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第11話 訓練III

「父上、いや、魔王様。いまだ、桜花を捕えることが出来ず、申し訳ございません。」

ここは、関東地方某所。

アバンは、事の経緯を報告していた。相手の姿は黒い影しか見えない。

「アバンよ、私はお前をはじめ、四天王には期待している。人間に身を堕としたとはいえ、お前達は誇り高いドラゴンだ。後悔はさせないでくれ。」

「畏まりました。」

「下がって良いぞ。アバン。」

「ははっ。」

アバンは、唇を噛みしめながら、握りこぶしを強く握った。

「おのれ!ハック!オウカ!今に見ていろよ!!」

アバンはどこかに消えた。



一方、そのころ。

僕の家では、パーティの総合力強化訓練が行われていた。

「腕立て、200回!」

「は、はい!」

「スクワット、200回!」

「は、はい!」

「桜花は、魔法連続詠唱、200回!」

桜花の訓練は、人形を相手にヒールや防御魔法を連続で唱える訓練だ。

「イボンヌは、射的、200回!」

イボンヌの訓練は、矢の命中率を上げるための射撃訓練。

「ロックは、ダッシュ、200本!」

ロックの訓練は、足の速さを強化するためのものだ。


ロックが仰向けに倒れて音を上げた。

「おいら、もう、クタクタだよ。」

さすがのイボンヌも疲れて座り込んでしまった。

「あたしも、もうダメだ。」

桜花は、一人で怒っている。

「また、私達だけにやらせて、ハクは楽してる。」

「うるさい!文句言うと追加するぞ!」

スパルタなようだが、今後予想される厳しい戦いを考えれば、まだまだ、甘い。

僕だって、両手両足に付けている重りを以前の倍の重さにして鍛えているんだ。

魔法使いだって体力勝負なのだ。


「訓練の後には、ごちそうも用意してあるぞ!もちろん、今日もカレーだ!」

「もうええわ!!!」

桜花から強烈なツッコミが入る。

でもくじけない。誰が何と言おうと、僕のカレーは美味い。

たとえ一週間連続であろうと。

「七日目のカレーが一番美味しいんだ!」

「もう、カレー以外のものが食べたいです。先生。」

桜花とイボンヌが心なしかゲッソリしている。

「おいらは、毎日同じものでも食べるぜ!」

ロックだけは、僕の気持ちをわかってくれるようだ。


屋敷全体にかけている桜花の結界魔法は、桜花自身の魔力のレベルアップによって、かなり強化されている。

ザコや中級の魔物くらいなら、簡単には侵入できない。

ロックもああ見えてシーフとしてのスキルは一流で、魔物や人間の気配はすぐに察知できる。隠密行動にも磨きがかかっている。

体力がついてきたので、攻撃力もアップした。

足の速さに攻撃力がプラスされれば、とても頼もしい。

僕と桜花も、魔導書の助けもあって、上級魔法まで使えるようになった。

あともう少しで、大魔法使いハックも完全復活だ。


敵の正体もだんだんとハッキリしてきた。

僕らと同じ世界からの転生者。

種族関係なく、魔物であっても、日本には人間として転生してくる。

ただし、魔法や固有スキルは持ったまま。

僕らに利点があるとすれば、彼らもまた人間だということだ。

魔物でなく、人間なら倒せる。

あとは、敵の拠点を探るだけだけど、捕まえて話させようとしても、簡単にはいかない。

遊園地で襲ってきたジェットのように、敵に捕まると死ぬ呪いが掛けられているからだ。

敵もなかなか賢い。


僕らは、敵についての情報収集を慎重にしながら、時を待っていた。

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