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第18話 会社で

──翌日──


優星さんとお付き合いすることになってから、初めての出社。私はすっかり元気になっていた。


優星さんとは、夜も朝も、ずっとメッセージでやり取りをしていた。

薬のおかげで治まったのだ。

〈良かった!〉

ずっと心配してくれていたようだ。

優星さんの真の優しさが沁みた。

益々、私は優星さんのことが好きになっていると思った。



「おはようございます」

「おはよう」「おはようございます」


──あっ、山岸さんだ! いつも早いな

「おはようございます」と挨拶すると、

「おはよう、花怜ちゃん」と言われた。

その顔は、ニヤニヤしている。


「金曜日は、ありがとうございました」と言うと、小声で、

「良かったね」と言ってくださった。


そう! 金曜日の夜に帰ってから、山岸さんに報告したのだ。

大学の時の友達たちにも報告せよ! と言われていたので、交際のことを、報告したら又盛り上がっていた。


「はい! ありがとうございます」と言った。

その間、山岸さんは、ずっとニヤニヤされていた。


その時、

「おはようございます」と、優星さんが出社して来た。

──あっ、今は……と思いながら、

「おはようございます」と言うと、


すかさず山岸さんは、優星さんの方を見て、

「桐生〜! おはよう〜」と近づいた。

「オ─ッス!」と言う優星さん。

山岸さんは、

「桐生! オッスじゃないでしょ! おはようございますでしょう!」と言いながら、肩を組んでボディーをドスドスと殴っている。


「ハハッ辞めてくださいよ! 暴力反対〜」と言いながら笑っている。

「ふふ」と思わず私も笑ってしまった。


そして、ようやく席に着くと、

「おや? 花怜ちゃん、それは?」と、早くも私のピンキーリングが見つかった。

「あ、これは……」と言うと、

「ん? もしかして買ってもらったの?」と、山岸さんは、鋭い! 全てお見通しだと思った。


私は、何も言わずにニコニコしていた。

すると、優星さんが向いの席から、

「山岸さん、シーッ」と人差し指を口に当てながら言った。

「だね〜うん、分かった分かった!」と……

「よろしくお願いします」と言うと、

「うんうん」とニコニコされている。


優星さんは、チラッと私の目を見て、ニコッと笑った。思わず私もニコッとした。


「ハア〜〜〜〜」と山岸さんは、ニヤニヤしながら、

「言いたい言いたい言いたい……」とブツブツおっしゃっている。

すると、優星さんが、

「え? 山岸さん、胃が痛いんですか? 大丈夫ですか?」と笑いながら言っていた。

「違うわ!」

「ふふ」

──良いコンビだな


そして、優星さんは、営業の為、外回りに出た。

「行って来ます」

「行ってらっしゃい」

やっぱり、目配せをする。


山岸さんに、

「凄いなあ〜視線が絡み合うってこういうことを言うのかしらね〜もうハートが飛び交って、こうなってこうなってるのよね〜ホント気をつけないと、すぐにバレるからね」と身振り手振りで言われた。

「あっはい! 気をつけます」

とは言え、自然と目が合う。いや、目で追ってしまっているからなのかなと思った。



そして、いつも通り午前の仕事をこなして、お昼休み。同期の杏奈ちゃんと一緒に食堂でお弁当を食べる。


杏奈ちゃんには、山岸さんに話した後、優星さんのことが気になる! とまでは話していた。

なので、まさかお付き合いすることになるなんて……


「え──っ!」

案の定、大きな声で驚いている杏奈ちゃん。

「だよね〜」

「あ、ごめんね、大きな声出して」と謝っている。

「ううん、私が1番驚いてるもん」

「そうなの?」

「うん」


でも、杏奈ちゃんは、山岸さんと同じく、私がドS優星! と言いながら凄く気になっているのが、ひしひしと伝わっていたからと喜んでくれた。


「応援する! 3ヶ月と言わず1年でも何年でも、ずっと続きますように」と言ってくれた。

「ありがとう」


すると、今度は杏奈ちゃんから話があった。

気になる人が居る! と先日相談された。

それが私と同じ営業部の吉田なのだ。

初めて聞いた時は、本当に驚いて、私も大きな声を出してしまった。


吉田は、良い奴だとは思うが、見た目は、俗に言うイケメンではない。

どちらかと言うと小野田の方がイケメンだから、私は杏奈ちゃんとお似合いだと勝手に思っていたのだ。


「そうよね〜私なんてね」と言う杏奈ちゃん。

「違う違う!」と私が勝手に小野田だと思っていたことを話すと、

「えっ? そうなの?」と、いつものおっとりしている杏奈ちゃんに戻った。


「そっか、私も応援する! 何でも言って同じ部署だし協力するよ」と言うと、

「ありがとう〜嬉しい」と言う杏奈ちゃんは、ホントに恋する乙女という感じで同性から見ても可愛いのだ。

そして、この前早速メッセージのやり取りをしたいので、IDを聞いて欲しいと頼まれたのだ。


そう言えば、研修中は毎日会っていたから、メッセージのやり取りをしなくても毎日話せた。

なので、この前吉田に言おうとしたが、杏奈ちゃんに確認してからだと思って……



そして、夕方、小野田が帰って来たのが分かったが、吉田はまだ帰って来ていないようだ。


「小野田! お疲れ様〜」

「おお、高橋お疲れ〜」

「吉田は? もう帰って来る?」と聞くと、

「いつもならもう帰ってるから、もうすぐ帰って来るんじゃないか?」と。

「ありがとう」


そして、しばらくすると、上司と共に帰って来た吉田。

「お疲れ〜」と近づくと、

「おお、お疲れ」

「この前言ってた吉田のメッセのIDを知りたがってる人なんだけど……」と言うと、

「え? 誰、誰?」と聞くので、

「杏奈ちゃん」と小声で言うと、

「マジか? 喜んで!」とニコニコしながら、すぐに教えてくれた。


そして、それを見ていた小野田、

「誰だよ、そんなモノ好きは?」と笑っている。

「あ、誰にも言うなよ」と吉田が自ら「杏奈ちゃん」と言ってしまった。

「マジか、吉田! 良かったなあ」と笑っている小野田。


そして、私は早速杏奈ちゃんに、それを送った。

「楽しみだね〜吉田!」と、3人でワチャワチャしている時に、優星さんが外回りから帰って来た。


「あっ、お疲れ様です」と言うと、

「おお、お疲れ」とだけ言って、吉田と小野田を見て、スッと自分の席に座った。


「他の人には秘密ね!」と念を押すと、

「「分かった」」と2人も言った。


そして、席に戻って帰り支度をしていると、妙に視線を感じる。

すると、優星さんとバチッと目が合った。

「ん?」と聞くと、手に持っているスマホを見せたので、メッセージかなと自分のスマホを開いた。


〈何、他の男と浮気してんの〜?〉と届いていた。

「え?」

思わずニヤニヤしながら、優星さんの方を見て、

〈してないよ! ヤキモチ?〉と返信すると、

すぐに既読が付いた。


〈今日、俺んち集合!〉と返って来た。

「え? ふふ」


〈仕方ないなあ〜ちょっとだけ行く〉と送ると、チラッとこちらを見たので、目が合った。


2人だけの世界だと思っていた。


すると……隣りの席から山岸さんが、

「ホント、あなたたちを見てると楽しいわ」と腕組をしてニコニコしながらおっしゃった。

誰も見てないと思っていたので、驚いて、

「あっ、すみません」と言うと、

「良いのよ〜でも、私の方がヘナヘナになりそう」と笑っておられる。

「ふふふふ」


「まあ、仲良きことは良いことよ! じゃあ明日も頑張りましょう! お先に〜」と、

「お疲れ様でした」


そして、わざわざ

「桐生!」と言って、

「はい」と言う優星さんに、

「お先に〜」と意味深な言い方をしながら、優星さんをジッと見て帰って行かれた。

「何? お疲れっす」と言っている優星さん。

「ふふふふ」

おかしかった。



そして、さすがに会社から一緒に出るのは、マズイと思ったので、先に出て買い物でもしてから行くことにした。


優星さんにメッセージを送った。

〈最寄り駅の近くのスーパーで買い物してから行くね〉

〈分かった〉


──そうだ! お母さんにも連絡しなきゃ

と、〈ごめん。今日も晩ご飯要らないです〉と送っておいた。


そして、優星さんの最寄り駅までは来た。

そこで、私は思った。

──あれ? 優星さんのマンションは、最寄り駅からどっちだっけ? 


そうだった! 前回はタクシーで来たのだから、駅は教えてもらったが、道順は分からない。

とりあえず、駅前のスーパーは見えたので、優星さんに、

〈マンションの住所教えて〉と送信しておいた。


偉そうに言っておいて、超絶方向音痴に、初めての道順など分かるわけがない。

すると、

「だと思った!」と言う声がした。

「え?」

「同じ電車に乗ってた!」と言われた。

「良かった〜」

「ハハッ、買い物してから行くって、大丈夫か? って思ってたんだよ」

「だよね〜ごめんね」

「ううん、よくココまで来られたな。行こう」と言って、手を引いてくれた。


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