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第12話 母の日と…


 優星さんからお母様のお話を聞いて、今は、割と何でも買って持っているようなので、物よりも食べ物やお花の方が良いのでは? と言うことになった。


「和菓子と洋菓子どちらがお好きですか?」と聞くと、

「う〜ん、大福や団子も食べるし、ケーキやクッキーも食べてるな」と言う。

「なら、どちらでも喜ばれるじゃないですか?」

「ハハッそうだな。でも、どこのが良いか分からなくて……」と言う。

「今まではどうしてたんですか?」と聞くと、

「優輝に任せてた」と言った。

「そう、ですか……」


「なんか忙しそうだから、今年は自分でと思ったんだけど」

「なるほど……」

私の顔が一気に暗くなったのを見て、

「ん? どした? もしかして優輝から連絡があったのか?」と聞かれた。


そして、私は昨日、偶然会ったことを話した。

それも、佐伯さんと一緒にいらっしゃる所を……と言うと、

「そうか、会ったのか?」と言われた。

「はい! 言ってくれれば良かったのに」と言うと、

「知りたくないかと思って……」と言われた。

「まあね、でも、いつかは分かったかなあ〜私聞こうとしてましたから」と言うと、

「そうなのか?」と、

「はい! それに撃沈しても良いから告白しようと……まあ、もっとも優輝先輩は仕事が忙しくて、2人で会うことすら叶わなかったですけどね」と言うと、

「そうだったのか……もう落ち着いたか?」と聞かれて、

「まあ、昨日の今日ですからね〜でも、さっきの友達たちが一晩中、呑んだくれて泣いてる私の話を聞いてくれてたんで」と言うと、

「そうか……俺に愚痴れば良かったのに」と言われて驚いた。


「え? 優星先輩に愚痴ってどうするんですか? お兄さんの悪口言ってたかも……」と言うと、

「言えば良かったのに! まあ、そんなこと、お前は言わないだろうけどな」と言われた。


──なんだか今日は優しい……

ちょっと、キュンとしてしまった。


「そんなことより、お母様のでしょう?」と言うと、

「おお」と言う。


振り返った洋菓子店で、

「あっ、コレ美味しそうだし、可愛い〜」と、オシャレな缶に入ったクッキーを指差した。


「色んな味があって、どれから食べようか迷うかも〜あっ、母にもコレにして、ちょっと貰おうかな」と言っていると、

「お、おお」と、優星先輩の方を向くと、なぜか今ジッと見つめられていたような気がした。


「ん?」

「そうだな、コレにしようかな」と言っている。

「コレに、この小さなお花どうです? 可愛いですよね。私もコレにしよう!」と言うと、

「うん、良いな、そうするよ」と言って同じ物を買うことにした。


それぞれに支払いを終え、

「良い買い物が出来たよ、ありがとう」と言われた。

「いえ、私も良いのが買えて良かったです。忘れてたので、教えていただきありがとうございました」と言うと、

ニッコリ笑っている。


「ん?」

「いや……」

「なんですか?」

「いや、今日はヤケに素直だなと思って」と言うので、

「優星先輩こそ! 今日はちょっとだけ素直ですよね?」と言うと、

「ちょっとだけか、ハハッ、そう、かもな……」と言った。

「ん? どうしてですか?」と聞くと、

「さあ? 俺にもよく分からない!」と言った。

「ハハッ、何それ?」


「じゃあ、私はそろそろ帰りますね」

「おお、ありがとな」

「はい、では又明日」と言うと、

「おお、また明日な!」と言った。


そして、会釈をして別れた。


『また明日』良い言葉だなと思った。

同じ会社、同じ部署なのだから、『また明日』会える確率が高い。


よく考えると、週末には、この場所でよく会っている。

前回もココで会った。

でも、優星先輩のマンションからは、少し距離があるはずなのに……

週末になると、わざわざこのショッピングモールまで来てるんだよね? どうして?




そして、家に着き、早速母に渡した。

「まあ〜嬉しい〜! ありがとう〜」と、とても喜んでいる。

「いつもお世話になっておりますので、感謝の気持ちを込めて……」


実はまだ先だから、忘れていて……さっき又優星先輩に会って、お母様へのプレゼントを買いに来られてたと言う話をした。

すると、母が、

「まあ、そうなの? 優星さんってお母さん思いの良い人じゃないの! 顔もイケメンだし」と言った。


「ふふ、まあね。今日もなんだか素直だった。どうしちゃったんだろう? あんなに意地悪だったのにな」と言うと、

「それは、高校生の頃でしょう?」と言う。

「でも、再会してからも、時々意地悪な言い方……あっ、でも、あれは実は違ってたか……」

と言うと、

「ハハッ、優星さんも花怜も不器用ね」と言われた。


「え?」

「もっと素直になって、お互いの気持ちを認めればいいのに」と母は言った。

「えっ……」

「お互い独身だし、彼氏彼女も居ないんでしょ?」

「お休みの日に1人で買い物に来てるぐらいだから、居ないんでしょうね」と言うと、

「もう〜〜ホントに、ヤキモキしちゃうわよ!」と言われた。


──ヤキモキって……

え? やっぱり私は、優星先輩のことが好きなの? 優星先輩も私のことを? そうなの?


「たぶんだけど、山岸さんも2人を見てて、ヤキモキされてると思うわよ」と言われた。


──確かに……この前、

え〜〜何してんだよ桐生の奴! とはおっしゃってたなと思った。


え? 周りはそう思ってるの?

なんだか、そんなことを言われると余計に意識してしまうじゃない!



そして、先に帰った美優と直斗から、

〈あの後、どうだった?〉とメッセージが来た。

なので、母の日のプレゼントを一緒に選んで買ったことを話すと、

〈うわっ! もう恋人じゃん!〉と返って来た。

〈聞かれたから、選んだだけだよ〉と返すと、

〈ふ〜ん、もうコレは時間の問題だな〉と来た。


「そうなのかなあ〜?」

周りに言われると、どんどんおかしな気持ちになる。

〈ねぇ〜周りから見てると、ヤキモキする?〉と送ると、

〈うんうん、そりゃあもう〜! 出来れば早く付き合ってください!〉と返って来た。


「そんなこと言ったって……優星先輩がどう思ってるかなんて、私には分からないんだもの」


そんな時に、同期の吉田からメッセージが届いた。

〈こんばんは! 今ちょっと良い?〉と……

〈こんばんは、どうしたの?〉と返すと、

〈あのさあ〜高橋って、付き合ってる人居ないの?〉と聞かれた。

〈うん、今は居ない!〉と敢えて、もうすぐ出来るかも……と言う期待を込めて答えておく。

〈そっか……〉

〈ん? 何? どうして?〉と聞くと、

〈聞いて欲しいって聞かれたから……〉と来た。

〈え? そうなんだ! どなたに?〉と聞くと、

〈それは、俺からは言えないよ〉と、なぜか隠された。


と言うか……私も、杏奈ちゃんから相談されていることがあるのだ。だから、聞いてみた。


〈吉田は? 彼女居ないの?〉

〈え? 俺? おお! 居ないよ。誰か紹介でもしてくれるの?〉と返って来たので、

〈そうだね……〉と濁しておいた。

〈マジ? お願いします〉と即答だった。

〈ハハッ、ちょっとだけ待って! また機会を見て……〉

〈了解〜! 楽しみにしておく〉

〈うん! てか、誰よ?〉と聞いたが、

〈お楽しみに〜続く……〉とか言って誰に頼まれたのかは、教えてくれなかった。


「何なのよ!」

──誰だろう? 


でも、なぜか今は、それを聞いたところで、もしかすると、優星先輩じゃなかったら、興味がないのかもしれない、とさえ思ってしまっていた。

それって、もう私、好きなのかなあ?


それに、もし優星先輩なら、きっと自分の口で伝えてくれると思うから……


おかしなもので、優輝先輩には自分から告白しようと思っていたのに、優星先輩には自分からは告白しようとは思っていない。

それは、まだ自分でもよく分かっていないし、何より優星先輩の気持ちが分からないからだ。


このまま本気で好きになってしまって、もし違ったら……

もうこれ以上傷付きたくないと思ってしまっている。

だから、自分で自分の気持ちにブレーキを掛けてしまって、コレ以上自分からは、踏み込まないようにしてしまっているのかもしれない。


怖いんだと思う。

短期間に、2度も失恋するのは……

それに、同じような顔の先輩に……


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