──月曜日──
明日からGWが始まる。と言っても今年は、飛び石連休だから、有給休暇でも使わない限り、前半は、いつもの2連休だけだ。
なので、後半の4連休が楽しみなのだ。
とは言え、彼氏の居ない私に4連休があっても、ゆっくり寝るか友達と遊びに行くこと以外に予定はない。
──やっぱ彼氏欲しいなあ〜
そう思いながら出社する。
「おはようございます」
「おはよう」「おはようございます」
「おはようございます」と山岸さんにご挨拶すると、
「おはよう〜明日からGWよ、頑張って今日を乗り切りましょう!」とおっしゃる。
「はい! でも、飛び石連休ですよね?」と言うと、
「まあね、花怜ちゃん休みたかったら、休んでも良いわよ」と言われたが、まだ少ない有休だから大切に使いたい。
「休みを取っても、何をするわけでもないし……何処へ行っても混むから、それなら違う平日に取った方が良いかな〜」と言うと、
「そりゃあそうよね」と。
「彼氏でも居れば良いんでしょうけどね〜」と言うと、
「うん! そうよ! 彼氏作ろう!」とおっしゃる山岸さん。
「ハハッ、作ろう! って言って出来れば良いですよね〜」と言うと、
「もう、お願いだから早くくっついてくれないかな?」と又言われた。
──それって、やっぱり優星先輩のこと?
友達や母にも同じことを言われたと言うと、
「でしょう? 皆んな思ってるのよ、本当に!」
とニコニコされている。
そして、「おはようございます」と優星先輩が来られた。
「桐生、おはよう!」
「オーッス」
と、いつもの山岸さんと優星先輩の挨拶だ。
「おはようございます」と言うと、
「オッス! 昨日はどうも」と言われた。
「どうも」と言うと、
すかさず山岸さんが、
「ん? あなたたち昨日も会ったの?」と驚いておられる。
「あ、はい、偶然……」と言うと、
「何? 毎週会ってるじゃない?」とニコニコされている。
「偶然ですよ」と言うと、
「そう! 偶然」と言う優星先輩。
「最早、偶然と言うより必然よね? 運命よ!」と笑っておられる。
そして、山岸さんが、
「ねぇ、桐生! 花怜ちゃん! 今日呑みに行かない?」とおっしゃった。
「!!」
優星先輩は、
「あ〜良いっすよ」と、軽く言った。
「花怜ちゃんは?」と聞かれたので、
「あ〜特に予定はないので……」と言うと、
「じゃあOKね! 良かった」と又ニコニコされている。
「まさか又ドタキャンしないですよね?」と優星先輩に聞かれて、
「うん! 大丈夫よ」と笑っておられるが、さっきの発言から、私はちょっと怪しいと思った。
「ふふ、さあ頑張ろう!」とニコニコされている。
──怪しい!
と、ジトーっと眺める。
母には、晩ご飯が要らない旨、連絡を入れた。
〈分かったわ〜頑張ってね〜〉と返って来た。
──何を?
*****
夕方まで頑張って仕事を終えた。
「はあ〜終わった〜!」
パチパチと手を叩く山岸さん。
「よ〜し、これで心置きなく呑めるよ!」とおっしゃっている。
「はい!」
しばらくすると、優星先輩が外回りから帰って来られた。
「ただいま戻りました〜」
「お疲れ様でした」
「お帰り!」と山岸さん。
「ウッス、いつも元気っすね?」と笑いながら言っている優星先輩。
「当たり前よ! 今日一日呑む為に頑張ったんだから」とニコニコされている。
「なるほど」と微笑んでいる。
「いつもお2人仲良しですね」とニコニコしながら言うと、
「あ〜誤解しないでね! なんて言うか、桐生は人懐っこいキャラだからね、つい構いたくなるって言うか、でも甘やかしたから私にだけはタメ口になっちゃって……」と笑っておられる。
「ハハッ」と笑いながら今日の仕事のまとめをされている優星先輩。
──誤解って何? 私が妬いてるとでも思われた?
「いつも仲良くて微笑ましいなと思って見てました」と言うと、
「そう? なら良かった」と。
──ヤキモチなんて妬いてないよ! 本当に!
山岸さんは、優しい先輩なんだから……
ん? 私、誰に言い訳してるんだ?
優星先輩のお仕事が終わるのを待って……
「ヨシ! 終了〜」と満面の笑みでこちらを見た。
「ヨシ、行こう!」と山岸さん。
「はい!」
そして、3人で会社を出た。
タクシーを止めて、乗り込む。
山岸さんが運転手さんの後ろ、私が真ん中に座ろうとしたら、優星先輩が、
「ちょっと狭いか……すみません、助手席良いですか?」と運転手さんに聞いて前に座ってくださった。
──気遣いだよね? それとも私の隣りは、嫌だった? 優しさだよね?
本当にまだ優星先輩のことが、良く分からないから、勝手に色々考えてしまう。
隣りから山岸さんが、
「隣りに座れば良いのにね」とおっしゃった。
「ハハ」と愛想笑いをしてしまった。
そして、前回とは又違うオシャレな個室ダイニングのお店に連れて行ってくださった山岸さん。
「オシャレなお店をご存知ですね?」と言うと、
「まあね、私も色んな先輩に連れて来てもらったからね」と。
「そうなんですね」
円形になった半個室のお部屋に入る。
山岸さんに先に入るよう促されて、丸いテーブルの半分まで歩くと、反対側から優星先輩が来た。
──あっ
私の後ろから山岸さん。
これは、優星先輩も山岸さんに促されて前から入ったのかな? と思った。
結局、優星先輩と隣り同士になってしまったのだから。
そして、
上着をハンガーに掛けようと脱ぐと、
優星先輩も脱いだのが見えたので、手を出すと、
「おお、サンキュー」と言ったので、ハンガーに掛けた。
山岸さんの方を向くと、
「あ、私は大丈夫! 歳を取ると年々冷房がダメになっちゃってね」とおっしゃる。
なので、自分のもハンガーに掛けた。
「さあ、何呑む?」と山岸さんがメニューを広げる。
「とりあえず生ビールで乾杯かな?」とおっしゃるので、
「はい!」「そうだな」
と優星先輩がタブレットで生ビールを3杯注文してくれた。
「何食べようかなあ〜」と嬉しそうにメニューを捲る。
「花怜ちゃん、何が好き?」と聞かれて、
「唐揚げだろ?」と言われて驚いた。
「え?」
「オムライス食いに行った時、唐揚げも食べたいって言ってただろ?」と言った。
──チラッと言っただけなのに、よく覚えてるな
と感心した。
「そうなの? じゃあ桐生、唐揚げとポテトのセット!」
「は〜い!」
「あっ、やっぱビールには枝豆よね」とおっしゃる山岸さん。
「はい」「は〜い!」
そして、サラダから一つ選んで、ココの山芋焼きが美味しいのよ! と魚も食べなきゃね、とお刺身の盛り合わせも注文、パスタも食べたいなと、イカ墨パスタでも良い? お歯黒になるけど、皆んなで食べれば怖くない! と笑わせながら盛り上げてくださる。
このメンバーなら楽しいから、私もいつも笑っている。
「ふふふふ」
お2人共優しいので、お刺身の盛り合わせを先に選んで食べて! と言ってくれたが、
私が「ココは、先輩からですよ」と言うと、
「嬉しいような悲しいような……」と山岸さんが言いながら、
「じゃあ有り難くいただきます!」と鯛のお刺身を食べられた。
そして、優星先輩が、
「良いよ、カレーが先に選べ!」と言ってくれたが、
「カレーじゃないし! 年上の優星先輩がどうぞ」と言うと、
「フッ」と言いながら、イカのお刺身を食べた。
「やった〜! エビ大好きなんです」と言うと、
「良かったね」とニコニコしながら、山岸さんと優星先輩が顔を見合わせながら笑っている。
「ん? 私エビ好きって言いましたっけ?」と言うと、
「歓迎会の時、美味しそうに食べてたもんね」と山岸さんに言われた。
「うんうん」と優星先輩もニコニコしている。
「そっか……ふふ〜」と満面の笑みで笑うと、
「花怜ちゃん見てると、こっちまで幸せな気分になるわ」と山岸さんに言われた。
「そうですか?」
「うん、な〜んにも考えて無さそうなのが良いよな」と言う優星先輩。
「それ褒めてませんよね?」
「いや、褒めてる褒めてる!」
「今の絶対バカにしてますよね?」と山岸さんに聞くと、
「はいはい、夫婦喧嘩はそのぐらいにして」と笑っておられる。
「誰が夫婦ですか?」「夫婦ではない!」
「ハハッ、じゃあ私はちょっとお花を摘みに……」と、
「お花摘み?」と言うと、
「トイレのこと」と言う優星先輩。
「なるほど〜」
「男性は、
「へぇ〜勉強になります!」
と、言いながら又、山岸さんが帰ったとは、その時は思わなかった。