優星さんからお母様のお話を聞いて、今は、割と何でも買って持っているようなので、物よりも食べ物やお花の方が良いのでは? と言うことになった。
「和菓子と洋菓子どちらがお好きですか?」と聞くと、
「う〜ん、大福や団子も食べるし、ケーキやクッキーも食べてるな」と言う。
「なら、どちらでも喜ばれるじゃないですか?」
「ハハッそうだな。でも、どこのが良いか分からなくて……」と言う。
「今まではどうしてたんですか?」と聞くと、
「優輝に任せてた」と言った。
「そう、ですか……」
「なんか忙しそうだから、今年は自分でと思ったんだけど」
「なるほど……」
私の顔が一気に暗くなったのを見て、
「ん? どした? もしかして優輝から連絡があったのか?」と聞かれた。
そして、私は昨日、偶然会ったことを話した。
それも、佐伯さんと一緒にいらっしゃる所を……と言うと、
「そうか、会ったのか?」と言われた。
「はい! 言ってくれれば良かったのに」と言うと、
「知りたくないかと思って……」と言われた。
「まあね、でも、いつかは分かったかなあ〜私聞こうとしてましたから」と言うと、
「そうなのか?」と、
「はい! それに撃沈しても良いから告白しようと……まあ、もっとも優輝先輩は仕事が忙しくて、2人で会うことすら叶わなかったですけどね」と言うと、
「そうだったのか……もう落ち着いたか?」と聞かれて、
「まあ、昨日の今日ですからね〜でも、さっきの友達たちが一晩中、呑んだくれて泣いてる私の話を聞いてくれてたんで」と言うと、
「そうか……俺に愚痴れば良かったのに」と言われて驚いた。
「え? 優星先輩に愚痴ってどうするんですか? お兄さんの悪口言ってたかも……」と言うと、
「言えば良かったのに! まあ、そんなこと、お前は言わないだろうけどな」と言われた。
──なんだか今日は優しい……
ちょっと、キュンとしてしまった。
「そんなことより、お母様のでしょう?」と言うと、
「おお」と言う。
振り返った洋菓子店で、
「あっ、コレ美味しそうだし、可愛い〜」と、オシャレな缶に入ったクッキーを指差した。
「色んな味があって、どれから食べようか迷うかも〜あっ、母にもコレにして、ちょっと貰おうかな」と言っていると、
「お、おお」と、優星先輩の方を向くと、なぜか今ジッと見つめられていたような気がした。
「ん?」
「そうだな、コレにしようかな」と言っている。
「コレに、この小さなお花どうです? 可愛いですよね。私もコレにしよう!」と言うと、
「うん、良いな、そうするよ」と言って同じ物を買うことにした。
それぞれに支払いを終え、
「良い買い物が出来たよ、ありがとう」と言われた。
「いえ、私も良いのが買えて良かったです。忘れてたので、教えていただきありがとうございました」と言うと、
ニッコリ笑っている。
「ん?」
「いや……」
「なんですか?」
「いや、今日はヤケに素直だなと思って」と言うので、
「優星先輩こそ! 今日はちょっとだけ素直ですよね?」と言うと、
「ちょっとだけか、ハハッ、そう、かもな……」と言った。
「ん? どうしてですか?」と聞くと、
「さあ? 俺にもよく分からない!」と言った。
「ハハッ、何それ?」
「じゃあ、私はそろそろ帰りますね」
「おお、ありがとな」
「はい、では又明日」と言うと、
「おお、また明日な!」と言った。
そして、会釈をして別れた。
『また明日』良い言葉だなと思った。
同じ会社、同じ部署なのだから、『また明日』会える確率が高い。
よく考えると、週末には、この場所でよく会っている。
前回もココで会った。
でも、優星先輩のマンションからは、少し距離があるはずなのに……
週末になると、わざわざこのショッピングモールまで来てるんだよね? どうして?
そして、家に着き、早速母に渡した。
「まあ〜嬉しい〜! ありがとう〜」と、とても喜んでいる。
「いつもお世話になっておりますので、感謝の気持ちを込めて……」
実はまだ先だから、忘れていて……さっき又優星先輩に会って、お母様へのプレゼントを買いに来られてたと言う話をした。
すると、母が、
「まあ、そうなの? 優星さんってお母さん思いの良い人じゃないの! 顔もイケメンだし」と言った。
「ふふ、まあね。今日もなんだか素直だった。どうしちゃったんだろう? あんなに意地悪だったのにな」と言うと、
「それは、高校生の頃でしょう?」と言う。
「でも、再会してからも、時々意地悪な言い方……あっ、でも、あれは実は違ってたか……」
と言うと、
「ハハッ、優星さんも花怜も不器用ね」と言われた。
「え?」
「もっと素直になって、お互いの気持ちを認めればいいのに」と母は言った。
「えっ……」
「お互い独身だし、彼氏彼女も居ないんでしょ?」
「お休みの日に1人で買い物に来てるぐらいだから、居ないんでしょうね」と言うと、
「もう〜〜ホントに、ヤキモキしちゃうわよ!」と言われた。
──ヤキモキって……
え? やっぱり私は、優星先輩のことが好きなの? 優星先輩も私のことを? そうなの?
「たぶんだけど、山岸さんも2人を見てて、ヤキモキされてると思うわよ」と言われた。
──確かに……この前、
え〜〜何してんだよ桐生の奴! とはおっしゃってたなと思った。
え? 周りはそう思ってるの?
なんだか、そんなことを言われると余計に意識してしまうじゃない!
そして、先に帰った美優と直斗から、
〈あの後、どうだった?〉とメッセージが来た。
なので、母の日のプレゼントを一緒に選んで買ったことを話すと、
〈うわっ! もう恋人じゃん!〉と返って来た。
〈聞かれたから、選んだだけだよ〉と返すと、
〈ふ〜ん、もうコレは時間の問題だな〉と来た。
「そうなのかなあ〜?」
周りに言われると、どんどんおかしな気持ちになる。
〈ねぇ〜周りから見てると、ヤキモキする?〉と送ると、
〈うんうん、そりゃあもう〜! 出来れば早く付き合ってください!〉と返って来た。
「そんなこと言ったって……優星先輩がどう思ってるかなんて、私には分からないんだもの」
そんな時に、同期の吉田からメッセージが届いた。
〈こんばんは! 今ちょっと良い?〉と……
〈こんばんは、どうしたの?〉と返すと、
〈あのさあ〜高橋って、付き合ってる人居ないの?〉と聞かれた。
〈うん、今は居ない!〉と敢えて、もうすぐ出来るかも……と言う期待を込めて答えておく。
〈そっか……〉
〈ん? 何? どうして?〉と聞くと、
〈聞いて欲しいって聞かれたから……〉と来た。
〈え? そうなんだ! どなたに?〉と聞くと、
〈それは、俺からは言えないよ〉と、なぜか隠された。
と言うか……私も、杏奈ちゃんから相談されていることがあるのだ。だから、聞いてみた。
〈吉田は? 彼女居ないの?〉
〈え? 俺? おお! 居ないよ。誰か紹介でもしてくれるの?〉と返って来たので、
〈そうだね……〉と濁しておいた。
〈マジ? お願いします〉と即答だった。
〈ハハッ、ちょっとだけ待って! また機会を見て……〉
〈了解〜! 楽しみにしておく〉
〈うん! てか、誰よ?〉と聞いたが、
〈お楽しみに〜続く……〉とか言って誰に頼まれたのかは、教えてくれなかった。
「何なのよ!」
──誰だろう?
でも、なぜか今は、それを聞いたところで、もしかすると、優星先輩じゃなかったら、興味がないのかもしれない、とさえ思ってしまっていた。
それって、もう私、好きなのかなあ?
それに、もし優星先輩なら、きっと自分の口で伝えてくれると思うから……
おかしなもので、優輝先輩には自分から告白しようと思っていたのに、優星先輩には自分からは告白しようとは思っていない。
それは、まだ自分でもよく分かっていないし、何より優星先輩の気持ちが分からないからだ。
このまま本気で好きになってしまって、もし違ったら……
もうこれ以上傷付きたくないと思ってしまっている。
だから、自分で自分の気持ちにブレーキを掛けてしまって、コレ以上自分からは、踏み込まないようにしてしまっているのかもしれない。
怖いんだと思う。
短期間に、2度も失恋するのは……
それに、同じような顔の先輩に……