そして、
「なあ」
「ん?」
「今からウチ来ないか?」と言われた。
「え?」
とても驚いた。
スマホで時間を確認すると、まだ、20時だ。
私は、なぜか優星先輩がどんな所で暮らしているのかを知りたくなった。
「あ、ダメなら無理には……」と言われたが、
「行きます!」と言っていた。
「お、おお、そうか」と微笑んでいる。
「ちょっと待ってくださいね、一応、連絡を!」と母に、
〈ちょっと遅くなる〉と送った。
すると、速攻、
〈了解〜♡〉となぜか♡が付いて返って来た。
「あっ、お母さん大丈夫か?」
「はい、全然大丈夫そうです」
「おお、そうか」と微笑んでいる。
母には、既に色々話しているので、
〈頑張って!〉と言われたぐらいだもの。
おまけに♡マークって……
そして、又タクシーで移動することに……
20分ほどで優星先輩のマンションに到着したようだ。
1階にあるコンビニで飲み物とおつまみを買い込んでから7階建ての5階の部屋までエレベーターで上がった。
「コンビニが下にあると便利ですね」
「うん、ホントに助かってる」と優星先輩はニコニコしている。
ピーンと5階に到着。
「どうぞ」と、玄関ドアを開けてくれた。
「お邪魔します」
1ルームの部屋だ。
荷物は、少なくスッキリしている。
「へえ〜綺麗にしてますね」と言うと、
「まあな、適当に座って」と……
テレビ、テーブル、ベッドと並んでいる。
テーブルの所にクッションがあったので、ベッドの下に凭れて座った。
そして、グラスに氷を入れて出してくれたので、
「ありがとうございます」と、
「優星先輩もレモンで良いですか?」と聞くと、
「あ、うん」と言うので、缶酎ハイをグラスに注いだ。
そして、私の隣りに並んで座った。
「「乾杯〜」」
今日3度目の乾杯をした。
「なあ〜!」
「はい?」
「その先輩呼び、何とかならないか?」と言われた。
「あ〜じゃあ何と呼べば?」と聞くと、
「う〜ん、やっぱ名前かな」と言うが、
いきなり、
「え〜急に呼び捨ては、難しいですよ」と言うと、
「その敬語も違和感有り有り」と言う。
「だって、ずっと優星先輩だったし、いきなりタメ
と言うと、
「ドS優星って言ってたくせに!」と言われた。
「あは〜だって事実だし」と言うと、
「言ってみ!」と言う。
「優、星……さん?」
「ハハッ、さん付きか……」
「う〜ん、優さん? でも、それなら優輝先輩も優さんですよね?」
「まあな」
「やっぱ優星さん?」
「ま、いいか」
「はい! 優星さん!」
「花怜!」
「グッ」恥ずかし過ぎて照れてしまった。
「恥ずっ! ハハッ」と優星先輩も笑っている。
──こんなに優しく笑えるのに……
と、ジッと見つめてしまった。
すると優星さんも、ジッと見つめて私の髪を撫でながら……ゆっくり顔が近づいて来た。
そして……そっと唇を重ねた。
──あっ、初日からキスしちゃった……
すると、
「俺さあ、花怜に、1つ謝らなきゃいけないことがある」と言った。
「え? 何ですか? やっぱ冗談とか?」と聞くと、
「イヤ、んなわけないだろ!」と笑っている。
この前、一緒に営業に行った日のことだと言う。
「俺……あの時、花怜にキスした!」と言った。
「え? え──? 嘘! いつ?」と慌てて聞くと、
「花怜が車で寝てた時、余りにも可愛いくて」と言った。
「え────? 嘘でしょ!」
「ホント!」
「仕事中なのに?」
「そうなんだよな〜ごめん」
「私それでも起きなかったんだ」と驚いた。
「うん」と微笑んでいる。
「鼾かいてたとかヨダレ垂らしてたとかディスってたくせに?」と言うと、
「うん、裏返し的な?」と言った。
「もう〜〜!」と言うと、
「ごめん」と真っ直ぐ目を見つめて謝っている。
それを見ると、素直過ぎて又
「ふふ、でも、私は覚えてないんだから、今のが初めてだよね」と言った。
「そうだな」と微笑んでいる。
そして……またゆっくり顔が近づいて来た。
優星さんと唇を重ねてしまった。
もう3度目のキスらしい。
恥ずかしくて、また照れてしまった。
すると、ぎゅっと抱きしめてくれた。
──昨日までの私には、想像もつかなかった。
そりゃあ、気になる存在には成りつつあったが、まさか、ドSの優星先輩が私の彼氏になるなんて、思いもしなかった。
抱きしめられると、温かくて凄く落ち着く。
さっき抱きしめられた時もそうだった。
こうして、抱きしめて欲しくて、私は部屋まで付いて来たのかもしれないと思った。
「あのね」
「うん」
「私、今まで付き合った人とは、3ヶ月も続かなかったの」と言うと、
「そっか、じゃあまずは、3ヶ月超えだな」と、笑う優星さん。
「うん」
「そんなの余裕だけどな」と言う。
更に、
「これから何年だって続くよ」と言った。
「そうなんだ」と言うと、
「だって、俺、もう6年も想って来たから」と言った。
「え?」と驚いた顔をすると、
「ふふ」と笑われた。
「6年って……高校生の時?」と聞くと、
「そうだよ」と言った。
「え──────! 嘘でしょう?」と言うと、
「ホント」と又私をぎゅっと抱きしめて頭を撫でている。
「待って! じゃあ、どうしてあんなに意地悪な言い方……あっ!」と顔を見ながら途中まで言って気づいた。
「優輝先輩、優輝先輩って、ずっと優輝ばっか追いかけてたよね〜?」と言われた。
そうだった。同じ顔でも、優星先輩は、なんとなく怖くて、意地悪だと思ってたから……
「まさか、気に入られてるなんて思わなかった!」と言うと、
「花怜の漢字、優輝から聞いた。だから、カレーだなって思って、揶揄ってた! でも、俺がいきなり
「そうだけど、ならもう少し優しくしてくれても……絶対嫌われてると思ってたもん」と言うと、
「優輝と上手く行けば良いなとも思ったこともあった。でもアイツには常に彼女が居たからな」と言った。
高校生の頃の私は、まだ幼く、優輝先輩は、あくまでも憧れの人だった。友達と推し活と称して追っかけをしていたのだ。
だから、もちろん付き合えるなんて思っていなかった。
でも、大人になって再会出来たから、一瞬小さな望みを抱いてしまったのだ。
そして、撃沈した。
まさか、その間、優星さんが私のことを想ってくれていたなんて、これっぽっちも思っていなかった。
「優輝な、佐伯さんと婚約してる」と言われた。
「やっぱりそうなんだ」と言うと、
「分かってた?」
「うん、なんとなく、あの雰囲気を見れば分かるよ」
「そっか……大丈夫か?」と優しく聞いてくれる。
「うん」
私は、今までずっと思ってくれていたことが嬉しくて、優星さんをぎゅっと抱きしめていた。
「ん? 花怜?」
「嬉しい!」
──6年も私のことを? そんなに思われてたなんて……
涙が流れた。
「ズル……」
「え? なんで泣いてるの?」
「だって、嬉しいから……」と言うと、また涙が流れた。
「
「ん」とティッシュを箱ごと取ってくれた。
そして、涙と鼻水を拭いているのに、
「可愛い」と抱きしめられた。
「え? 鼻水擤むよ」と言うと、
「ハハッ、どうぞ」と笑っている。
ホントに気を遣わなくても良い関係。
ホッとする。
こんなにも自分を
でも、ジッと見つめられている。
「ふふ」
「ふふ、花怜〜!」とまた抱きしめる。
本当は、とっても心の優しい人なんだと思った。
今までのは、何だったんだ? と思える。
「ずっとこうしたかった」と、ただただ私を抱きしめているのだから……
そして、時々キスをしてくる。
「ふふ」照れる……
でも、嬉しい〜
ニコニコしている自分が居る。
──あ〜幸せ〜