マモリ様は、コロシアムの闘技場の舞台の上を指さしました。
その後に、自らも舞台の上を目指し歩き出します。
「おおーーとっ!! 舞台にコング選手が上ります。マモリ選手もまもなく舞台に到着します。審判をダニー選手がやるようですね。デェスちゃーん、放送席に来て解説をお願いしまーーす!」
「えーっ!? オラデェスかー? 何も出来ないと思いますがいいのデェースか?」ぷるん
放送席でマーシーが、鼻の下を伸ばして高速でうなずいています。
「ぐおおぉぉぉぉーーーー!!」
「おおーーとっ!! 先に舞台の中央にあがったコング選手が両手の拳を胸の前に合わせて気合いを入れます。いったい、これから何が始まりというのかーー!! そして、審判のダニー選手とマモリ選手も舞台に上がりましたー」
「剛力かいほーーう!! うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」
コングの声がコロシアム全体に響きます。
「おおおーーとっっ!!!! コング選手の体が肥大します。そして、体の色も浅黒く変色します。角も鋭く長くなりましたぁーー!!」
「フーフーッ!! 剛力を解放した。俺の今の力はさっきの戦いの二百パーセントだ???? な、なにっ????」
コングが驚いた表情になりました。
何かがあったみたいです。
「おおーーとっデェス!! これはどうしたことデェスか? マモリ様の暗黒の魔力がコングの方に流れて行くデェス」
マーシーの真似をして、デェスちゃんが言いました。
私には黒い魔力は見えません。
見えませんが、マモリ様から漏れ出した暗黒魔力が、コングに流れ込んでいるようですね。
ひょっとすると、マモリ様とコングの相性は最強なのではないでしょうか。
「おおーーとっ!! コング選手の体が真っ黒な金属の鎧に覆われるように変化しまーす」
「ぐふふふ、何があったのかは、わからないがさらに力が倍になった。ふふふ、三百パーセントの力になった。こんなことは初めてだ。力が体中から湧き上がってくる。負ける気がしない」
コングの体が真っ黒な戦闘ロボットのようになりました。
でも、コングあなた、有頂天になるのはいいのですが、計算が間違っていますよ。
二百パーセントの倍は四百パーセントです。
「マモリさまーー!! その黒い暗黒魔法を漏らさないように出来ないズラかー? コングの力になってしまっているズラーー!!」
ガンネスチームのベンチから、ズラーが舞台の上のマモリ様に聞きました。
「あーー、これですか。無理です。まだ使い始めたばかりで、自由にコントロールできません。もう少ししたら出し入れ自由になると思うのですが」
「おおーーとっ!! これは、大変な事になりました。ただでさえ、強いコング選手が、新たな力まで手にいれました。この戦いはいったいどうなってしまうのかーー」
「さあ、もういいダニか?」
「ふふふっ、おう!!」
コングが、不敵に笑いながら返事をしました。
マモリ様は緊張した表情になり無言でうなずきます。
まさか、マモリ様でも不安なのでしょうか?
それほどコングの力が強くなったという事なのでしょう。
ダニーが舞台の中央で、マモリ様とコングの顔を交互に見ました。
「始めるダニーーッ!!」
「おおーーとっ!! 審判ダニー選手のはじめのコールです」
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! マモリ様ーー!! 」
観客席はガンネスファミリーだけです。
マモリ様に声援を送ります。
「おおーーとっ!! 先程の試合と打って変わって、コング選手から仕掛けます。マモリ様の頭程もある拳がうなりを上げてマモリ選手に襲いかかります。当たればひとたまりもないでしょう。今回のコング選手に油断は無いようです」
「こ、これは、やばいデェス」
「どうしました。解説のデェスちゃん」
「コング選手が強くなりすぎているデェス」
「おおーーとっ!! ここで解説のデェスちゃんから衝撃の発言がありましたー。コング選手が強くなりすぎているようです。危うしマモリ選手、このまま、美少女の命が失われてしまうのかーー!! マモリ選手はコング選手の攻撃をギリギリでかわしています。このままいつまでかわしきれるのでしょうかーー!!」
「これは、やばいズラ」
デェスちゃんもズラーも、心配しています。
このままでは、マモリ様が負けるということなのでしょうか?
マモリ様の表情にも焦りが見えます。
「うおおーーとっ!! ここで、マモリ選手の体が消えました。うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! こ、これはすごい事になりましたーー!! コング選手の体が突然、零式艦上戦闘機二一型のプロペラのように回転して、ファルコンチームのベンチの上の観客席まで飛んで行ったーーーー!!!! そして、観客席を回転しながら破壊していくーー!! まるで草刈り機が雑草を刈り取っていくようだーーーー!!!! 何という攻撃だーー!!!! やり過ぎです。いくら何でもやりすぎです。これではいくら何でもコング選手が死んでしまいます!! こんな攻撃は親の敵にだけ使ってほしいものです。スポーツマン精神に反していまーす!!」
「あーーっ!!」
マモリ様が右手の平を前に出した姿のまま声を上げています。
きっと、右手の平でコングに回転を与えて押したのでしょうね。
ちょっと、やり過ぎたという表情です。
「やってしまったデェス。余りにもコングが強くなりすぎていたから、マモリ様も力加減がわからなくなっていたデェス。少し力を入れすぎたみたいデェス」
なるほど、マモリ様が不安そうにしていたのは、力加減がわからなかったからですね。
「こ、これは、酷い。さすがにコング選手も力尽きたでしょう。おおーーとっ!! コング選手が観客席の瓦礫の中から立ち上がります。そして、一歩一歩、闘技場の中央の舞台に近づきます。驚きましたーー!! あれほどの攻撃を受けながら、生きていただけでは無く、歩いていまーーす!! そして、舞台の上で倒れ込みましたーー!!」
「それまでダニ!! マモリ様の勝ちダニ!」
「おおーーとっ!! ここで審判が勝利宣言!! マモリ選手の勝ちがきまりましたーー!! すごい、すごい!! 本当にすごい試合でしたーー!! 私が他の場所で言っても、薬中が幻覚でも見たのだろうと笑い飛ばされそうな試合でしたーー!! 私は一生この試合を忘れないでしょう!! 興奮が抑えきれません!!」
マーシーはデェスちゃんの胸をチラリと見ました。
どういう興奮が抑えきれないのでしょうか?
バカすぎです。
「コ、コングが死んでしまうですのぉ」
ミミイが、いいながら観客席からコングに駆け寄ります。
「ぐはあぁ!!」
コングが息を吹き返しました。
きっと、マモリ様の治癒ですね。
「あなた達程の人が、なぜファルコンファミリーに力を貸しているのですか?」
「仕方がないですのぉ。一緒に暮らしていたスラムの子供達がファルコンファミリーに助けてもらった恩があるですのぉ」
「そうですか。ファルコンも人助けをしていたのですか」
マモリ様がうれしそうです。
「マ、マモリ様! どうか俺とミミイを、マモリ様の家来の末席に加えてください!!」
コングはマモリ様の前で姿勢を正すと額を床に擦りつけました。
「えええっーー」
出ました。マモリ様のこの世の終わりの様な顔です。
誰が見ても嫌がっています。
「お願いですのぉ」
ミミイちゃんまで、コングの横で額を床に付けます。
「神様、お願いします。何でもします。鳥居の上の拭き掃除もします。だから、仲間にしてあげて下さい」
ガンネスチームのベンチから飛び出してきたユウキが、ミミイの横に来て床に額を付けました。
「ず、ずるいよー。ユウキー! 僕はユウキの頼みなら、僕が出来る事なら何でもするっていう、約束があるのですからーー」
でも、なんで、ユウキはそんなにまでして、この二人を仲間にしたいのでしょうか?