今日はパパとママと一緒に連夜の家に行くんだ~。
昨日の夜に突然、ママが想くんに会ってみたいって言うからママの事が大好きなパパは二つ返事でオッケーをしたってわけなんだけれど……さすがの連夜もあの二人にお願いをされたら無下にできるわけもなく、しぶしぶ了承していたっけ。
思い出すだけで笑ってしまうけれど、僕も皆に会えるのは嬉しいから今日は猛スピードで仕事を終わらせた。
「想くんってね、めっちゃ可愛いしあの連夜が溺愛してるんだよ~? 信じられないでしょ」
「そうやって
「ふふふ、そうだよね。最初見た時僕も驚いたよ! もうね~誰かと話していると嫉妬の塊の目で見てくるんだよ。でも想くんが話しかけたらすぐにデレるから笑っちゃうよね」
「ふははっ、あの連夜がねぇ」
ママもパパも半信半疑だけど、あの状態の連夜を見たらきっと納得するはずだよ。
「しかも、想くんに大キライになる! って言われて、最近佐倉くんっていう人を雇ったんだよ。普段なら絶対そんなことしないのに」
「ん? 佐倉?」
「佐倉……いや、たまたまかも知れない」
「櫂、佐倉って」
「? どうしたの?」
あからさまに二人が驚いた表情で動揺しているけど、どうしたんだろ?
「も、もしかして佐倉って、
「……ちょっと小さくていつもニコニコの!」
「ヒヨコみたいな金髪でっ」
「笑うとえくぼが出来て目が真ん丸で、天真爛漫な感じの!」
「えっ? そんな感じだけど? たしかこの間佐倉くんと一緒に撮った写真があったような? あ、あった! この人だけど」
つい先日、連夜の家で撮った佐倉くんとの写真を見せると目の前の二人がスマホを覗き込んで無言になる。
でも、次の瞬間突然顔を上げた。
「っ、知ってるも何も!」
「俺達ずっと佐倉を探していたんだ!」
「え?」
話が全く見えないけれど、とにかく二人が本当に嬉しそうな表情で興奮している事だけは分かった。
「櫂、俺は猛烈に嬉しいよ! 早く連夜のところに行こう」
「ああ、急ぐぞ」
「う、うん」
予定時間より随分早く車に乗り込むと、車内では佐倉くんと二人の関係を教えてくれた。
なんとパパとママは佐倉くんと大学の同級生だったみたい!
同じサークルに所属していて(部員三人)仲良しだったんだけど……ある日何も言わずにパタッと居なくなった佐倉くんと音信不通になってしまい、それからずっと二人で探していたけれど結局今まで見つからなくて、ずっと心残りだったんだって。
初めて聞く二人の過去にそんな事があったなんて、驚きと共に運命さえ感じていた。
「ちょ、ちょっと速くない?」
「これでも抑えてるんだって」
「辰巳! もっとスピード出してよ」
「ちょ、ちょっとママ」
法定速度ギリギリで走る車に苦笑いしながら、嬉しそうな二人を後部座席から眺め俺達は予定時間より随分早く連夜の家へ到着した。
◇◇◇◇
「……早くない?」
「ちょっと事情があって」
「連夜、邪魔するぞ」
「お邪魔します! ねえ佐倉はどこ?」
全く話の見えていない連夜は二人の圧に圧倒されながらも、多部ちゃんの家に佐倉くんがいることを告げていた。
「ありがとう!」
「先に多部の家に行くから、あとでな」
「……」
「行ってらっしゃい」
二人を見送ると、連夜が説明しろと詰めてきた。
「僕もよくわからないけど、佐倉くんはパパとママがずっと探していた大切な友達らしいよ」
「辰巳さんと輝久さんが?」
「うん、出会いは大学生の時らしくて……」
さっき車内で聞いた話を簡単に連夜に説明をすると、途端に連夜の顔が曇りだす。
「まあ、あとは帰ってきた二人に聞かないとね? ふふふ、想くん達に感謝だね」
「ああ、そうだな。俺も今から想を迎えに行くから」
「オッケー」
連夜は何とも読めない表情をしていたが、あの時いつものように感情のままに佐倉くんを手にかけなくて本当に良かったと思うよ。
とにかく後は皆が揃うのを待つのみ!
僕はさっきから鳴りやまないお腹の音に苦笑しながら、今夜の料理を楽しみにリビングへと向かった。