想と楽しくおしゃべりして寄り道したことを今では後悔している。
目の前で意識を飛ばされた想を見て、かなりまずい状況にいることを悟った。
「佐倉くんだっけ? 変な動きしたら、想くんが危ないからね?」
「大人しく付いてきて」
「……はい」
男たちの指示に従いながら大人しく付いていくと、人気の少ない場所にスモークが張り巡らされたいかにも怪しげなワンボックスカーが駐車してあるのが見える。
「よいしょ! あー想くんは軽いね」
「想!」
「大丈夫車まで行くだけだから」
俺は何も出来ず、軽々と担がれた想を見つめながら男達の指示に従いその車に乗り込んだ。
(大丈夫、きっと連夜さんの事だし想の携帯にGPSでも仕込んでいるはず)
「あ、二人の携帯出してね?」
「えっ」
「早く」
「はい……」
俺と想の携帯を受け取るとニヤリと笑った男たちは窓からソレを投げ捨てた。
「これで連絡は誰とも取れないよ」
「ふふふ、楽しもうね」
(怖い……どうしよう)
今からどこに行くのかはわからないけど、さっきから熱のこもった視線を向けられ冷や汗が止まらない。
(でも大丈夫、想は絶対に守るから! お願い連夜さん、多部ちゃん……気付いて!)
◇◇◇◇
車にゆられて一時間くらいかな? 見たことも無い場所に連れてこられる。
想はまだ眠ってるみたいだけど、とりあえずこの二人の会話から察するに想の店のかなりの常連だったようだ。
でも、出禁になったって事は連夜さんが下心があるから駄目だと判断した奴らだろう。
(となると……想に下心ありありで近付いてたって事だよね? 確か多部ちゃんと夏目さんさんがそういう輩は全て出禁にしたって言ってたし)
そんなことを考えていると急に車が止まった。
「さあ着いたよ? 降りよっか」
「……はい」
想は抱えられてるし、とにかく言われるがまま男達の後に付いて行った。
なにか場所が分かりそうな目印が無いかと辺りを見渡すけれど、そこには大きな別荘みたいな家と湖のような池と木しかなかった。
(一体ここはどこなんだろう)
「付いてきてね」
「はい」
男達は重厚そうなドアを開け、ぽつんと一件だけ建っているこの家の中入った。
「ははは、やりましたね~」
「本当だよ! ようやく、ようやく想くんを抱ける!」
「いやーほんと長かった」
「いつも抱きたいって言ってたもんな」
「九条グループにびびって手を出せなかったけど、想くんの恥ずかしい姿を撮って脅せば想くんの方から九条にさよならしてもらうってのは我ながら考えたよね」
「ああ、もう少しで手に入れるはずだったのに……あいつが想くんを側に置いてから、俺らも迂闊に近付けなかった! でもこうして機会を狙ってたかいがあるな」
「ここは流石に誰も知らない場所だし連絡手段もない。はははは」
「お預け食らった分、今からたっぷり可愛がってあげないとね?」
(っ……ヤバイ! ヤバイ! ヤバイ! ヤバイ!)
俺達をベッドの上に座らせてそんな会話をしてる誘拐犯二人を驚愕の眼差しで眺めていたけど、今にも二人が想に襲いかかりそうで気が気じゃなかった。
(なんとかしないと……俺が想を守らないと!)
「想くん寝てるけど、いただいちゃおうか?」
「いーっすねぇ~」
(ダメ、想に手が触れそうだよ……どうしよう……どうしよう)
「あ、あの……想、想はまだ寝てるので、た、楽しめないと思うから……俺が相手するよ? 俺じゃだめ?」
(可愛く言うんだ佐倉! 頑張れ!)
一人の男の服の裾を掴んで、上目遣いでお願いをする。
「想が起きるまで、おれが満足させるよ? だめぇ?」
ペロリと自分の唇を舐めながら言うと、ゴクリと二人の喉が鳴ったのが分かった。
(もう少し……もう少しだ)
「いっぱいしよ? 満足するまで」
「っ可愛いね……いっぱいしよっか?」
「うんっ!」
「想くんが起きるまでたっぷり可愛いがってあげるよ?」
「ふふふ、ありがとう! じゃあ準備するね」
(って準備って何したらいいんだよ! まともにキスさえしたこと無い俺には正直どうすればいいのかわからない)
「一緒に準備しよっか?」
「だ、大丈夫! 一緒には恥ずかしいから……お楽しみにしててね?」
「可愛いねぇ~想くんもなかなか起きないし、佐倉くんだっけ? 俺達と楽しもうよ」
「っうん……」
そう応えるとニヤニヤしている誘拐犯達からよく分からない道具を渡されたけど、自分の知識を振り絞って考える。
必死に涙を堪えながらバスルームに行き、嗚咽をシャワーで誤魔化しながらなんとか自身を清め始めた。
(早く準備して出ないと……想が汚い手で触れられてしまう)
俺は急いで準備をすると、男たちの待つソファに向かう。
「お、お待たせしました……」
「っ可愛いね、こっちおいで?」
「いい匂い~それに頬もピンクで美味しそう」
(よかった……想はまだベッドルームで寝てるみたい)
「失礼します」
ソファに座ってる二人の間に座らされ、髪をスンスンと嗅がれる。
(気持ち悪い……でも従順にならないと)
「佐倉くんは肌白いね?」
「やだっ」
ツーと首筋を撫でられ、嫌悪感でゾクゾクする。
「感じちゃった? でも、今からもっと気持ちよくしてあげる」
「はい、これ飲んで」
そういって渡されたのは小さなグラスに入った液体だった。
(何これ? 絶対に怪しいよ……でも逆らって想に何かされたら……)
俺は勇気を出して、目の前に差し出された怪しげな液体を飲みこんだ。
「あー飲んじゃった」
「ふふふ、今から面白いことが起こるよ?」
「? え……?」
―― ドクッ ――
―― ドクドク ――
はぁ、はぁ、はぁ……なに、これ、身体が……熱い。
自分の鼓動がドクドクと鳴っているのを感じる……それに下半身が勝手に熱を持ち始めているみたいだ。
「いい感じに効いてきたね~?」
「即効性の媚薬だからね? ちょっと量多めだし、佐倉くんヤバイかも~」
「やっ♡ ……あっ……あつぃ、んっ」
「あ~可愛すぎだわ! トロトロの顔してるじゃん」
「やぁっ……」
なにこれ……
耳に息を吹きかけられただけで、ゾクゾクと背中を快感が突き抜ける。
(ヤバイ……思考が、途切れる)
「じゃあそろそろ、いただきますか!」
「賛成! ほら、佐倉くん楽しもっか?」
「んっ、やらぁ」
男達に近寄られ、自分の意思とは裏腹に甘い声が出てくる。
嫌なのに、気持ち悪いのに……俺の頭は快感を求めていた。
なんとか残っている理性を振り絞って必死に身を捩るけど、力が入らない俺を見て男達は絶望的な事を言う。
「ん? 抵抗するなら無理やり想くん起こそうかな」
「ごめんなさいっ、俺で! 俺を使って?」
「じゃあ逆らわないよね?」
「……はい」
「ああ~可愛いね~」
「んっ……」
「想くんの為だもんね?」
「ふふ、佐倉くん初めてでしょ?」
「……っ、ちがっ……やぁっ」
「健気だねぇ~大丈夫、佐倉くんも想くんも……もう何も考えられなくなるぐらい一緒に可愛がってあげるから」
「ははははは」
男達はそんな事を言いながら、俺にどんどん近付くと遠慮なく身体を触ってくる。
どれぐらい時間が経ったのだろう……
薬が効きすぎた俺の頭はもう何も考えられなくなっていた。
「よし、そろそろ挿れちゃおうかな?」
「やだっ」
「抵抗するの?」
「ご、ごめんなさい」
「ふふふいい子だね」
「っ」
(ああ、もうダメだ……助けて……多部ちゃん)