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第21話 ライバル

 結局、杏奈ちゃんと吉田は、お付き合いすることになった。

営業部と業務部とで、部署が離れてしまったこともあり、杏奈ちゃんは、吉田のことが気になってしまったようだ。


「良かったね」

「うん、ありがとう、花怜ちゃんたちのおかげ」と言うので、

「ううん、私は何もしてないよ。最初からは、杏奈ちゃんのことが良いなって思ってたみたいだし」と言うと、本当に嬉しそうにニコニコ笑っている杏奈ちゃん。


──可愛い〜

そっか、恋する乙女は、側から見るとこんな風に見えるのか……

と思った。


昼食を終え、部署に戻ろうと廊下に出ると、珍しく優星さんが早く会社に帰って来たようで、

「あっ!」と駆け寄ろうとすると、

誰かに呼び止められているようだ。

それも、女性に……


私がボーっと突っ立っていると、杏奈ちゃんが、

「花怜ちゃん? 大丈夫?」と…

「あ、うん。あの女性、誰だろう?」と言うと、

「あっ、あの人 業務部の先輩で、横野さんっていう人よ」と言う。

「あ、そうなんだ。優星さんの同期なのかなあ?」

「あ〜そうだね。2歳年上だもの」

「そうなんだ」


今頃、優星さんのヤキモチが分かったような気がした。

今、私は確実にヤキモチを妬いている。

だって、笑顔であんなに楽しそうに話しているんだもの。


「じゃあ、私戻るね」

「うん、じゃあ又ね」と杏奈ちゃんと別れた。


私の存在に全く気づかないで、ずっと笑いながら2人で話している優星さん。


踵を返して、私は営業部へと戻った。


シュンとしたまま席に着くと、山岸さんが、

「え、え? 何? 何かあったの?」とおっしゃる。

「山岸さ〜ん! 私今、ヤキモチ妬いてます」と言うと、

「ハア〜? 今度はアイツ何やらかした?」と慌てる山岸さん。


私は、今見た光景を山岸さんに話した。

「業務の横野さんって方と、廊下でヘラヘラ鼻の下伸ばして話してました〜」と言うと、

「グッ! あ〜そうなのね〜鼻の下伸ばしてたのね〜横野さんって、確か桐生の同期よね?」とおっしゃった。

「そのようです」と言うと、

「う〜ん、じゃあ廊下で会ったら話ぐらいはするかな〜」とおっしゃる山岸さん。


「分かりますよ! でも、私が吉田や小野田と話してたら、妬くくせに……」と言うと、

「そ、そうなんだ! ならそれは、桐生が悪いよね〜」と……


「ハア〜」

「花怜ちゃん、相当重症ね」と言いながら、笑っておられる。


そして、

「ね〜もうあなたたち、面倒くさいから、1日も早く一緒に住むとかしてくれないかなあ?」と言われた。

「だって、まだ家に来てないし、父にも会ってないからダメなんです」と言うと、

「そうなのね、分かった! 私がガツンと言ってやるわ。任せて!」と、おっしゃるので、

「はい! お願いします」と山岸さんにお願いした。



しばらくすると、優星さんが帰って来た。

「ただいま戻りました」


「お帰り! 桐生! ちょっといい?」と山岸さん。

「え? あれ?」と私を探しているようだが、机に伏せたまま、知らないフリをした。

まだ、お昼休みだし……


そして、しばらくすると、山岸さんが戻って来られたようで、

「花怜ちゃん、バシッと言ってやったからね」と言われた。

「はい、ありがとうございます」と、

私は、優星さんの姿を探したが、居なかった。


「ん?」とキョロキョロしていると、

「屋上行って来な!」と山岸さんに言われた。

「え?」

「置き去りにしてきたから」と笑っておられる。

「はい! ありがとうございます」とお辞儀をして、屋上に向かった。


もうお昼休みは終わる。

今からなら誰も居なくなるからと、2人の時間を取らせてくれた山岸さんに感謝だ。


そして、屋上に行くと、優星さんが居た!

周りに誰も居ないことを確認した。

すると、優星さんが両手を広げている。


思わず私は、走った。が、途中で、

──私、怒ってたんだった!

と気づいて、優星さんの胸に飛び込まずに手前で止まった。


「ん? なんで? おいでよ」と笑っている。

「ううん」と首を横に振る。

こちらに近づこうとするので、

こちらも後退りして、

「浮気してたくせに!」と言うと、

「フッ、してないよ」と笑っている。


「フン!」と言うと、

「嬉しいなあ〜」と言う優星さん。

「私にも言ったくせに、自分だって!」と言うと、

「話してだけだよ、何もないよ」と言った。

「私だって何もないのに、疑われたもん!」

「ごめん! ってホント誤解だよ」と言う。


「鼻の下伸ばしてたくせに……」と言うと、

「フッ、伸ばしてないわ」と笑っている。

そして、優星さんが一歩近づくと、私も一歩下がる。


「なんでだよ?」と笑っている。

「だって、浮気者だもん」と言うと、

「ハハッ」と笑っている。


「あ〜あ」と言うので、

「何よ! 開き直り?」と言うと、

猛ダッシュで私の所まで来て、ぎゅっと抱きしめられた。


「ウウッ」

「この子はホントに困った子だね〜でも、嬉しい!」と私を抱きしめる。

「離してよ!」と言うと、

「離さない!」と、更にぎゅっと私を抱きしめた。


「ハア〜こんなにも花怜のことが好きなんだよな〜」と抱きしめたまま頭を撫でて言った。

「横野さんとイチャイチャ話してたくせに」と言うと、

「イチャイチャなんてするわけないだろ? イチャイチャは、花怜としかしない!」と言われた。


すると、きゅんとして、ツ〜ンとして、なぜか、じわ〜っと涙が滲んで来た。

「ズルッ」

「あ〜あ、又泣かせたな」と指で涙を拭ってくれる。


「姿が見えたから話そうと思ったのに」と言うと

「そっか、その時に横野に呼び止められたのか」と言うので、

「うん」と言うと、


「横野とは同期でさ、アイツは俺がずっと彼女を作らないのを知ってたから、久々に会って、俺つい嬉しくて、やっと彼女が出来た! って話してたんだ!」と言った。

「え?」


「花怜だとは言ってないけど……言っちゃった」と笑った。

「そうなの?」

「うん、花怜が入社して来る前から、横野の友達に俺を紹介して欲しいって言われてたみたいで……俺ずっと断ってた。まだ花怜の事を想ってたから」と言われた。


「え……」

「言っただろ? ずっと花怜に片想いしてた! って」

「うん……」

「だから、横野には話してたんだ! まさかその子と付き合うことになったとは思ってないだろうけどな」と言われた。


驚いた!

まさか、優星さんが同期の異性に、私のことを話してたなんて思わなかったから……


「ホントは、今すぐにでも、俺の彼女は花怜だ! って言いたい気分だよ」と言われた。

「でも、会社だし仕事がやりにくくなるんでしょ?」と言うと、

「うん、お互いにそうだと思う」


だから、皆んなには言わない。

バレたら仕方がないけど……そう2人で話した。


「俺が好きなのは、花怜だけだから!」と言われた。

「うん」

「花怜は?」


もしかして、まだ私が優輝先輩のことを好きなんじゃないかと不安なのかなと思った。


「私だって、優星さんだけだよ!」と言うと、

「そっか」と嬉しそうに笑った。


そして、ジッと見つめて、キスを落とした。


「誤解させてごめんな」と言った。

「ううん。それより、又仕事中なのに……」と言うと、「山岸さんのお許しが出たからな」と言った。


「ふふ、キスしても良いなんて言われてないでしょう?」

「そうか?」

「そうだよ」と笑うと、

「もう一回」と、今度はガッツリと私の顔を押さえて、キスをした。


そして、「はあ〜大好きだ」と抱きしめながら言った。

「ふふ」


「あ、次の休みの日、家に行っても良いか?」と言った。

「え、ホントに?」と言うと、

「うん! まずは1回目! 予定聞いておいて」と言う。

「分かった! 母に言っておく」

「うん! あっ、今日は、金曜日だから、俺んち集合な」と……

「うん」


「たっぷり仲直りしなきゃな」と言う。

「もう今したじゃん」と言うと、

「ううん、もっと、ゆっくり時間をかけて仲直り」と言う。

「ふふ〜戻るよ」

「あれ? 花怜返事は?」

「ふふ」


「いや、ふふじゃなくて……」

「あっ!」と、優星さんの唇を見た。

「付いてる〜危ない!」と言うと、

「もっと付けて!」とか言っている。

「ダメ」と額をペチッと叩いた。


「私、トイレに行ってから戻るから先戻ってて」

「分かった。迷子になるなよ」

「フッ、何度も言ってるから大丈夫よ」

「そっか、気をつけてな」

「うん」とエレベーターで一緒に降りて、トイレの前で別れた。


──あ〜やっぱり好きだ!



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