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0016 廃病院での戦い

異形の者の中で体が一番立派な者が、今食べていた物を部屋の隅に投げ捨てました。

そこには、沢山の食べ残しが積まれています。


「うげえええぇぇぇぇーーーーーー」


エイリとノブコはそこを見て、たまらず再びしゃがみ込みました。

ユウキは、神様の背中に隠れて震えています。

神様はユウキの手を優しく握りました。

食べ残しには、大量のネズミが集まりその食べ残しをモリモリ食べています。


「お前達は何故ここにいるでぇすか?」


異形の者の一人が、一歩一歩近づきながら質問してきました。

こいつらはきっと、ここには人間は来られないという自信があったのでしょう。


こちらを向いた異形の者の姿は、頭からヘドロのような物をかぶったような色と光沢が有り、極悪の妖魔のような雰囲気があります。とても恐ろしいです。

私も長く存在してきましたが、こんな恐ろしい姿の者を見た事がありません。呪われそうで恐いです。


「まあ、探す手間がなくなっただけだからいいズラ」


横にいたもう一人の者もジリジリ近づきながら言いました。


「な、なつかしい。お前達はカルッパーン族じゃないのか?」


神様が言いました。

微妙にカッパが入っていますね。


「な、何故それを。お前は何者ダニ?」


一番からだが立派な者が言いました。

この異形の者もやはり近づいて来ます。


「かっ、神様よ!!!!」


ユウキが震える声で言いました。

その言葉を合図にしたように三人が神様に襲いかかります。

襲うのに丁度いい距離になったのでしょう。


「おわりでぇーーす!!」

「うおおおおおおおおおズラーーーーーーーー!!!!!」


最初に近かった二人が襲いかかりました。


「お前達が次の食料ダニーー!!!!」


遅れて体が一番立派な三人目も襲いかかります。

でも、この三人は可愛い女の子には目もくれず、神様に襲いかかりました。


「うぎゃああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」


神様は近かった二人の胸を、押し出すように前蹴りで吹飛ばしました。

数メートル吹飛ばされた二人は胸を守る甲羅が割れて血が大量に出ています。

この異形の者は亀のように甲羅が体を全面覆っています。

その甲羅の胸の真ん中が痛そうに割れています。


「なっ!!!! おら達の甲羅は鋼鉄より硬いダニ!! そっ、それを一蹴りで割ってしまったダニーー!!!!」


自分の横を吹飛ばされる二人を見て、少し遅れていた立派な体の者が驚いています。

そして、素早く神様の前で座り込みました。


「ま、参ったダニ」


神様は、蹴り上げようと浮かしていた足を床に降ろしました。


「…………」


そしてゆっくり神様は、無言で頭を下げている異形の者から吹飛ばされた二人の方に視線を移しました。

ふふっ、心配しているみたいです。

神様は優しいですね。


「治癒、治癒、治癒、治癒、ちーーゆぅーー!!!!」

「痛いズラーー、治癒、治癒、ちゆぅーー!!」


二人の異形の者は自分のケガに治癒魔法をかけているようです。

でも、治癒魔法が得意じゃ無いのか、神様の様に一度の魔法では治らないようです。

何度も治癒魔法をかけてやっと少しずつ治ってきました。


「しねダニーーっ!!」


神様がスキを見せたと判断したのか、座って頭を下げていた異形の者が立ち上がりながら、神様のあごに頭突きをするつもりのようです。


「……」


神様はあせる様子も無く胸を蹴り飛ばしました。

神様の動きは、とても素早くて目にも止まりませんでした。


「ガハッ!」


治癒魔法をかけている二人の横を通り過ぎ、いくつものステンレスの台を薙ぎ倒し、壁まで飛んで行きました。

神様は、とっさだったので力の加減を間違えたのでしょうか。

神様の表情に焦りはありません。

不意打ちとは卑怯なので罰のつもりかも知れません。


「あ、あんちゃーーん!!」

「あにじゃーー!!」


ケガが治った二人が、飛んで行くお兄さんを心配して追いかけます。

ドカーーンと大きな音を出して、部屋の壁にぶつかり倒れました。

胸の亀裂も一番大きいです。

血が噴水の様に噴き出しています。

あっ、血の勢いが弱くなり止まりました。


「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!! あんちゃんが死んでしまうーーーー!!!!」


「大丈夫です。僕は、大きい亀は好物です」


神様が余裕で言いました。


「えーーっ、たべるのですかーーーー!!」


ユウキと、私が思わずハモりました。

亀の弟たちも驚いています。


「治癒、治癒、治癒、治癒」


弟たちが必死で治癒魔法をかけます。


「しょうが無いナーー、助けても良いですが、弟君達少し質問に答えてくれますか?」


「もう死んでいるズラーー!!!! くそー、もう間に合わないズラーー!! やれるもんならやってみろーー!! 助けられたら何でも言うことを聞いてやるズラーー」


その返事を聞いた神様は満足そうに、倒れる亀のお兄さんに近づきます。


「ぐわああああーーーーーーー!!!!」


神様が近づいただけで、お兄さんが死の淵から目覚めました。


「なっ、何をしたズラ?」


「普通の治癒魔法ですよ。まあ、灰になったりしなければ、二十四時間位なら細胞が生きているのでしょう、治せますよ」


神様の治癒の魔法は桁違いと言うことでしょうか。

死の淵からよみがえっただけではなく、甲羅の亀裂もすっかり元通りになっています。

きっと、病気があればそれも治っていることでしょう。


「すごいでぇーす。まさに神様でぇーす!!」


「僕は神様では無いのですけどねえ」


「いいえ、いいえ。神様です!! 絶対に神様です!!」


ユウキが神様に駆け寄って背中から抱きつきます。

ユウキにとっては、最高の神様なのでしょうね。


「さて、あなた達には、面倒なので名前を付けます。あなたは、ダニー。あなたはズラー。あなたはデェスです」


どうやら、神様は亀たちに勝手に名前を付けてしまったようです。

一番からだが立派な亀に、ダニー。長兄のようですね。

ズラーは、兄弟の真ん中、次男のようですね。

デェスは三男でしょうか。


「すごいズラー、言い名前ズラ」


「はあーーっ!! オラは嫌だね。なぜ、勝手にてめーに名前をつけられなきゃあいけねえんだ。お断りだ!!」


「あんちゃん、この方に逆らっては駄目でぇす。かっ、神様でぇす。あんちゃんは命を助けられたでぇす。逆らえば簡単にまた殺されるでぇす」


「えっ?! こいつそんなに強いダニか??」


どうやら、ダニーは何があったのかを憶えていないようですね。


「うふふ、今度は相撲で勝負して確かめますか?」


「ふふぇへへ!! その言葉、後悔するなダニよ!!!!」


ダニーが恐ろしい雰囲気で迫ります。

相撲には絶対の自信があるのでしょうか。

でも勝負はあっけなく決まりました。神様の圧勝です。

まあ、そりゃあそうでしょうね。

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