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0037 交換条件

「あーそれね。それは通称です。私が研直美で、この子が岡本奈々。二人の名字から岡研部というわけ」


血吸いコウモリに似た生徒がケンナオミと名乗りました。と、いうことはハーフの綺麗な子がオカモトナナということですね。

オカモトナナとケンナオミでオカケン部だそうです。

期待外れという感じでしょうか。

あっ、どこかでチーーンという音が聞こえてきました。


「くっくっくっ。ひらめいてしまいました」


ノブコのメガネが白く光を反射してピカリと光りました。

そして、メガネをクイッと指で上に持ち上げます。


「な、なんですか」


奈々と直美が同時に言いました。


「これを見てください」


ノブコは、ノートを出すと開いて、そこにシャープペンで文字を書き始めました。

始めに留富勇希と書きます。ルフユウキ、ユウキの名前です。

そして、十田愛莉と続けて書きました。トダエイリ、エイリの名前です。

最後に旧仲信子と書きます。フルナカノブコ、これはノブコの名前ですね。


「これが何か?」


「これがわたし達の名前です。これに奈々さんと直美さんの名前を書き入れます」


岡本奈々

留富勇希

十田愛莉

研直美

旧仲信子


ノートには五人の名前が書かれました。


「??」


奈々と直美、ユウキとエイリの四人が首をひねります。


「まだわかりませんか。最初の一字を縦読みすると、岡留十研旧になります。もはや運命的です。オカルトケンキュウと読めるじゃありませんか。わたし達はオカルトケンキュウをするために集ったようなものです」


「ぷっ! 確かにそう読めますが、中学生じゃあるまいし、あなた達は高校生にもなって、幽霊やUFOなんて信じているのですか?」


直美が少し馬鹿にして笑いながらいいました。

でも、言い終わると不機嫌そうな表情になります。


「UFOや幽霊なんていませんよね。わたし達が信じているのは神様と妖怪ですよ。何を言っているのでしょうか?」


ノブコが直美と同じような表情になって言います。


「あなたは、馬鹿にしているのですか。神様も妖怪も幽霊もUFOも同じでしょ、全部存在しません!」


直美が怒りをあらわにします。


「では、もし証明したら、信じていただけますか?」


「はあーーあぁーっ!! いいわ。証明出来たのなら信じます。オカルト研究部でいいでしょう」


最初に直美は怒りをあらわにしていましたが、途中から半笑いになって言いました。


「じゃあ、ユウキさん、エイリさん、いきますよ」


「えっ、えっ??」


ユウキとエイリが何の事かわからずに挙動不審になっています。


「これですよ。神様を呼びます」


ノブコは小指をたてて、二人の方に向けました。


「ああっ!」


二人が気付き、ノブコと同じように小指を立てます。


「かみさまー! おいでくださーい!!」


三人が小指を頭上に上げて爪をこすり合わせました。


「あのー、よびましたか?」


「うわあっ!!」


奈々と直美が驚きました。

突然神様が制服姿であらわれました。


「学校で呼ばれたから、ちゃんと制服で来ました」


「かみさまーー!!」


エイリとノブコがすかさず、神様の腕に抱きつきました。


「エイリとノブコはいつも元気ですね」


「はい!!」


「どうですか?」


ノブコが神様の腕に抱きつきながら、自慢そうに奈々と直美に向って言いました。


「こ、こんなの手品です。なにか仕掛けがあるはずです」


直美が言いました。


「直美、あきらめましょう。こんなことを目の前で見せられたら信じるしかありません。バンド名はオカルト研究部でいいです。皆さんは何か楽器が出来るのですか?」


奈々はちゃっかり、全員を軽音部に取り込むつもりのようです。


「えっ!?」


こんどは、エイリとノブコが驚きの表情です。


「ねえ、神様。ちーちゃんだよ」


「ほ、本当です。か、かわいいですねえ」


ユウキと神様がヒソヒソ話しています。

どうやら、直美の事をちーちゃんと呼んでいるようです。

どうせ、血吸いコウモリのちーちゃんだと思います。

そういえば、動物図鑑を見ていたときに、二人は血吸いコウモリのところで一番盛り上がっていたのを思い出しました。

直美を見て、神様とユウキはうれしそうに滅茶苦茶盛り上がっています。


「本物です!!!!」


二人の声が合わさりました。

違いますよ! 失礼ですからね。




「わたくしはピアノとバイオリンを習った事があります。じゃ、なくて、なんでオカルト研究部がバンド名になっているのですか?」


エイリは返事をしましたが、ちゃんと奈々の策略を見抜きました。


「うふふ、いいじゃないですか。部活動は軽音部のままで、バンド名がオカルト研究部。その代わり、わたし達もオカルト活動を協力します。皆さんはバンド活動の方を協力して下さい」


奈々はずる賢いですね。

なかなか、いい交換条件です。


「うふふ、分かりました。私はお琴と三味線です」


ノブコが、どうやらこの交換条件を悪くないと判断したようですね。悪い笑顔で答えました。


「す、すごい!!!!」


奈々と直美が喜んでいます。


「斬新です。三味線がギターの代わりなんて新しいです。目立ちます」


奈々が目をキラキラさせながら言いました。

直美の目もキラキラ輝いています。


「で、あなたは何が出来るのですか?」


直美が、ユウキに聞きました。


「はい、これですよ。ちーちゃん」


ユウキは、部屋の中で見つけた青と赤の楽器を手にしました。


「ち、ちーちゃん? 私は直美ですよ。ちーちゃん要素は無いと思いますが。まあいいです。それより、そんな物楽器の内に入りませんよ」


「えーー!! 私は村の学校で、カスタネットの神童と言われていたのですけど」


「はあぁーー。カスタネットのしんどぉーー?」


奈々とちーちゃん、エイリとノブコが驚きの表情でユウキを見ました。


「仕方がないですねー。やって見せましょう」


そう言うと、ユウキがカスタネットを手に持ちました。

ユウキは手を小刻みに動かしてカシャカシャという音をリズミカルに鳴らします。

その音に合わせて、体を動かします。


「おおーーっ!!!! すごぉぉぉーーい!!!!」


全員が感動しています。

カシャカシャという音がもはや小刻みすぎて、打楽器の音には聞こえません。


「でも、使えません」


ちーちゃんが冷たく言い放ちました。


「えーーっ!?」


自信満々だったユウキが悲しげな表情になりました。


「他の楽器は?」


ちーちゃんが期待を込めて言いました。


「他には、な、何もできません」


ユウキがシュンと意気消沈しています


「で、神様は何ができますか?」


ユウキに関心を無くしたちーちゃんは神様に視線を移しました。


「僕は、ヒメガミマモリと言います。神様はやめて下さい」


「えっ!? 僕??」


奈々とちーちゃんが驚いています。


「僕に楽器は出来ません」


その時、入り口の扉が開きました。


「ああ、吉田先生」


奈々とちーちゃんが開いた扉の方を見て言いました。


「うふふ、少し休憩に来ました……って、えっ!! なんで神様がいるのですかー!? こ、ここは女子校ですよ!!」


先生が驚いています。

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