「神様、一台のトラックは十分に積み込めました。すこしせまいでやすが、そろそろ戻りやしょう」
ガンネスがトラックの荷台から声をかけました。
「うん、じゃあ、戻りましょう」
神様は、素直にトラックに戻ります。
いつの間に着替えたのか、女子高生の制服に戻っています。
荷台に乗るときに可愛い制服のスカートから、少し白い物がチラリと見えました。
「ははっ! 俺と神様は戻る。おめー達は残って、後始末だー!!」
ガンネスは、神様に頭を下げると、手下に指示を出しました。
どうやら、ここを半分の手下に任せて奪いとるつもりのようですね。
「へいっ!!」
手下もそれが分かったのか、返事をするとまた慌ただしく散開しました。
「うわあぁ!!!!」
アジトの、二階の事務所の扉を開けた手下の一人が大声を出しました。
ガンネスも神様も一階の倉庫にトラックの荷台から荷物を降ろしていたので、その声にビクンと反応しました。
「た、たいへんでは、なさそうですね」
神様が少しさみしそうです。
「へい!」
ガンネスが、苦笑いで神様を見ました。
「たっ、たたたた、たいへんだーーーーーー!!!!」
二階から別の手下の絶叫が聞こえます。
「たっ! たたた、たいへんです!!!!」
神様がガンネスの顔を心配そうに見ました。
そして足踏みをはじめ、全身から焦りが出ています。
「ふひっ!!」
ガンネスが、我慢仕切れずに吹き出しました。
その恐い顔に優しさがのぞいているように見えます。
「ガ、ガンネス!! 笑っている場合ではありません。すぐに行かなくちゃー!!」
神様がガンネスの手を引っ張ります。
「へいへい」
ガンネスは神様に引っ張られるまま二階へ付き合います。
「はやく! はやく!」
神様の焦りとはうらはら、ガンネスは落ち着き払っています。
どうせ、たいへんなんてそんなにあるわけが無ねえ。大したこと無ねえさ、と言う表情です。
「どうした、てめーら!! 俺と、神様は忙しいんだー! さわぐんじゃ…………ね……え……なっ、な、なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁーーーー!!!!」
二階の事務所の中は荒れ果てています。
机が、あちこちに吹飛んで、部屋の中で爆発でもあったような有様です。
「!? ボ、ボス!!」
始めに部屋に入った手下が、あっけにとられた表情でガンネスの方を見ました。
そして、力なく震えながら右手を上げると指をさしました。
神様とガンネスが、指の先を目で追います。
「なーーーーっ!!!! た、たた、たたた、たいへんじゃねえかーー!!」
神様とガンネスが大きな声をあげました。
「だから、さっきからそう言っています!!」
確かに部下はそう言っていました。
手下の指さす先に、壁に血だらけの男が三人、ひしゃげて張り付いています。
体がありえない方向にグニャグニャ曲がっています。
いったい何があったのでしょうか。
「ユウキーーーーッ!!!!」
神様が叫びます。
やっぱり、神様にとってはユウキが一番です。
神様が素早く首を振りユウキを探します。
神様の視線がピタリと止まりました。
どうやら無事のようです。よかったです。
「か、か、かみ、かみさ……ま……」
放心状態のユウキの目からポロリと涙がこぼれました。
ユウキとエイリとノブコは入り口の扉の前のカウンターのかげで尻もちをついています。
短いスカートのエイリとノブコは、高級で可愛いけどちょっと大人なパンツが丸出しになっています。
ユウキは真面目な長さのスカートなので、ちゃんとしています。よかったですね。
「済みません、お、俺達がついていながら……」
留守番の松葉杖の男がヨロヨロと立ち上がりました。
どうやら、壁の三人よりケガは浅いようです。
「敵は……、敵はどこですか!!」
「ひっ!!!!!!」
回りのガンネスファミリーの屈強な男達が悲鳴をあげました。
神様から、ものすごく強い怒りのオーラを感じます。
心なしか、目が赤く光っているように見えます。
そりゃあ、そうなります。
ユウキを、こんな目にあわせたのですからね。
ぶっ殺しましょう。
「ま、ままま、まってくだせい!! おおお、おお、おちついてくだせい!!」
――てっ、おいっ! まずはお前が落ち着けーっ!
まあ、神様の凄まじい怒りのオーラの前ではこうなるのでしょう。
松葉杖の男ががたがた震えながら言いました。
唇が震えすぎてうまくしゃべれないようです。
「てめー!! しっかりしねーか!!」
ガンネスが、松葉杖の男を殴り飛ばしました。
ゴッ! という骨に染み入るような音がして吹飛びます。
それが、効いたのか松葉杖の男がゆっくり立ち上がります。
「ゴブッ!!」
松葉杖の男は口から血を吹き出すと、そのまま後ろにひっくり返ってしまいました。
白目をむいて、失神してしまったようです。
さすがは、一家のボスです。
屈強な大男をワンパンで失神させてしまいました。
――じゃ、ねーーんだよ。失神させてどーすんだよー。ばかなのぉー。
はっ!! 思わず突っ込んでしまいました。
「ガンネス。やり過ぎです。何をするのですか」
神様が心配そうな顔になりました。
おかげで神様が正気に戻ったようです
まさか、ガンネスは神様を正気に戻そうとしてやったのでしょうか? きっとそうですね。
「いやあ、ちょっと力が入りすぎやした」
ガンネスが笑いながら頭をかいています。
「まったく! 大丈夫ですか?」
神様はガンネスをにらみ付けます。
にらみ付けられたガンネスは、母親に叱られた子供の様な顔になりました。
その後、神様は倒れる松葉杖の男に歩みより介抱します。
「へ、へい。大丈夫です」
松葉杖の男は、すぐに気がつきました。
余りにも回復が早いので、きっと神様が治癒魔法を使ったのでしょう。
「いったい何があったというのでしょうか?」
「へ、へい。実は拳銃で撃たれて神様に助けてもらった三人の男が、意識を取り戻して元気になり、使徒様三人に襲いかかろうとしたのでさあ。そこで俺達が間に入って、止めたのですがこの通り、足が不自由な男と、腕が不自由な男の二人組、あっという間に蹴散らされました」
「それで」
神様は興味深そうに効きましたが、顔が優しいままです。
「へい。三人が、それぞれ三人の使徒様に襲いかかると、『ヴァルキリーレヴォリューション!!』という声が聞こえた後、ものすごい勢いで部屋の中の物を吹飛ばしながら壁に張り付いたのです」
「ヴァルキリーレヴォリューション? じゃあ、あれはユウキ達がやったのですか?」
神様は楽しそうな顔をして三人を見ました。
「すすすす、少し、ちょ、ちょ、ちょんと、ほんのちょっと、押しただけですぅ」
ユウキが、動揺しながらも何とか言いきりました。
「し、死んでしまったのでしょうか?」
エイリとノブコが声をそろえて言いました。
その時、ガンネス達がパンツに気がつきました。
男達全員の目が二人の白い物に釘付けです。
二人も視線にさすがに気がつき、顔を真っ赤にしてスカートをなおします。
「どれどれ、ちょっと、見てきましょう」
神様は、楽しそうに肩を震わせながら、壁に張り付く男達の所へ歩いていきます。
「のわーーーっ!!!!」
神様が大声を出しました。
「ええっ!!!!!!」
ユウキとエイリとノブコの体がビクンと動きました。
「くくくく、全くなんともありませんよ」
神様は三人を床に寝かせると、楽しそうに笑い出しました。
きっと、神様は治癒魔法で治してしまったのでしょうね。
「よかったーー!!!!!!」
三人は大の字に倒れ込みました。
全然よくありませんよ。
おかげで、エイリとノブコの白い物がチラッと見えていますからね。