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第17話 初デート


いよいよ今日は、優星さんとの初デートの日!

まさか、私が優星さんと付き合うことになるなんて本当に我ながらビックリだ。


緊張し過ぎて、少しお腹が痛くていつもより早く起きた。

気にするほどではないだろうけど、一応胃腸薬を飲んだ。


「花怜! どこか出かけるの?」と母に聞かれた。

「うん」

「ご飯は?」

「あ〜要らない!」と言うと、

「そう! 分かったわ」とニコニコしている。


察しの良い母は、全てお見通しだと思った。


「行って来ま〜す」

自分でも、浮ついているのが分かる。

久しぶりの彼氏なんだもの。


待ち合わせの駅に30分も早く着いてしまった。

すると、見覚えのある人が……


──え? 

「おはよう〜」と言うと、

「おお! おはよう!」

「早いね」と言うと、

「花怜も」と……

「ふふ」「フッ」


やっぱり会社で見るスーツ姿の優星さんとは違って、ラフな私服姿もカッコイイ〜と思ってしまう。

白Tにダークグレーの半袖セットアップ。背が高いから何でも似合う。


「楽しみ過ぎて早く起きたの?」と聞くと、

「ハハッ、花怜だろ?」と言うので、

「そうよ」と言うと、

「俺も」とニコニコ笑ってくれた。


そして、私のライトグレーのワンピに白のシースルーシャツ姿を見て「可愛い」と褒めてくれた。

──嬉しい〜ニコニコしてしまう


どこに行くのか分からなかったので、白のスニーカーにしたら、同じだった。

──服の色味も似てて、なんだかコーデみたい! とニヤける。


初めてのデートは、水族館のようだ。

優星さんとなら何処へ行っても楽しいと思う。


「行こうか」

「うん」

スッとさりげなく手を繋いでくれる。

──あ〜もうコレだけでドキドキする



電車に乗りドアの前で向かい合って話していると、30代ぐらいの女性2人がこちらをチラチラ見ている。

明らかに優星さんを見ているのだろう。

「あの子、イケメンね」と言う声が聞こえた。


──そうだよね、優星さんって、イケメンだよね。私が隣りに居ても良いのかなあ?

と思うと少し不安で下を向いてしまった。


女性達に気づかない優星さん、

「どうした?」と聞かれて、

「ううん」と言った。

心配させないように、私は目一杯の作り笑いをした。


人が増えて来たので、私をそっと角の方にやり、さりげなく守ってくれる。

見上げると、すぐ近くにある笑顔。

──ドキドキ きゅんきゅん

優星さんの良い匂いに包まれる。


そして、水族館に到着し、早速中へ

「うわ〜魚がいっぱ〜い!」と言うと、

「そりゃあ水族館だからな」とドS優星発動!

「そうだけど……」と言うと、

「ハハッ」と笑っている。


ペンギンを見ている時、優星さんは、後ろから私を囲うように両手で手摺りを握りながら見ている。


──それだけでドキッドキッ


「可愛い〜」と見ていると、1羽が陸から飛び込んで物凄いスピードで泳いだ。

「うわっ! ペンギンって、こんなに速く泳いだっけ?」と顔だけ振り向いて話しかけると、少し屈んで顔を近づけた。

──近っ! ドキッ


そして、私の肩に顎を乗せた。

キスされるのかと思った。なのに……

「ん? 速いな!」と明らかに馬鹿にしたように笑っている。

「……」

膨れっ面をすると、

「え? 何で怒ってんの?」と笑っているドS優星を引っ張って次へ。


その時から優星さんと繋ぐ手が恋人繋ぎに変わった。

──きゅん、あ〜今日は、なんだかずっとドキドキされっぱなしだ


そして、癒されるクラゲを2人で並んで見つめた。

「クラゲって、癒されるからずっと見てられる」と言うと、「うん、それ分かる! ずっと見てても飽きないよな」と言う優星さん。

「うん……」

「俺も花怜にずっと見てられたいな!」と言った。

「!!」

自分の頬がポーっと赤くなっていくのが分かった。顔が見られない。

──反則だ!


「冗談抜きで、俺の事を見てくれてありがとうな」と言った。

「うん」と言うと、

「これからも、ずっと俺だけを見てろよ!」と言われた。

「!!……うん」

──ドキドキ きゅんきゅん

ちょっと泣きそうになった。

ようやく潤んだ目で優星さんを見つめてしまった。

「ふふ」と頬をなぞられた。


なのに、エビ、カニのゾーンに入ると、

「美味そう」と最低なことを言うドS優星。

「ダメよ! 食べちゃ!」と言うと、

「花怜いつも大好物って……」

「もう! 次行くよ〜」と引っ張るのは又私。


丁度イルカショーが始まる時間になったので、観に行くことに……

ベンチに座る。私が左側、

「イルカって頭が良いよね」と言うと、

「うん、賢いな」とチラッと私を見たので、

「ん? まさかと思うけど、今、私より賢いなって、私を見てたの?」と聞くと、

「!!」大きな目を見開いている

「もう!」

「ハハハハッ」と笑っている。

「ったく! そうだけど!」

「認めた」と笑っている。

「ふふ」

そして、耳元で

「でも、絶対花怜の方が可愛いから」と言ってくれた。

思わずニヤニヤしてしまった。


──ん? 今ツルンとした顔のイルカと比べられた? ちょっと複雑……


でも、今までのドS優星と違うのは、こうして、フォローしてくれるところだ。


「可愛い、照れちゃって」と揶揄う。

そこまで言われると恥ずかしくて何も言えなくなる。ずっと繋いでいる手をぎゅっとした。

「ふふっ」と見つめ合って笑っていると、

私の隣りに男性2人が座った。


すると、繋いだ手を離して私の腰に左手を回すようにして椅子を持ち今度は、自分の右手を繋いだ。私を守るように、そっと背中に添えられた手。


私たち、恋人同士に見えてるよね?

さっきの女性2人組のことが頭にチラついた。


そして、ランチタイム。

レストランは、家族連れやカップルで激混みだった。人が多いので、他の人とぶつからないように常に私を守りながら歩いてくれる。腰に回された手、それだけでドキドキしてしまう。


「もう、外に出て食べようか?」と言う優星さん。

「うん、そうしよう」と、最後に可愛いラッコを見てから、お土産物売り場でお揃いのクラゲのキーホルダーを買ってもらった。

イルカやペンギンにラッコ、可愛いキーホルダーがいっぱい有る中、敢えて癒されるクラゲにした。

「1番癒される」と言う。

「だよね〜ありがとう」

「どういたしまして」


そして、近くのショッピングモールへ移動。たくさんの飲食店が並ぶ中、又私はオムライスのお店を見つけた!

「あっ!」

「好きだなぁ」と言いながらも、私の好みに合わせてくれる。


優星さんは、エビフライの乗ったオムライス、私は、キノコのクリームソースにしたのに又エビフライを1尾くれた。

きっと私がエビ好きなのを知ってて、選んでくれたんだと思った。とても美味しかった。

食後にフローズンラテをいただいてお店を出た。


その後は、色んなお店を見て周り、綺麗なジュエリーが目に入った。

「可愛い!」

と、ピンキーリングを見ていると、

「記念に買ってあげる」と言う。

「え? 交際記念?」

「うん」


1粒小さいダイヤが埋め込まれたシンプルなピンキーリング。

ガラスケースから出してもらって左手小指に嵌めてみる。

「可愛い」と言うと、

「うん、良いな」と目を細めながら見てくれる。


「お似合いですね」と店員さんに言われた。

「リングもですが、お2人もお似合いのカップルですね」と言われて照れてしまった。そして、リングを買ってもらった。


「ありがとうね、大切にする!」

「うん」とニコニコしてくれる。


そして、私には目標が出来た!

1年続いたらペアリングを嵌めたい。

優星さんは、今までペアリングを嵌めたことがないと言う。だから、私がペアの最初で最後の相手になりたい! と思った。



そして、移動している時、なんだか又今朝のような腹痛を感じた。お腹が冷えてしまったか……


──どうしよう、せっかくのデートなのに……


「ちょっと、トイレ」と言うと、

「うん一緒に行こうな」と前回の事があるから、にこやかに、

「トイレの前で待ってるから」と、一緒に行ってくれた。


トイレから出たものの、まだお腹が痛くて歩くのも辛い。

「ちょっと休憩」と言ってベンチに座る。


優星さんは、よほど嬉しかったのか、

「お似合いだって! 照れるな」と先ほどの話をしている。

おとなしい私に、

「花怜? どうした?」と……


「ん? どこか痛い?」と、

「お腹……」と言うと、自分の上着を脱いで掛けてくれて、腰を摩ってくれた。


「冷えたかなあ〜大丈夫か?」と言うので、

「うん……」と言うと、

「無理するな」と言うので、

「もう一度トイレに……」と言うと、

「うん、俺の事は気にするなよ」と。


そして、トイレから出ると、薬局に行って何種類かの飲み薬とお水を買って来てくれていた。何か分からないからと、生理痛の薬も……。


「ありがとう。ごめんね」と言うと、

「謝らなくて良いよ。辛い時は皆んな同じだから」

そして、腹痛用の薬を飲んだ。

腰を摩りながら、

「今日はもう帰ってゆっくり休んだ方が良いな」と言うので、悲しくなってしまった。


私の目がウルウルしてるのを見て、

「大丈夫! これからは、いつでも会えるから」と言う。


こんな時は、冗談を言わない。

そして、歩くのも辛そうだからとタクシーで家まで送ってくれた。


辛い時こそ、その人の真の優しさが見えると思った。優星さんの優しさを感じていた。




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