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第16話 始まり

 そのまま、しばらく優星さんの部屋で一緒に過ごした。

専ら優星さんは、私の髪を撫でたり、あちこちにチュッとキスしたりして、片時も私を離さず驚くほどに溺愛されている。


──とても意外だ! こんなに溺愛されるなんて思いもしなかった。


「ちょっとトイレ」と言うと、

「一緒に行こうか? 大丈夫?」と言う。

「ふふ、さすがに迷子にはならないわよ」と言うと、

「そっか、気をつけて」と手を振りながら言っている。

「ふふ」


──こんなキャラだっけ?

ホントに驚いている。まさか、あのドS優星先輩がね〜こんなにも、イチャラブが好きだったなんて……


「お帰り」と待ち侘びていたようで、優しく迎えてくれる。ただトイレに行っただけなのに……


そして、自分の片膝に座らせる。

「可愛いくてしょうがない!」と抱きしめながら言う。


かと言って、そこまでで、いきなり初日から、私を押し倒すようなことはしない。


だから余計に愛されていると思えるのだ。

キスされた時、もしかして……なんて思ったけど、

「花怜のこと、大事にしたい! だから、ゆっくり進んで行こう」と言われて、きゅんとした。


いきなり優星さんの部屋まで来るという大胆なことをしてしまったが、私は何も考えていなかった。

自分でもまだ子どもだなと思ってしまう。



「聞いても良い?」と言うと、

「ん? 良いよ、何でもどうぞ」と言う優星さん。

私は、優星さんの過去の恋愛が気になってしまった。


「今まで何人の人とお付き合いして来たの?」と聞くと、

「う〜〜ん」と手の指を折って数えている。

もう一方の指も出した。


──!! どこまで行くのだろう?

と、私が物凄い顔をして凝視していると……


「ハハッ、冗談だよ」と笑っている。

「え? もう〜〜!」と言うと、

「4人かな」と言った。


「高校1年、2年、大学1年、2〜3年だな」と言った。

「そっか、社会人になってからは居ないんだ!」

「うん、やっぱり会社だと、別れたりすると、色々ややこしいからな」と言った。

「え? 私同じ部署だけど?」と言うと

「花怜は、特別だから……それに、俺たちは、別れない!」と言った。


「そうなの?」嬉しかった。

「もちろん!」と言った。


そして、

「最後の人が1番長かったの?」と聞くと、

「そうだな1年ちょっと続いたかな」と言った。


「どうして別れたの?」と聞くと、

「あ〜向こうが結婚結婚って言い出して、考え方の違いが出て来たからかな」と言った。


彼女さんは、1つ年上で、大学4年生になった頃、まだ3年生だった優星さんは、そろそろ就職の内定をもらい始めてって時に、『私、就職してもすぐに辞めて結婚したい!』と言っていたようだ。


優星さんは、まだ結婚なんて、とても考えられなかったのだと言う。


「そっか、でも今なら結婚出来たのにね?」と言うと、

「いや、もう根本的に考え方が違うのが、その時に分かったから、それはなかったと思う」と言った。

「そうなんだ」と、言いながら少しホッとしている自分が居る。


もし、その元カノが今、優星さんの前に現れたら、と思うとやっぱり嫉妬してしまうと思う。


──あ〜もう私、こんなにも優星さんのことを好きになってしまってる

と思った。


自分からぎゅっと抱きついた。

「ん? どうした?」と言われた。

「良かった! その時に結婚しなくて」と言っていた。

「ハハッ、だからしないってば、まだ学生だったし、21だったんだよ」

「今の私より1つ年下」

「うん、考えられないだろ?」

「うん、無理だね」

「だろう! それに俺やっぱり時々花怜のことを思い出してた」と、ぎゅっと抱きしめられる。


「そうなの?」

「うん、絶賛片想い中だった」

「でも彼女作ったくせに……」と言うと、

「ごめん」と笑ってごまかした。


そして、先ほどの優星さんの恋愛遍歴で1つ気になっていた。


「高校の1年と2年には、彼女居たんだ」と言うと、

「あ〜それこそ、どっちも短かったなあ、3ヶ月ほどだったかな」と言った。

「そっか、同じだね。でも、3年生の時は、彼女居なかったんだね」と言うと、


「そう! 花怜が現れたから」と言われた。

「え?」と、驚いて優星さんの顔を見た。


「ほら、花怜に片想い中」と又言った。


──本当だったんだ!

と、私は、凄く驚いた。


「初めて見た時、ホントに可愛い! って思ったんだ」と言う。

「全然覚えてない」と言うと、

「そりゃあそうだ、花怜は、優輝のことしか見てなかったからな」と言った。


「ごめんなさい」と言うと、

「ハハッ、まあ仕方ないよな。優輝は、誰にでも優しいからな。モテる! だから、花怜が俺と優輝を間違えた時、ショックだったから一瞬優輝のフリをしてやろうかと思ったけど、そこまでは、出来ないと思った。俺のことを思ってないのに、そんなことしても虚しいだけだと思った」


「そっか……」

「だから、カレーって呼んででも、花怜と話せるならそれで良いって思ってた」

「そうだったんだ」


「でも、花怜が俺と優輝を見分ける為に、俺の顔をジッと見つめてる時、俺、内心ドキドキしてたんだからな」と言われた。

「ふふ、そうなんだ! 可愛い〜」と思わず頭をヨシヨシしてあげた。


「ハハッ、可愛いはやめろ」と喜んでいる。

まさか、そこまで思ってくれてたなんて思いもしなかったから嬉しい。


「花怜!」

「ん?」

「好きだよ」


きゅん、きゅん、きゅん、きゅん、

──あ〜きゅんボタンが有れば、連打だわ、ヤバイ〜


「私も、好き」と言った。

「ホントに?」

「うん」

「花怜〜〜」と、また壊れそうなくらいぎゅっと抱きしめられる。


「ふふ、苦しいよ〜」と言うと、

やっぱり、ジッと見つめてキスをした。

そして、「あ〜〜〜〜」と、私を抱きしめて、唸っている。


たぶん、恐らく、我慢してくれているのだろうと思った。自分で言ったから……


夜10時を過ぎた。

「そろそろ送って行こうか?」

「うん……」


本当は、まだ帰りたくなかった。

ずっと一緒に居たかった。

寂しそうな眼差しで見つめると、

「そんな顔するなよ、帰したくなくなる」と言った。


でも……いきなりと言うのはいくらなんでも……と思っていた。


「じゃあ明日、また会おっか?」と言われたので、

「うん」と笑顔で言うと、

「うん、デートしよう!」と言われて、またきゅんとした。


──久しぶりのデートと言う響き、最高だ!

「うん!」

「何処か行きたい所あるか?」と聞かれて、

「う〜ん、すぐには思い付かないけど……」と言うと、

「じゃあ、決めておいても良いか?」と言うので、

「うん」と笑顔で答えた。

──優星さんのデートプラン、楽しみだ


「よし、じゃあ送ってく」と立ち上がる。

「うん」

「その前に……」と、立ったまま顎を持ち上げられて、もう一度熱いキスをした。


──あ〜何? これ? 倒れそうになるような大人のキス。私、優星さんのキス大好きだ!

と、うっとりしながら思っている私が居る。


「大丈夫か?」と言われた。

「うん、もう一度ぎゅっとして!」と言うと、ぎゅっと抱きしめてくれた。


とても落ち着く……

そして、優星さんの良い匂いがする。


「ありがとう」と言うと、

「こちらこそ、ご馳走様」と笑っている。

「ふふ」

そして、玄関ドアを開ける寸前、またチュッとした。


「あっ!」

「不意打ち」と笑っている。

「ふふ、もう〜!」

「可愛い」と揶揄われる。


ダメだ、揶揄い方が変わっただけのように思える。

悔しいので、

「あっ」と大きな声を出すと、

「どうした?」と驚いた顔をしてこっちを向いたので、首の後ろに手を回して、精一杯背伸びをしてキスをした。

なのに、身長差が20センチぐらいあるので、ギリギリだった。

「ふふ」と笑っている。

「もう1回!」と言うと、

私を抱き上げて、じっくりとキスしてくれた。


「軽いな、もっと太らなきゃ」と言う。

「イヤよ」と言うと、

「そっか。こんなことしてたら、いつまでも帰れないよな」と笑っている。

「うん、分かった。もう帰る」

「うん」


そして、手を繋いで下まで降りて、呼んでくれたタクシーに乗り込み家まで送ってくれた。

帰って行くタクシーを見送るのは切ない。


そして、振り返ると、

「うわっ!」

母が居た。


「優星さん?」と聞くので、

「あ〜うん」

「ん? で?」と言うので、

「お付き合いすることになりました!」と言うと、

「そう〜! おめでとう」と言う母。

「ありがとう」


「楽しみね〜」と言いながら、スキップをしている母なのだ。






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