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0033 ユウキの思い

「ユウキ、エイリ、ノブコ。三人とも戦闘状態がどれだけ危険か理解出来ましたね。使うときは気を付けて下さい」


「はいっ!!!!!!」


三人の女子高生は全力でうなずきながら返事をしました。

神様は三人に笑顔を見せると、視線を二人の留守番の男に移しました。

松葉杖の男と片手の男、留守番をしていた二人の男はビクンと体が反応しました。

神様が無表情なので罰を与えられると感じているようです。

それはそうですよね、神様の一番大切な物を守れなかったのですから。

松葉杖の男と片手の男はガタガタ体が震えだしました。


「か、神様、こいつらは、馬鹿でやすがなかなか良い奴です。どうか命だけは助けてやってくだせい」


ガンネスが両手を合せて神様に頭を下げます。


「いいえ、僕は感謝しているのです。体が不自由なのにユウキ達を守ろうとしてくれたのは、とても勇気のいることです。なかなか出来る事ではありません。ただ……」


神様は感謝をしているが、この二人はユウキ達に性的暴行を加えようとした男達だということがひっかかっているのでしょうね。


「ただ……」


ガンネスが復唱します。

神様がユウキの顔を見ました。

大の字に寝ていたユウキですが、すくっと立ち上がりました。


「私は日本人です。私のおばあちゃんは、山の中で一人暮らしをしています。年金は税金を引かれると四万円を切ります。そんな、貧乏のどん底で生きています。皆さんは、特別な外国人の為の生活保護を日本の国からもらって、とても裕福に暮らしていると聞きました。違いますか?」


「ふ、ふむ。確かに使徒様のおばあさんよりは裕福だ」


ガンネスが真面目に答えました。


「日本人の多くの人は貧乏です。極貧です。それでも政府が、外国人の為に増税すると言えば、断ることも出来ずむしり取られます。大勢の日本人は泣きながら高い税金に苦しみ、外国人を助けているのです」


「ふ、ふむ」


ガンネスは、ユウキが何を言おうとしているのか分からず生返事をしました。


「きっと、一生懸命働いている日本人より、外国人の特別な生活保護と、特別な年金をもらっているあなた達の方が裕福ですよ」


「ふ、ふむ」


「それなのに、なぜ、日本人に迷惑をかけて、その上性的暴行までするのですか。いったい何がそんなに気に入らないのですか? そんなに気にいらなければ、山へ行って私のおばあちゃんを殺して、私も殺して下さい。私は、両親も姉も外国人に殺されました。あなた達、外国人に殺されれば、全員同じ所に行けるはずです。私は、それで幸せになれます。うわーーーん」


ユウキはそこまで言うと、心の底からの悲しい声で泣き出しました。

幼児が寝起きにお母さんの姿が見えなくて、大泣きしているようにワンワン泣いています。


「ぐふっ、ぐぞう」


ガンネスがなにか文句を言いながら涙を拭きました。

少しはユウキの心の叫びが心に届いたのでしょうか。


「す、すまねえ。そんなこととも知らず、俺は遊び半分で使徒様を襲ってしまった。許されることじゃねえ。それにこれまで、日本人を苦しめることに喜びを感じていた。日本人は全員裕福で幸せな国民だと思っていた。神様! 俺は恥ずかしい! 罰を与えてくれ」


「いいでしょう。ガンネス! いえ、ガンネスファミリー全員に罰を与えます。これは、とても重い罰です。破れば全員地獄送りです」


「ゴクリ」


二階の事務所に集っているガンネス一家からツバを飲む音がきこえました。

少し震えている者がいます。

冷たい汗が、流れている者もいます。


「ふふっ、これよりガンネス一家は、組織を拡大して日本人を苦しめる外国人から日本人を守ってもらいます。ユウキのように可哀想な日本人が増えないように。日本人より日本の事を第一に考えて行動して下さい。これが、僕がガンネスファミリーに下す罰です。出来ますか?」


「へ、へい。で、ですが、あ、あの、外国人には何をしてもよろしいのですか?」


「いいえ、日本人に迷惑をかける外国人にだけですよ。平和に暮らす善良な外国人は除外です。ですが日本人に迷惑をかけている人になら何でも、いえ、捕まえてもらえば僕が地獄に送ります」


「ひひひ、そりゃあいい。日本にいる外国人マフィアは全て日本人を苦しめるために来ている。おい、聞いたかお前達。今日からマフィア狩りだ!! 今はマフィアの方が日本人より金持ちだ。全部いただくぞ」


どうやらガンネスは他のマフィアをつぶして、財産を奪いとるつもりのようです。

神様はそれを容認するつもりですね。

何も言いませんでした。


「やってくれますか?」


神様は、松葉杖の男と片手の男に近づいて言いました。


「わかりました。日本を故郷と思い大切にして、日本人を家族と思い守るようにいたします」


松葉杖の男が言うと、片手の男も大きくうなずきました。


「最高の返事です」


神様が笑顔になりました。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


松葉杖の男と片手の男が叫びました。

そして、涙で顔がグチャグチャになっています。


「お、俺は、一生、松葉杖が手放せねえと言われたのに」

「俺は、一生、手が生えてこねえと言われたー! そ、それなのに」


松葉杖の男は松葉杖を放り投げて、少しスキップで動き回ります。

片手の男は、手が生えてきて、手のひらの感覚を確かめるように握ったり開いたりしています。


「か、神様ーー!! 神様ーー!!」


落ち着くと、二人は神様の前にひざまずき手を合せました。

そして、床にひたいをつけて感謝の意を示しました。

長い間、地面にひたいをつけて、身動きひとつしません。

感謝の深さを神様に伝えようとしているようですね。


「ガンネス、柔らかい物しか食べられ無い人も退院したら教えて下さい。堅い物も食べられるようにします」


「ははっ!!」


ガンネスも、松葉杖だった男と片手だった男の横でひたいを床につけて感謝の意を示しました。




「うっ、うっ、うっ、うう、いっ、いったい何があった?」


ユウキ達に吹飛ばされた男達三人が意識を取り戻しました。

上半身を起こして、キョロキョロあたりを見渡します。

そして、ユウキとエイリとノブコに視線をロックオンしました。


「おお!! みんな、いたのかーー!! 見ろーー!! 美人が三人いるぞ、あれ、一人増えているぞーー!! 日本の女子高生だーー!! 楽しむぞーー!!!! 何をしている!! つかまえねえかーー!! はやくやるぞーー!! ひひひひひひひっ」


三人がうれしそうに、はしゃいでいます。

大丈夫でしょうか?

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