目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第2話

「な、なんだこれは……」


 悠真が住んでいる203号室の扉の前には山のように宅配の荷物が積み上がっていたのだ。中から扉が開かないとか、そんな配慮もなにもなく山に積んであるのである。あの配達員はこの山に自分が配達してきた荷物をもう置くことはできないと思って宅配ボックスにやってきたのだろう。


「相川さん! いますか?」


 インターフォンを鳴らして声をかけるも応答がない。このまま扉の前に荷物が積み上がっていけば廊下もいっぱいになって他の住人の迷惑になるだろう。しかし呼びかけに全く応答がない。誠司は少し心配になってきた。


(まさか、中で倒れてるとかじゃないだろうな……)


 あまりよくないとは思いつつ、荷物の下の方の伝票を見てみる。すると日付はかなり前のものだ。この日付の荷物がまだここに置かれているということは、その日から部屋の外に出ていないのだろう。


(心配だな……)


 旅行じゃなければ、中で倒れている可能性が高いだろう。いやな不安が頭をよぎった。本当はよくないのだが、緊急事態と判断した誠司は管理室からスペアキーを取って戻ってきた。そして扉の前の荷物を掻き分けて鍵をあける。


「相川さん~! 管理人の宮原です。いますか?」


 少しだけ扉を開けて声をかけるが応答はない。そしてその扉の隙間から覗いた部屋の中は、想像を絶するほど荒れ放題だった。これはいよいよまずいかもと、誠司は躊躇しないで扉を開けて中へ入る。埃っぽさを感じる部屋の空気は淀んでいた。足元にはゴミ袋がたくさん転がり足の踏み場がない。洋服やペットボトル、宅配で届いたNunzonの箱の山。そしてなにより多かったのが本だった。


「なんだこれ、本の山だ……」


 誠司は荷物を崩さないよう慎重に中へ入る。間取りは二DKなのだが、生活スペースはワンルームよりも狭い感じだった。入って左に靴箱、その先にトイレと洗面所と風呂。その先にキッチンがあり突き当たりにダイニング。そこから左側に続きの洋間があるはずだ。その洋間を目指して進み、部屋の奥で青白く光るパソコンのモニターの明かりを見つけた。


「相川さん!」


 声をかけるが、モニターの前で横になっている悠真は動かない。亡くなってるのか? とぎょっとしたが、恐る恐る悠真の腕に触れると温かくてホッとする。だが彼の顔色は悪く、それにげっそりとしていた。


 誠司は何度か悠真の体を揺すったが目覚めないので、いろいろな可能性を考える。とにかくなにか飲ませて血糖値を上げなければだめかも、と思い部屋を出た。マンションの自動販売機で一番あまいピーチのジュースを購入する。急いで悠真の部屋に戻り、眠っているのか気を失っているのかわからないそのぐったりした体を起こし、飲ませようとするが無理だった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?