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第14話 告白

 しばらく経っても山岸さんは帰って来ないので、

「あれ? 山岸さん遅くないですか? ちょっと見て来ましょうか?」と言うと、

机の上のメニューの下に、そっと置かれたお金を指差す優星先輩。


「え?」

「又やられたな」と笑っている。

「嘘!」

そして、スマホを開くと、

〈後は若いお2人で〜〉と書かれていた。


「うわっ」と言うと、

「フッ」と笑っている。


そして、

「ま、良いんじゃない? 俺もお前に聞きたいことがあるし……」と言われた。


──何、何? それって……いきなり告白?

と、思いながら、


「何ですか? 聞きたいことって?」と

レモン酎ハイを呑みながら言うと、

「お前、誰かに連絡先を聞かれたか?」と言われた。

「いえ、連絡先は聞かれてませんけど、彼氏は居るのか? とは聞かれました」と言うと、

「なるほどな」と言った。


「何ですか?」と聞くと……

男子トイレで話してた声が聞こえたのだと言う。


『花怜ちゃんって可愛いよな? あの子彼氏居るのかなあ? お前聞いておいてくれよ! 出来れば連絡先も』と。


「それって誰でしたか?」と聞くと、

「吉田と、もう1人は、知らない奴だったから同期じゃね〜か?」と。

「そうですか……だから吉田」と言うと、

「吉田に聞かれたのか?」と、

「はい」


「で?」

「何もないですよ、誰? って聞いたけど答えなかったし」

「ふ〜ん、お前案外モテるんだな」と言われた。

「そんなことないですよ、誰にも言われてないし……」と言うと、

「篠崎さんに、小野田、それにその同期? 俺が知ってるだけでも、3人は居るぞ」とニヤニヤしながら言われた。


「そういう目で見たことがないです!」

「じゃあ、優輝は? もう諦めたのか?」と真剣な眼差しで聞かれた。


「諦めたも何も、土俵にすら立てなかったんですから、諦めるしか……」

「そっか……で、彼氏、居るのか?」とわざと笑いながら聞く優星先輩。


「フッ、聞いてましたか? 今の話は何だったんですか?」と言うと、



「居ないなら、俺、立候補しようかと思って」



──!! なんだろう、とした


それに、この人やっと素直に言った!

とも思ったから少し意地悪をしたくなってしまった。


「フッ」と笑うと、

「いや、フッじゃなくて……真面目に言ってるんだけど」と少し笑いながらも真剣な表情になった。


「どうして?」と私は、思わず聞いていた。

「え? どうしてって、お前のことが好きだから」と、サラッと答えた。


──思わず、又としてしまった


でも、

「嘘でしょう?」と言うと、

「いや、本当だって」と言った。

「じゃあ、どうしていつも意地悪なことばかり言うんですか?」と言うと、

「それは……ごめん、つい揶揄いたくなるって言うか照れ隠しというか……」と優しい顔をする。


「いつまでもお子ちゃまですね?」と言うと、

「もう絶対に言わない!」と必死だ。


ジッと顔を見つめると、真剣な顔をして、

「俺じゃイヤか?」と優しく言われた。


──うわ〜王道の質問! 来た〜! 

TVドラマか! って、ツッコミたかったけど、やっぱりとしていた。


そして、

「ドSの時の先輩は、嫌です」とハッキリ言うと、

「分かった! 優しくする」と言った。

──え? 嘘? 


「カレーって、呼ばれたくない!」と言うと

「分かった! もう2度と呼ばない! じゃあなんて呼べばいい?」と聞くので、つい……

「花怜」と言ってしまっていた。


「分かった! 花怜」と言った。

──うわっ、うわっマジか? この人? マジなの? ヤダ〜今ってしちゃったよ〜どうしよう、ヤバイ、ドキドキして来た。


「他には?」と聞かれて、

「私は、ずっと優輝先輩に憧れて今まで過ごして来たので、諦めるにはもう少し時間がかかります」と言っていた。

「分かった! 徐々に俺の方を向いて欲しい!」と言った。


──きゅん マ、マジですか? ココにはドSはいない! ヤダ〜なんか可愛い〜

と思ってしまっている自分が居る。

え? この流れって、付き合う感じ?


と思っていると、

「じゃあ?」と言った。

「え〜っと、コレって今日からお付き合いする感じですか?」と聞くと、

「え? 今まで何の話をしてたんだ?」と言われた。

「だって、立候補って言われただけで、ちゃんと言われてないし……」と言うと、

「え? ……あ、そう、だよな! 分かった」と、優星先輩は、椅子に座り直して、


「花怜! 俺と付き合ってください! 大事にする! 俺の彼女になってください!」と言われた。


「……」


久しぶりの告白に、ポーっとしてしまった。

それに、優輝先輩と同じ顔の優星先輩に告られているのだもの……


「お〜い、聞いてる?」と目の前で手を振っている。

「あ、ホントに私で良いんですか?」と聞いていた。

「うん」とニコニコしている。


「超絶方向音痴ですよ」

「知ってる」とニコニコしている。

「ご飯を食べたら眠くなって寝ちゃいますよ」

「うん、知ってる」とニコニコしている。

「蓋恐怖症ですよ」

「うん、知ってる」とニコニコしている。

「泣いたら、鼻水ブーブー擤みますよ」


「全部知ってるよ! それでも花怜が良い!」と言われて、きゅんとしないわけがない。


──これからは、優輝先輩の代わりじゃなく、優星先輩を好きになるの? 

ううん、恐らくもうすでに、私も好きになっているんだと思う。

だって、嬉しいのに涙が出て来たんだもの。


「え? どうして泣いてるんだ?」

「分かんない!」

「そんなにイヤか?」

「違う! 嬉しいんだと思う」と言うと、

「そっか……」と、指で涙を拭ってくれた。


「あんまり泣いたら又鼻水擤まないと」と言われて、「はい」と言うと、両手を握られて、

「その前に、返事は?」と言われた。


「あっ、はい! 私で良ければ」と言うと、

「良かった〜」とようやくホッとしたようだ。


「じゃあ、ちょっと私は、お花摘みに……」と、席を立つと、

「うん、場所分かるか?」と聞かれて、

キョロキョロしていると、トイレのマークが見えたので、

「あっちだぞ」

「はい」と、トイレに向かった。


──あ〜マジかあ〜! マジで私、優星先輩と付き合うことに? え〜! 私の彼氏が優星先輩!

どうしよう! 今頃になって、ドキドキしてきちゃった。


ブーブー鼻水を擤んで、ついでにトイレを済ませてから出た。


──あれ? どっちだっけ? 

同じ席がいっぱい並んでいる。やっぱり迷ってしまった。初めての場所は、苦手だ。


すると、

「ね〜彼女可愛いね〜1人? 俺たちと呑もうよ〜」と、2人組の男に声を掛けられた。


「あ、いえと来てるので」と思わず言っていた。

「ん? 彼氏どこ? どうせ嘘なんでしょ」と、腕を捕まれて引っ張られた。


「きゃっ! 離して!」と言うと、

もう1本手が出て来て……

「離せ!」と、言っている。


「あっ!」

優星先輩だ! と、私はホッとして、また泣きそうになった。

「大丈夫か?」

「うん」


「俺のに何のようだ!」と優星先輩が物凄い形相で、その男たちに言うと、

「あ、マジで彼氏居たのかよ」と逃げて行った。


「大丈夫か?」

私は怖くて優星先輩の服の裾を握っていた。

すると、

「怖かったな」とぎゅっと抱きしめてくれた。


──え? 今私、優星先輩に抱きしめられてる?

驚いたけど、とても優しく包み込んでくれているようで、嬉しかった。


そして、「もう出よう」と言われて

「うん」と頷いていた。


既にお会計を済ませてくれていたようで、そのまま逸れないように、手を繋いで歩いてくれる。


不思議な感覚だ。


『やっぱり私、この人のことが好きなの?』という顔で優星先輩の顔を見上げていた。


すると、それに気づいて、

「ん? どうした?」と優しく言ってくれた。


「あ、さっきはありがとうございました」とお礼を言った。

「いや、怖い思いをさせちゃったな」と言うので、

「ううん、私が迷ったから」と言うと、

「分かってたのにな、やっぱり1人で行かせちゃダメだな」と言った。

「え? だってトイレだもん」と言うと、

「そのトイレでも迷うんだからな」と、微笑んでいる。

「……すみません」と言うと、

「ううん、俺が悪い!」と言うので、

「ううん、そんなことない!」と言うと、顔を見合わせて笑ってしまった。


「「ふふ」」

「今度からは、トイレの前まで行く!」と言うので、思わず笑ってしまった。

「ふふ」

「ん?」

「すっごく意外過ぎてびっくりしてます」

「ハハッ、そうか?」

「うん」


──でも、なんか凄く愛されてる気がする


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