「……バカ」
樹のことを思う。
「………バカ」
まだ振り向いてくれない彼にもっともっとアプローチする方法を考える。あの人にもアプローチ方法はあってるといわれたのに、まだ振り向いてくれない彼。
「………バカ」
服を脱ぎ、鏡の前で自分の体を見る。
私の体が好みじゃない?
でも、あの人は大丈夫って言ってくれた。
「バカ……」
気づいてくれないアプローチを、後どれだけ続ければよいのだろうか。もし…もし、樹にほかの女の子が付いたら?
「バカ」
そんなこと、考えたくなかった。
私の樹が他の女の子に奪われることは想像したくなかった。
「バカ…」
「何をバカバカ言ってるんだ?」
「!?」
ドアの向こうから声がする。
樹の声を聴いた瞬間、胸が高鳴るのを感じる。
そうだ…大丈夫。
私たちには約束がある。
扉を開け私は樹に抱き着いた。
「おわ…って!なんで裸なんだよ!」
そんな樹の戸惑った声を聴きながら、私は樹の耳元でいった。
「バーカ」
心配させないでよとは、言えなかった。