目次
ブックマーク
応援する
4
コメント
シェア
通報

第9話 鈍感

 翌日も優輝先輩から連絡はなかった。既読すらついていない。

やっぱりお仕事が忙しいのだろう。

もしくは、お休みは彼女さんと過ごしているのだろうか? などと思ってしまった。



──月曜日──


「おはようございます」

「「おはよう」」「「おはようございます」」


いつもと変わらない月曜日が始まった。


山岸さんが、

「おはよう」

「おはようございます」

「どうだった?」と聞かれた。


──ん? 何が? 

と思ったが、金曜日に私と優星先輩を置いて先に帰ったことをおっしゃっているのだろうと思い出だした。


「あっ! そうですよ!」と言うと、山岸さんはニコニコ笑っておられる。

「どうして先に帰っちゃったんですか?」と言うと、

「え、だって2人で話したいかと思って……」と言われた。

「何も話すことなんてないですよ」と言うと、

「え〜〜? 何してんだよ桐生の奴!」とおっしゃった。


結局、注文した赤ワインを呑んで、生ハムとチーズを食べて帰ったと言うと、

「それだけ?」と……

「帰り、タクシーで家まで送ってもらいました」と言うと、

「そっかそっか……で?」

「で? 終わりです!」と言うと、

「はあ〜〜? せっかく……」とおっしゃっている。


でも、優星先輩は、まだ電車があるから電車で帰るって、一緒に近くの高校でタクシーを降りて、家の前まで送ってもらったと話すと、

「そっか、やっぱりそういうところアイツは、優男やさおだよね〜」と……


そして、私は、お兄さんの優輝さんにメッセージを送ったことを話した。

でも、お仕事が忙しいようで、会えなかったことも……

「そっか、まあ、でも、又会うチャンスは、来るんじゃない?」と優星先輩と同じようなことを言われた。


「同じようなことを言われました」と言うと、

「誰に?」と……


「おはようございます」と優星先輩が来られた。


「あの方に」と掌を向けながら言うと、

「へ〜〜そうなの?」と……


そして、

「桐生おはよう!」とおっしゃると、

「オーッス!」と言う優星先輩。

「おはようございます」

「オッス! 土曜日はどうも」と言われたので、何と言えば良いのか分からないので、

「どうも」と返した。


「え? 土曜日って?」と山岸さんがおっしゃるので、

土曜日に母と買い物に行ったら偶然優星先輩に会ったことを話すと、

「へ〜〜そうなんだ!」と驚かれた。


「ということは、お母様と?」

「はい、ご挨拶してました」と言うと、

「へ〜〜そうなんだ……」となぜかニコニコされている。


その後、母がパン屋へ行ってしまい、しばらく2人で話していた、と言うと、

「へ〜〜そうなんだ〜」と更に又ニコニコされている。



そして、そこへ小野田が、

「おはようございます」と来た。

「おはようございます」と挨拶すると、

「高橋! お前一昨日ショッピングモールに居たか?」と聞かれたので、行ったことを話すと、


「あれって、彼氏?」と聞かれた。


「え?」と私は驚いた。

母と行っていたと言ったが、どうみても男性と居ただろ? と言われ、

「ブッ」と吹き出している優星先輩。


「あ〜あれは……」と優星先輩を見ると、

「あ〜俺だ!」と言う優星先輩。


すると、何を思ったのか小野田は、

「え? 高橋と桐生さん、付き合ってるんですか?」と大きな声で言った。


「「え?」」「え?」「花怜ちゃん彼氏居たの?」「え、桐生と?」と……ザワザワし始めて、

「違っ! 違いますよ! たまたま会ったんですよ。私は母と行ってたの!」と小野田に言うと、

「あ〜そうなんだ……なんかすみません」と、周りの人たちにも謝っている。


──小野田って、ホント天然だよね〜

イケメンなのに、なんか惜しい気がする。

「フッ」と苦笑している優星先輩。


──か……

そういう響き懐かしいな〜

あれ? 私いつから彼氏居ない?

あ〜大学2年の頃が最後か……

もう面倒くさくなって、サークルで友達と遊んでる方が楽しかったんだよね

周りは、付き合ってたから羨ましかったけど……

やっぱり私も長く付き合える彼氏が欲しいな

ずっと私のそばに居てくれる人と付き合いたい!

そう思いながら、ボーっと一点を見つめていた。


「……花怜ちゃん?」と山岸さんに呼ばれた。

「えっ! あっはい、すみません」と言うと、

「大丈夫?」と、

「はい! 大丈夫です」


すると、

「行って来ま〜す」

「行って来ます!」と優星先輩は、今日は小野田と一緒に営業に行くようだ。


「行ってらっしゃいませ」と言うと、チラッとこちらを向いた優星先輩。


──ん? 何今の? なんでチラッと見た?


すると、隣りから、

「ハア〜」と大きな溜め息を吐いてこちらを眺めている山岸さん。

「え?」と聞くと、

「さっき桐生が、帰って来たら書類出すからって花怜ちゃんに言ってたよ」と言われた。

「あ、すみません。私ボーっとしちゃってて聞いてなかったです」


──あ、だからチラッと見てたんだ

もう一度言ってくれれば良かったのに……


「私から伝えるから行って! って言ったのよ」

「あ、そうだったんですね。すみませんでした」

「ううん、大丈夫? 桐生のお兄さんのこと?」と聞かれた。

「いえ、そういうわけじゃないんですけど、彼氏長い間居ないなと思って……」


「そうなのね? 彼氏候補はたくさん居るのにね」と言われた。

「え? 何処にですか?」と聞くと、

「花怜ちゃん……」と何とも言えない顔をされた。

「え?……」

「あなたは、気付かな過ぎ! より取り見取りなのに勿体ないよ」とおっしゃる。

「え?」

辺りを見渡したが、オジ様しか居ない……


「そうじゃなくて……」

「ん?」

「花怜ちゃん! 小野田並にヤバイよ!」と言われた。

「嘘ですよね?」

「ハハッ、じゃあ仕事しようか?」と言われた。

「あ、はい……」


──いったい誰のことをおっしゃてるのだろう……あっ、真面目に仕事しなきゃな




そして、夕方

続々と帰社される営業さんたち


「ただいま戻りました」「戻りました」

「お帰りなさい! お疲れ様でした」


なんだか優星先輩がとても、疲れた顔をしている。

──何かあったのかなあ?

すると、

「小野田! 今日のことちゃんと書いてまとめておけよ」と、言っている。

「はい! 分かりました」


山岸さんが、優星先輩に何かあったのか? とこっそり聞いている。

すると、優星先輩は、又私の方をチラッと見てから、

「あ〜篠崎さんですよ! また高橋のことを小野田に言ってて、何なんですかね、あの人!」と、ワシャワシャと自分で髪をぐしゃぐしゃにしている。

──え、私?

正直、篠崎さんのことは、もう恐いと思っている。2度と会いたくない。


「調子に乗って小野田まで……だから注意したんですよ」と言う優星先輩。

「そっか、ご苦労さん!」と山岸さん。


──ん? 小野田まで何を言ったんだ?

私には、分からない


何と言うのが正解なのかが分からなかったので、

「お疲れ様でした」と言った。

「おお! ハア〜」と言われた。


──何か怒ってる? え、私何かした?

と、見ていると、

バチッと目が合ってしまった。


「ん?」と聞かれたので、

「あ、いえ……」としか言えなかった。


すると、山岸さんに、

「花怜ちゃんが気にすることないよ」と言われた。

「はい……」

でも、私には何がなんだか分からなくて、泣きそうになっていた。


だって、私が篠崎さんの会社に行ってから、なんだかおかしくなっているような気がするから……


すると……やっぱり目がウルウルして来てしまった。

何が起こっているのか誰も教えてくれない。

きっと私のせいだ……


「すみません、ちょっとトイレに」と言うと、

「あ、うん。大丈夫?」と言われたが、

「はい……」と俯いたまま返事をして、トイレに行った。


涙を拭いて、鼻水をかんで……

トイレを済ませて、鏡の前で顔をチェックして、

笑顔を作って出た。


すると、トイレの前には、優星先輩が居て驚いた!

「又、鼻水かんでたのか?」と言われたが、黙っていた。

すると、

「お前のせいじゃないからな!」と言われた。

「え?」

「篠崎さんが勝手にお前のこと、可愛い可愛いって言ってるだけだからな」と言われて又驚いた。

「……」

「それに、小野田も乗っかってたから、ちょっとな〜と思って……モテてるな」と言われた。

「嬉しくありません」と言うと、

「うわっ、篠崎さんも小野田も傷付くぞ!」と言われた。


なぜか分からないけど、私は、優星先輩のことを睨んでいた。

「え、ごめん! もう泣くなよ!」と言ったので、驚いた。


──何なの? この飴と鞭は……

優星先輩の考えてることが私には、分からなかった。




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?