──翌日──
「あ〜頭が痛〜い!」
やっぱり呑み過ぎた。
久しぶりの二日酔いだ。普段は、限界が自分で分かるから、そこまで呑まないようにしてるのに……昨日は、やっぱり呑みたかった。
悲しい音楽を聴いてドン底まで落ちて……
これでもかっていうぐらい涙を流して……
大学時代のサークルメンバー6人で作ったグループメッセージに、
〈推しが彼女と居る所に遭遇! 撃沈して、ついに諦めがつきました!〉と打ち込んだ。
皆んなすぐに反応してくれて、
〈マジか!〉
〈そっか、辛かったね、まあ呑め呑め!〉
〈今度呑みに行こう!〉とか言いながら、男子も女子も一晩中話を聞いてくれていた。
でも、いつしか私は、弟の優星先輩のことを話してて……
〈ん? 花怜もしかして、その弟のこと好きなのか?〉と言われ、
〈私も今そう思った!〉とか、
〈うんうん、実はめちゃくちゃ気にしてんじゃん! コレは好きになってるよね〉って返って来て、
〈もうこの際、新しい恋に進め!〉
〈そうだよ、彼女持ちなんてポイ! 弟さんとの恋、応援するぞ〉
〈なんなら誰か紹介しようか?〉となぜか友達の方が盛り上がってしまっていた。
朝起きて読み返しても、
──本当に私、優星先輩のことが好きなのかな? と思っていた。
「いやいや、そんなこと……」
全く無いとは否定出来ない自分が居ることに気づいた。
山岸さんに言われた時も妙に気になってしまったし……
そして、お昼過ぎに、ようやく起きて鏡を見て驚いた。
「誰?」
泣き腫らした目に、浮腫んだ顔、しかも目の下にクマまで作って、最悪なブスになっていた。
「ヤバイ」と目の腫れと、浮腫みを取る方法をネットで調べる。
「目の腫れは、冷してから温めるを繰り返す?」
「浮腫みは、顔のマッサージ、海藻や豆類、野菜を摂る。塩分糖分を控えて、カリウムの多い食品を摂る! カリウムは、バナナ、メロン、キウイ、利尿作用のある珈琲や緑茶を飲んで体内の水分を出すようにする! か……」
動画を観ながら鏡を見て、フェイスマッサージをして、目を冷やしたり温めたり……ワカメと大豆の野菜サラダを食べて、バナナを食べた。
「マッサージで少しはマシになったのかなあ? あっ、お風呂入ろう!」と風呂場へ。
サッパリした。でも、目の下のクマがヤバイ。
フェイスパックをする。
「はあ〜何やってんだろ、私……」
しばらくお酒は控えようと決めた。
昨日のグループメッセージに、
〈花怜! 大丈夫〜?〉とメッセージをくれる友達たち。
〈うん、大丈夫! ありがとう〜昨日は、遅くまでごめんね〜顔面がヤバイから修復中!〉と返すと、皆んなに笑われた。
〈ハハッ、また新たな一歩の為に、綺麗に整えなきゃね〉
〈女子は大変だな〉
〈彼氏が出来たら即、報告せよ!〉
〈楽しみに待ってるよ〉と励ましてくれる友達たちは、本当に宝物だ。
自分たちも彼氏彼女が居たりで忙しいのに、いつまでもこうして付き合ってくれる。
「楽しかったなあ〜大学時代」と振り返っていた。
──いや、まだこれからだ! きっと素敵な彼氏が出来て、いつか結婚するのよ! 花怜!
なのに今、目に浮かんだのは、なぜか優星先輩だった。
「何で?」と自分に問う。
しばらくすると、両親が帰って来た。
「あっ、花怜、起きたの?」
「うん」
フェイスパックを見て母は、
「ハハッ」と笑っているが、父が帰って来て、
「うわ〜〜っ!」とビックリしている。
「失礼ね」と言うと、
「お前そんな顔で……そりゃあ驚くだろ?」と言っている。
「女子は大変なのよ、呑み過ぎて浮腫んだの」
すると、
〈今からそっち方面へ行くからお茶しない?〉と、大学メンバーの1人
〈了解〜今から化粧する! ありがとう〉
慌てて着替えて、化粧を念入りにする。
「クマを隠さなきゃ」
そして、
「ちょっと出て来るわ」と家を出た。
「最近ココに、よく来るよな〜」
又ショッピングモールまで歩いて来た。
「久しぶり〜!」
美優と合流した。
「ホント会うの、久しぶりだよね」
「うん」
「昨日は、ごめんね」
「ううん、少しは落ちついた?」
「うん、ありがとう」
大学時代、美優とはずっと一緒に居た。
でも、働き出すとなかなか会えないものだ。
美優は、車部品会社の事務員として働いている。
2人でカフェに入った。
美優には、大学時代からお付き合いしている彼氏が居る。同じサークルメンバーの1人だ。
「後から直斗も来ても良い? って」
「うん、良いよ! 寧ろデートの邪魔してごめん」と言うと、
「違うよ、直斗が花怜に会って来たら? って言ってくれたの」
「そっか〜羨ましいよ」
「ん?」
「やっぱ私も彼氏が欲しいな」と言うと、
「昨日話してた優星先輩は?」と、
「さあ? いったい何を考えてるのか? 今一分かんないのよね〜」と言ったが、
美優は、そんなに意地悪を言ってたのは、小学生のように好きな子には意地悪をしたくなる的な、好きの裏返しなのでは? と言う。
「でも、もう24だよ?」
「だから、今は優しくなって来たんじゃないの?」と言う。
「どうかなあ? ホントに謎な人だから」
結局、気づけば優星先輩の話で持ちきりだった。そして、美優がトイレに行ってる間に、直斗が来た。
「おお〜久しぶり〜!」
「久しぶり〜!」
「思ったより元気そうだな」と言われた。
「昨夜は、大変ご迷惑をおかけしました」と言うと、
「いや、久々に楽しかったよ」と言う。
「人の失恋話で盛り上がって?」
「そうそう」と笑っている。
「ハハッ。まあ、あなた達は、仲良くね! 結婚式呼んでよね」と言うと、
「もちろん」と言う直斗。
「やっぱ考えてるんだ! 結婚!」
「まあ、そりゃあな」とニコニコしている直斗。
そこへ、美優が戻って来て、
「あっ、来たんだ!」
「うん」
「あ〜やっぱ羨ましいよ。彼氏欲しくなって来た!」と言うと、
「だから、その弟さんにしなさい! ってば」と言われる。
「まあ、こればっかりはね〜相手の気持ちもあるからね〜」
「そうよね〜」
そして、しばらく話して3人でカフェを出た。
「ありがとうね、また連絡するね」
「うん、上手く行くと良いね」と美優。
「ハハッだから、まだ相手は決まってないってば」と言うと、
「その弟さんと上手く行くように祈ってるよ。もし無理そうなら言えよ! 友達紹介するから」と直斗に言われる。
「ハハッ、そうだね」と笑っていると……
「!!」
きっと私は、凄い顔をしていたのだろう。
「どうしたの?」「どうした?」と2人に聞かれて……
「お、弟さんの方……」と言う目線の先を見ている2人。
「マジか!」「凄いイケメンじゃん!」
すると、優星先輩がこちらに気づいたようで、
「おお〜よく会うな」と近づいて来て言うので、
「そうですね」と言うと、
美優と直斗の方を見た。
そして、
「彼氏?」と聞いた。
「いえ、僕の彼女は、こっちです」と言う直斗。
「あ、大学時代の友達です。直斗と美優」
「こんちは!」「こんにちは」
「そうですか、同じ会社の桐生です」と挨拶してくれた。
「桐生さん! カッコイイお名前ですね、あっ、ご本人ももちろんカッコイイですけど」と直斗が言うと、
「ハハッ、ありがとう」と嬉しそうだ。
「又買い物ですか?」と聞くと、
「おお、又って……」
「あっ、じゃあ僕たちは、もう帰るところだったので、桐生さん、花怜のことよろしくお願いします」と、
「えっ」
「じゃあな」「花怜またね〜」と、私を置いて帰ってしまった。
「あ〜じゃあ、私も……」と言うと、
「ちょっと時間あるか?」と聞かれた。
「えっ?」
──何? どうしよう……
「あ、いや、もうすぐ母の日だろう?」と言う。
「あ、そうですね、忘れてました」
「何が良いかな? と思って……」と言う。
「ハア〜確かに難しいですよね」と言うと、
「一緒に選んでもらえないか?」と言った。
──え〜〜! マジか? どういう状況?
てか、私もお母さんに何か買わなきゃだけど……
「あ〜なら私も母に何か買います」と言うと、
「おお、そうか、助かる」と言った。
そして、お母様の趣味や好きなモノを聞く。
が、
「え──? 何が好きだろう?」とサッパリ分かっていない様子。
「よく、そんなんで買いに来ましたね」と言うと、
「確かに! だから困ってて、良いところに会ったよ」と笑っている。
──まあ、お役に立てるなら良いけど……
少しずつ聞き出して、一緒に回ることにした。