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0035 けじめ

「わが日本国では、古来よりけじめの取り方があります」


ノブコがスーカートのお尻をパンパンと、はたきながら言いました。


「……?」


全員がゴクリと唾を飲み、ノブコの次の言葉を待ちます。


「それは」


ノブコが、もったいつけています。


「そ、それは」


全員がノブコに注目してその顔を見つめます。

ノブコはそれがうれしいのか、笑顔になりゆっくり全員の顔を一人一人ゆっくり見まわします。

そして、メガネを外しました。


「おおぉぉーーーーっ!!!!! う、美しい!!」


男達から声が上がりました。

メガネを外したノブコの顔はまつげが長くて、とても美しくキラキラ輝いて見えました。


「切腹です!! 日本の武士なら切腹です!!」


あの、ノブコさん。この方達は、日本人ではありませんよ。

ましてや、武士でもありません。

日本人の中にも武士はもういないと思いますよ。


「ほーう、ハラキリですか」


さすがはファミリーのボスですね。

ガンネスは知っているみたいです。


「のぶこちゃん、らめれーす!! 死んでしまいます」


ユウキがあせって否定しました。

あわてすぎて、少しかんだようですね。

まだ、幼さの残るユウキの超可愛い声で言われたら神様がメロメロですよ。


「そうですわ。こんな時は、こっちですわ」


エイリが小指を立てて、ノブコの隣に立ちます。


「なるほど、ジャパニーズマフィアの指詰めですな」


ガンネスは言いました。

神様は、なんの事かは分からないようですが、ガンネスがいいと思えばそれでいいという感じで放置です。


「はい」


エイリが顔にかげを落として返事をしました。

影で真っ黒になったエイリの顔は、全く表情が見えませんでした。


「おい! 支度をしろ!!!!」


ガンネスが言うと手下がバタバタと走り出し、まな板のような物と、ものすごく切れ味の良さそうなサバイバルナイフのような物を持って来ました。


「用意出来ました」


「うむ! よしやれ!!」


ガンネスは、顔色一つ変えず言い放ちました。

撃たれて血だらけの服を着た男達が、板の上で拳を作り、小指を一本立てました。

それをバッサリ切り落とそうと、ナイフを小指の横に立てました。


「ちょっと待ってください」


神様は何事もないように、普通に言いました。


「っ!??」

「ふーーっ」


ナイフを持つ男が驚いた表情をして神様の方をみます。

それと同時に全員から安堵の息が漏れました。


「それじゃあ、一瞬ですよねえ。この方達は、日本の何の罪も無い女子高生を襲おうとしたのですよ。僕が生きる支えにしているユウキを襲おうとしたのです。それだけではありません、過去には何人も既に襲っているのでしょう。日本の法律はよく知りませんが、あなた達がそこまで好き勝手をするということは、外国人には甘いさばきしか無いのでしょうね」


「えっ!?」


この言葉にガンネスが驚きました。

目が少し飛びだしています。


「小指を切るのはそれでいいでしょう。ですが切り方が違います。小指と薬指の間を手首の方へ切って、小指をそぎ落として下さい」


「えっ、ええーーっ!!!!」


ガンネスファミリーの男達全員の声が上がりました。


「いいですか、ガンネスファミリーの皆さん。幸せに暮らしている一般の人に迷惑をかけることを僕は許しません。もし、それがいやなら、僕を神様と呼ばないでください。そんな組織の人に僕は、神様とは呼ばれたくありません」


「おい、やれ!!」


ガンネスはすかさず低く重い声で言いました。


「ぎゃあああぁぁぁぁーーーーーー!!!!」

「うぎゃあああぁぁぁーーーーーー!!!!」

「ぐわああああぁぁぁーーーーーー!!!!」


三人が大きな大きな断末魔のような悲鳴を上げます。

切るのに手間取り、少し時間がかかっています。

その間も耳をふさぎたくなるような悲鳴は続きます。


「あなた達に襲われた無垢の日本人はそれ以上の苦しみをあじわったと思いますよ。そして、心も体も傷ついています。止血はしますが、痛みは取りません。その痛みは日本人の少女達が味わっている痛みだと思って下さい」


「ふ、ふぐうぅぅっぅぅぅっっっぐうぅぅぅ」


神様が言い終わると、三人の小指は手首からごっそりそぎ落とされ、痛みに耐えるためうなっています。


「ガンネス、そしてファミリーのみなさん聞いて下さい」


神様は机の上に乗りました。


「はっ!!」


全員がひざまずきます。

小指をそぎ落とされた男も、痛みをこらえてひざまずき、歯を食いしばって、声を出さないようにしています。


「世界に危機が近づいています」


「えっ」


「今までのように暮らせるのは、長くて六ヶ月、はやければ二ヶ月です」


「神様の言うことなら、真実なのでしょうが、なにが起こるのでやしょうか。教えてくだせい」


男達が、キョロキョロまわりの男達と顔を見合わせます。

ユウキとエイリとノブコも驚いた表情になりました。


「僕の世界の人間が、この世界の人間を滅ぼして侵略しようとしています」


「ええっ!? で、では、どうすれば良いのでごぜいやしょうか」


「逃げるしか方法はありません。あなた達が戦っても勝てる見込みはありません。ただ」


「ただ??」


「この世界のどこかにレイセイという人物がいるはずです。その人が見つかれば何とかなるかもしれません」


「レ、レイセイ様ですか?」


「うん、でも、無理です。この世界の何処にいるのかも分かりません」


「わかりやした。無理かも知れませんが探しやしょう」


「そうですね。あきらめるのは、まだはやいですね。偶然はあるかも知れません。探してみてください。それと、その日のために保存のきく食べ物とか飲み水とかを集めておいてください」


「へい! あの、侵略者に神様は勝てないのですか?」


「ある程度は戦えるかと思いますが、ショウダンなどという知らない元帥が来ていますので、何処まで戦えるのかは未知数です」


「なるほど、わかりやした。神様でも勝てないかも知れない相手」


ガンネスはブルッと体を震わせました。

そして、嫌な笑いを浮かべました。

これは、ひょっとすると神様がやられそうなら、寝返ろうとか考えているようですね。

悪党ですね。でも、わかりやすくていいです。


「では、僕は帰ります」


「はわわ、ま、まってくだせい」


「どうしました?」


「あの、これを」


ガンネスは四角い手帳のような物を渡そうとしました。


「くすくす、駄目ですよ。神様の住むところは電波が届きません。ど田舎ですから。神様、ガンネスさんは、神様と連絡が取りたいみたいです」


ユウキが笑っています。


「ええっ!! この日本に電波が届かないところが、まだあるのですか?」


エイリとノブコが驚いています。


「ガンネス、ツルツルした丸い金属のような物はありませんか?」


神様は、きっと鏡のような物を想像しているのでしょうね。


「おい! おめー達、聞いただろー探せー!」


「おおっ!!」


男達が事務所中を探します。


「ありやしたーー!!!! ズボンの裾の中にありやしたー!!」


一人の男が丸い銀色の金属の玉を誇らしげに頭上に上げました。

ズボンのすその折りたたんだ中にあったようです。


「てめー!! そりゃあパチンコ玉じゃねえか」


「どれどれ、あー、これでいいです」


神様がパチンコ玉の上に手のひらをかぶせると、パチンコ玉の上に黒い紋章が浮かび上がります。

ユウキ達の小指の紋章とおなじ物です。


「僕を呼びたいときは、この玉を三回こすってください。手が空いていればすぐに来ます」


「お、おおっ! これはいい、これを我らの祭壇にお祭りしよう」


ガンネスがパチンコ玉を頭上に上げました。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


男達が歓声を上げます。

そして、紋章の入ったパチンコ玉の前で手をあわせます。


「おお、パチンコの神様!」

「パチンコの神様!!」

「チンコの神様ーー!!」


「おーいいぃ。だれですかーー!! 『パ』を抜かないでくださーーい」


神様はこの日からガンネス一家のチ○コの神様になりました。


「あなた達は、手柄を立ててください。世界に混沌が訪れればそのチャンスはあると思います。その時に小指は元通りに治します」


チ○コの神様は、三人の小指をそぎ落とされた男達にそっと声をかけました。

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