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0036 オカ研部

「はぁー、はぁー。あー面倒くさーい!! ノブコさん、わたくしも一組にしてほしいですわ! そして、すきあらば、わたくしを置いて行こうとしないで下さい」


放課後、ユウキとノブコが教室を出たところで、ユウキ達はエイリに声をかけられました。

ユウキとノブコは一年一組でエイリは一年四組です。

教室が少し離れています。


「なぜ、わたしがあなたに、そんな便宜を図らないといけないのですか。それに一組だけは成績優秀な人が集められたクラスです。テストで良い点を取ればいつでも一組になれますよ」


「それが、出来ないから言っていますのに。ちょっとお話があります。いったん教室に戻って下さい」


エイリはユウキとノブコを教室に押し戻しました。


「いったい、何のはなしですか? エイリさんと私は友達でも何でもないのですから」


「大丈夫よ。わたくしもお話があるのはユウキさんだけですわ」


「もーー。なんで二人はそんな言い方をするのですかー!! それなら私は二人とも友達でも何でもありませーーん!!!!」


珍しくユウキが声を荒げて言いました。

でも、少し目に涙がたまっています。


「えええぇぇーーーーっ!!!!」


エイリとノブコが驚きの声を出しました。

息ピッタリです。


「嘘です。二人とも私の世界で一番大切なお友達です。だから本当に、二人とも仲良くして下さい。お願いします」


ユウキは両手で二人に抱きつきました。


「……」


エイリとノブコが顔を見合わせて顔が真っ赤になっています。


「分かりました。エイリさんが一組になれるように、理事長にかけあってみます」


ノブコが、エイリの顔を見ながら言いました。


「えっ? えっ? あの、どういうことですか?」


ユウキは意味がわからずにノブコの顔を見つめます。


「うふふ、この学園が出来たのは十五年前。つまりノブコさんがこの世に生まれたときですわ。この学園の別名は旧仲学園。つまりノブコさんが通うために、お爺さんによって建てられた学園ですのよ。理事長はノブコさんのおばあ様ですわ」


でも、説明はエイリが自慢そうに言いました。


「ええっ!?」


ユウキがノブコの顔を見ます。

ノブコはコクリと笑顔でうなずきました。


「でも、期待しないでください。たぶん無理です。わたしのおばあ様は不正が大嫌いなお方なので」


「いいえ、私の方こそ無理を言って申し訳ありません。友達だからこそ、そんなお願いはしてはいけませんわ」


ユウキはもう一度二人にギュッと抱きつきました。

エイリとノブコはまた赤い顔をして、幸せそうな表情になります。


「そういえば、お話ってなんですか?」


ユウキがイスに座って、エイリの顔をみます。


「それです!! 実はこの学園にオカ研部があるのです」


エイリがユウキの前の席のイスに座りました。


「ええ? オカ研部?」


ノブコが質問しながら自分の席に座りました。

ノブコの席は当然ユウキの席のとなりです。

きっと、担任の先生を脅迫したのでしょう。


「そうですわ。ガンネスさんの所でマモリさんが言いましたでしょ。もうじき侵略がはじまるって、あれはわたし達にも聞かせるためだったと思います」


エイリは神様をマモリさんと言いましたね。

その件ですが、神様はど田舎の神社に戻って「ユウキ達に知られてしまったー! 不安にさせるだけだから隠しておきたかったのにーー!!」って、頭をかかえていましたよ。


「それで」


ノブコが不思議そうな顔をして言いました。

その事と、オカ研がどうつながるのっていう顔をしています。


「うふふ、この世には不思議なことが一杯ありますわ。本当にマモリさんという神様がいましたし、カッパもいました。探せばもっといろいろあるのかもしれませんわ。それを、わたし達で研究して探せば、神様の手助けになるかもしれませんわ」


「なるほど!!!!」


ユウキとノブコの目がキラキラ輝きました。

悪い予感しかしません。

きっと、手助けにならずに足を引っ張ることになりますよ。

そんな未来しか見えてきません。


「何をしているのですか。すぐに行きますよ」


ユウキがエイリとノブコの手を取って走り出しそうです。


「あの、ユウキさん。何処へ行くのか、わかってらっしゃるの?」


エイリが手をひっぱるユウキに言いました。


「あっ……」


「ぷっ!!」


エイリとノブコが吹き出しました。

相変わらずユウキは残念なままです。




「音楽準備室ですよね」


ノブコがエイリの顔を見ました。


「はい、ここにあると聞きましたわ。間違いありませんわ」


「すみませーーん」


ユウキは扉を三回ノックすると、大きめの声で言いました。


「はーーい。鍵は開いています。入って下さい」


「おおっ!!」


三人は顔を見合わせて、期待に胸をふくらませています。

引き戸を開けると、以外と広い室内に二人の生徒がいました。

一人は頭が小さいハーフのような美しい生徒。

もう一人は、昔、ユウキが小学校から借りてきた動物図鑑で見た血吸いコウモリのような顔をしています。


「こちらが、オカルト研究部ですの?」


エイリが笑顔で質問しました。

ユウキの目がキラキラ輝いています。

そして、口が「ち」、「ち」って、動いています。

どうやら、血吸いコウモリって思っているようですね。

あの日、ユウキは神様と血吸いコウモリを動物図鑑で初めて見て、二人して大喜びでしたものね。

なにが、そんなに気に入ったのか私には分かりませんでしたけどね。


「はあぁーーっ!?」


うわあ、ハーフの美人と血吸いコウモリが眉間にしわをよせて、鋭い目つきでにらみ付けます。

何がそんなに気に入らないのでしょう。


「まあ、かわいい!」


エイリがそれとは対照的に、とてもうれしそうに言いました。

全く雰囲気をよんでいませんね。


「まあ、それは認めますけど」


ハーフの美人が表情をゆるめて、うれしそうに言いました


「ちがいます。そっちの方です」


すぐに否定しました。

やっぱり、ユウキは血吸いコウモリが気に入っているようです。

でも、否定されたハーフの美人が益々不機嫌になっていますよ。


「えっ!? わ、わたし!!? ああっ! あなた達は一年生のスリートップ!! 一体何の御用かしら??」


血吸いコウモリが驚いています。

きっと、可愛いなんて言われたことが無かったのですね。

でもおかげで、うれしそうになって、声が優しくなっています。


「あの、わたし達、入部したいのですけど」


ユウキが両手を組んでお祈りのポーズで目をシパシパ、まばたきをしていいました。

ああ、かわいすぎます。


「本当ですか。でも、ここは軽音部ですよ?」


「えっ!? どういうこと??? オカ研部ではないのですか??」

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