盟約式を執り行う会場はより一層ざわざわとしている。ここに一番いなければならない、“代表者”がここにいないのだから、当然かもしれない。
月下はきっぱりと断言する。
「手紙に失敗はありませんよ、私の妖精は優秀ですから。評判が高いのを存じているはずですが?」
「……悪かった」
冷静さを欠いているのは、十分認識している。どうも調子が狂う。立場上は自分の方が偉いのだが、そんなものは何の意味もなさない気さえしてくる。
しょせん、ただの“肩書き”だ。
学園長と補佐の月下を遠くで眺めてる
「もうすぐ時間だよなあ。本当に旭先輩来るのかな?」
「来るに決まってるでしょ! 盟約式だよ? 旭先輩の詩が聞ける絶好の機会は早々ないんだから!」
「確かに。旭さんの詩は盟約式とか、しっかりした行事の時じゃないと披露されないから……それ分けろよ」
「えー数少ないんですけど!?」
遠足にでも来たかのような賑わいに、やれやれと上級生たちの詩徒は首をすくめる。新入生を温かい目で見守りながら、ふとひとりの詩徒がぽつりと言った。
「これ――、旭の詩だ」
それは、学園長にも届いたらしい。
森は静寂に満ちている。しかしそれは、一瞬で、別世界へと変わる。陽光さえ届かない、深い深い森の海、枝にかけられていたランプが一斉に点灯する。
世界は一気に花開く。
――盟約式が始まるまで、あと十分。
その頃妖精たちは……。
『もう近くにいねぇ!!』
『しょうがないですよ深紅。あれからさらに注文追加してたら間に合いませんし、待っていられないと思います』
『あいつらは紡ぎ手なんだぞ!?』
『そして僕らは妖精です』
『くっそーなんであんなにうまいんだよ〜ファーストフードってやつは……妖精の心まで掴むとは。末恐ろしいぜ……』
『口車に乗せられた自分が恥ずかしいです。もっと自分を律しなければ』
『全面的におれが悪いけど! でもなんか納得いかねぇ!』
旭たちを全力で追って、盟約式の
――盟約式が始まるまで、あと五分。