会ったことを話し、引っかかってるから彼女さんが居るのか、聞こうと思ってると話すと、母は、

「まあ聞くぐらいなら良いけど、もし居たら?」と、

「絶対居るよね〜?」とテーブルに項垂れると、

「ほら、落ち込むんじゃないの! 弟さん、彼女さんは?」

「知らない!」と言うと、

「絶対そっちの方が良いわよ、彼氏になる人は、近くに居る人の方が良いに決まってるんだから」と言う母。


「勝手に決めないでよ! お兄さんがダメだから弟さんとはならないの! それに、優星先輩はドS先輩だよ?」と言うと、

「でも、今は家まで送って来てくれて、十分優しいじゃない!」と言われて、

──確かに! 

と妙に納得してしまった。


「2次会代もタクシー代も払ってもらった。それに、この前営業に行った時のお昼ご飯代も……」と言うと、

「あら〜すっかりお世話になって……」と、ニヤニヤしている母。


「もう〜! お風呂入って寝る!」ととりあえずお風呂へ。


でも、せっかく優輝先輩に再会出来たんだから、やっぱり私このままじゃ、諦め切れないよ……

きちんと、告白して、ハッキリ振られたら前に進めそうな気がする!


「よし、やっぱり、優輝先輩に連絡しよう」

私は、そう決めた。


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