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第15話 優星さんの部屋

そして、

「なあ」

「ん?」

「今からウチ来ないか?」と言われた。

「え?」


とても驚いた。

スマホで時間を確認すると、まだ、20時だ。

私は、なぜか優星先輩がどんな所で暮らしているのかを知りたくなった。


「あ、ダメなら無理には……」と言われたが、

「行きます!」と言っていた。

「お、おお、そうか」と微笑んでいる。


「ちょっと待ってくださいね、一応、連絡を!」と母に、

〈ちょっと遅くなる〉と送った。

すると、速攻、

〈了解〜♡〉となぜか♡が付いて返って来た。


「あっ、お母さん大丈夫か?」

「はい、全然大丈夫そうです」

「おお、そうか」と微笑んでいる。


母には、既に色々話しているので、

〈頑張って!〉と言われたぐらいだもの。

おまけに♡マークって……


そして、又タクシーで移動することに……


20分ほどで優星先輩のマンションに到着したようだ。

1階にあるコンビニで飲み物とおつまみを買い込んでから7階建ての5階の部屋までエレベーターで上がった。


「コンビニが下にあると便利ですね」

「うん、ホントに助かってる」と優星先輩はニコニコしている。


ピーンと5階に到着。

「どうぞ」と、玄関ドアを開けてくれた。

「お邪魔します」


1ルームの部屋だ。

荷物は、少なくスッキリしている。


「へえ〜綺麗にしてますね」と言うと、

「まあな、適当に座って」と……

テレビ、テーブル、ベッドと並んでいる。

テーブルの所にクッションがあったので、ベッドの下に凭れて座った。


そして、グラスに氷を入れて出してくれたので、

「ありがとうございます」と、

「優星先輩もレモンで良いですか?」と聞くと、

「あ、うん」と言うので、缶酎ハイをグラスに注いだ。

そして、私の隣りに並んで座った。


「「乾杯〜」」

今日3度目の乾杯をした。


「なあ〜!」

「はい?」

「その先輩呼び、何とかならないか?」と言われた。

「あ〜じゃあ何と呼べば?」と聞くと、

「う〜ん、やっぱ名前かな」と言うが、

いきなり、なんて呼べるわけもなく、

「え〜急に呼び捨ては、難しいですよ」と言うと、

「その敬語も違和感有り有り」と言う。

「だって、ずっと優星先輩だったし、いきなりタメぐちには……」

と言うと、

「ドS優星って言ってたくせに!」と言われた。


「あは〜だって事実だし」と言うと、

「言ってみ!」と言う。

「優、星……さん?」

「ハハッ、さん付きか……」

「う〜ん、優さん? でも、それなら優輝先輩も優さんですよね?」

「まあな」


「やっぱ優星さん?」

「ま、いいか」

「はい! 優星さん!」

「花怜!」


「グッ」恥ずかし過ぎて照れてしまった。

「恥ずっ! ハハッ」と優星先輩も笑っている。


──こんなに優しく笑えるのに……

と、ジッと見つめてしまった。


すると優星さんも、ジッと見つめて私の髪を撫でながら……ゆっくり顔が近づいて来た。


そして……そっと唇を重ねた。


──あっ、初日からキスしちゃった……


すると、

「俺さあ、花怜に、1つ謝らなきゃいけないことがある」と言った。

「え? 何ですか? やっぱ冗談とか?」と聞くと、

「イヤ、んなわけないだろ!」と笑っている。


この前、一緒に営業に行った日のことだと言う。

「俺……あの時、花怜にキスした!」と言った。


「え? え──? 嘘! いつ?」と慌てて聞くと、

「花怜が車で寝てた時、余りにも可愛いくて」と言った。

「え────? 嘘でしょ!」

「ホント!」

「仕事中なのに?」

「そうなんだよな〜ごめん」

「私それでも起きなかったんだ」と驚いた。

「うん」と微笑んでいる。


「鼾かいてたとかヨダレ垂らしてたとかディスってたくせに?」と言うと、

「うん、裏返し的な?」と言った。

「もう〜〜!」と言うと、

「ごめん」と真っ直ぐ目を見つめて謝っている。


それを見ると、素直過ぎて又とした。

「ふふ、でも、私は覚えてないんだから、今のが初めてだよね」と言った。


「そうだな」と微笑んでいる。

そして……またゆっくり顔が近づいて来た。


優星さんと唇を重ねてしまった。

もう3度目のキスらしい。


恥ずかしくて、また照れてしまった。

すると、ぎゅっと抱きしめてくれた。


──昨日までの私には、想像もつかなかった。


そりゃあ、気になる存在には成りつつあったが、まさか、ドSの優星先輩が私の彼氏になるなんて、思いもしなかった。


抱きしめられると、温かくて凄く落ち着く。

さっき抱きしめられた時もそうだった。

こうして、抱きしめて欲しくて、私は部屋まで付いて来たのかもしれないと思った。


「あのね」

「うん」

「私、今まで付き合った人とは、3ヶ月も続かなかったの」と言うと、

「そっか、じゃあまずは、3ヶ月超えだな」と、笑う優星さん。

「うん」

「そんなの余裕だけどな」と言う。

更に、

「これから何年だって続くよ」と言った。

「そうなんだ」と言うと、

「だって、俺、もう6年も想って来たから」と言った。


「え?」と驚いた顔をすると、

「ふふ」と笑われた。

「6年って……高校生の時?」と聞くと、

「そうだよ」と言った。


「え──────! 嘘でしょう?」と言うと、

「ホント」と又私をぎゅっと抱きしめて頭を撫でている。


「待って! じゃあ、どうしてあんなに意地悪な言い方……あっ!」と顔を見ながら途中まで言って気づいた。

「優輝先輩、優輝先輩って、ずっと優輝ばっか追いかけてたよね〜?」と言われた。


そうだった。同じ顔でも、優星先輩は、なんとなく怖くて、意地悪だと思ってたから……


「まさか、気に入られてるなんて思わなかった!」と言うと、

「花怜の漢字、優輝から聞いた。だから、カレーだなって思って、揶揄ってた! でも、俺がいきなり花怜かれんって呼んだら驚くだろう?」と言われて、

「そうだけど、ならもう少し優しくしてくれても……絶対嫌われてると思ってたもん」と言うと、

「優輝と上手く行けば良いなとも思ったこともあった。でもアイツには常に彼女が居たからな」と言った。


高校生の頃の私は、まだ幼く、優輝先輩は、あくまでも憧れの人だった。友達と推し活と称して追っかけをしていたのだ。

だから、もちろん付き合えるなんて思っていなかった。

でも、大人になって再会出来たから、一瞬小さな望みを抱いてしまったのだ。

そして、撃沈した。


まさか、その間、優星さんが私のことを想ってくれていたなんて、これっぽっちも思っていなかった。


「優輝な、佐伯さんと婚約してる」と言われた。

「やっぱりそうなんだ」と言うと、

「分かってた?」

「うん、なんとなく、あの雰囲気を見れば分かるよ」

「そっか……大丈夫か?」と優しく聞いてくれる。

「うん」


私は、今までずっと思ってくれていたことが嬉しくて、優星さんをぎゅっと抱きしめていた。

「ん? 花怜?」

「嬉しい!」

──6年も私のことを? そんなに思われてたなんて……

涙が流れた。


「ズル……」

「え? なんで泣いてるの?」

「だって、嬉しいから……」と言うと、また涙が流れた。


も、花怜の項目に追加しておかなきゃな」と、また指で涙を拭ってくれる。が追いつかない。

「ん」とティッシュを箱ごと取ってくれた。


そして、涙と鼻水を拭いているのに、

「可愛い」と抱きしめられた。

「え? 鼻水擤むよ」と言うと、

「ハハッ、どうぞ」と笑っている。


ホントに気を遣わなくても良い関係。

ホッとする。

こんなにも自分をさらけ出して、嫌われないのだろうか……と心配になる。


でも、ジッと見つめられている。

「ふふ」

「ふふ、花怜〜!」とまた抱きしめる。


本当は、とっても心の優しい人なんだと思った。

今までのは、何だったんだ? と思える。


「ずっとこうしたかった」と、ただただ私を抱きしめているのだから……


そして、時々キスをしてくる。

「ふふ」照れる……


でも、嬉しい〜

ニコニコしている自分が居る。

──あ〜幸せ〜

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