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0059 突然の質問

「はあぁー、行ってしまわれたか」


アスランがため息をつきました。


「すす、すげーー!! すげーー!! あれは、本当の女神様だ。見た目の美しさだけでも人間離れしているのに、やることなすこととんでもねえ。いや、言っていることもすごかった。そのうえ美しい」


ケンイチは美しいを二回も言っていますよ。

ヒデキもヒサシも三狂獣もうなずいています。

まあ、わかりますけどね。

最近美しさに磨きがかかっています。


「おい、ほら」


アスランがヒデキの前に手を出します。


「えっ!?」


「『えっ』じゃ、ねぇーんだよ!! とぼけるんじゃねえ!! とっとと返しゃあがれ!!」


アスランが少し怒ったふりをして、出した手の平を何度も前後に動かしながら言いました。


「これは、凄いものですね。一体なんなんですか」


幸魂工業高校の総長ヒデキが、アスランにお守り袋のような物を、返したくなさそうに返しながら聞きました。


「こいつは、ガンネスファミリーの初代の御神体、チンコ玉だ。ガンネスファミリーの守護神であるマモリ様が最初に俺達にくださったありがたいものなのさ。今の御神体はボスの元にある、少し大きい金玉だ」


「き、金玉!?」


「そうだ。純金製の金玉だ。金玉の横には、このチンコ玉によく似たパチンコ玉が二千個くらいある。見た目は同じだがチンコ玉とは全然違う。まず、パチンコ玉は金玉から離れすぎると力がなくなる」


「なるほど、でも近くにあれば、同じ力があるのでしょ」


「うむ」


「すげーー!! これを持っていたら、川北商業の連中の攻撃が当たっても全然痛くありませんでした。それどころか、軽く小突くだけで数メートル吹飛びます。三十人ぐらいと戦いましたが、ほぼ一人で勝てました。これと同じ力が金玉の横のパチンコ玉にあるということですね」


「そうだ。しかし、小突くだけでよかったぜ。本気で殴ったら、死者が出ているぜ」


「ふふふ、間違いないですね」


「じつはなあ、それだけじゃねえんだ。この中の御神体のチンコ玉は袋から出して直に三回こすれば、マモリ様が来てくれる。パチンコ玉にはそんな機能はねえ。だから、これは今でも俺達の御神体だ」


「すごいですね!!!! でも」


「でも、なんだ」


「御神体がチンコ玉に金玉では守護神のマモリ様が少し可哀想です」


「ぎゃはははははは!!!!」


そこにいた男全員が、大笑いしています。

男って奴はーー、お品がありません!!

私は、このまま少し異世界人のアジトをのぞいてきましょう。






久しぶりに来る異世界人の本拠地です。

巨大な施設の地上階では、宗教の信者のような人が笑顔で明るくすごしています。その顔はまるで楽園に暮らす人達のようです。

ですが、本当の顔は地下にあります。


「もう、いい加減にして下さい。こっちはいつでも行けるように準備はすべて終わっています。元帥は何と言っておられました?」


地下の一番奥の立派な扉の部屋から声がします。

若い将校数人が、見た事の無い人に言い寄っています。


「ふふふ、もう暴発寸前と言うところだな」


そう言いながら、以前ショウダン元帥の座っていたイスに座ります。

まだ、若いようですが、余裕がありますね。

上官でしょうね。


「そんな、お前達に朗報だ!」


「な、なんですか? ゾウゴ司令」


物をしまっておく所のような名前ですね。


「ふふふ、侵攻の日が決まった。よって、これ以前に勝手な行動をすれば、理由いかんに関わらず極刑に処す、ということだ」


「な、なんと!! それでその日はいつ!?」


「それは、極秘だ。皇帝陛下自ら宣下されるとのことだ。だが、時期は教えてもらえた」


「お、おお!! で、その時期とは?」


「ふむ、秋の収穫が終わるのを確認したらすみやかに命令される、との事だ」


「おおお!!!」


「この国に潜伏している者達にも知らせて、決して我らの存在を知られないようにせよと伝えておけ」


「はっ!!」


とうとう、異世界人は侵攻する日を決めてしまったようですね。

でも。その日は極秘。さすがですね。

私みたいな、スパイがいるかもしれませんものね。

そういえば、潜伏している者と言っていました。

異世界人もスパイを出していて、日本人の中に紛れ込んでいると言うことでしょうか。

さて、私も安土のお山に帰りましょう。






「マモリ様、お知らせしたいことがあります」


私は静かに神社で、いつもの様にボーとしているマモリ様の前に立って言いました。

ここで「たいへんです」なんて言おうものなら、それこそ大騒動になってしまいます。


「はい、安土様なんですか」


マモリ様が姿勢を正し、視線を私に集中させました。

すると、マモリ様の回りにカッパ八人衆と、リリイが集って来ました。


「はい、えーーと、物をしまうところみたいなー、えーっと」


「物をしまうところ?」


「ロッカーですぅ」


私の言葉は聞こえないようですが、神様の言葉に反応して、リリイがいいました。


「そ、そうです。ロッカー司令が。ああ、異世界人のアジトへ行ってきました。そこで、ロッカー司令が、侵攻は秋の収穫後に行なうと言っていました」


私は、たいへんな事実を知って少しあわてているみたいです。


「そうですか。それはたいへんですね」


「た、たいへん!!」

「たいへんだーーー!!」

「たいへんですぅ!!」


あーー、マモリ様は落ち着いているのに皆が大騒動になりました。


「み、みんなーー!! おちついてーー、落ち着いて下さい」


今度はマモリ様が落ち着かせる番です。


「ぜーぜーー!! ぜーーぜーー!!」


皆は「ぜーぜー!!」言うほどあわてたようです。


「異世界人が、秋の収穫後に攻めて来る事が分かりました」


「!!!!」


全員がマモリ様を驚いた顔をして見つめます。


「ねえ、皆は、帰りたいですか?」


突然マモリ様はそう言って、全員の顔を見ました。

そうですね、ここにいる人達は全員異世界人でした。

なんて、答えるのでしょうか?

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