目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

脇役でありながら主人公、隼の羽は止まらない

街は、日によっては誰にも会えない時だってあるし対話を望んでもその場の空気によって話す時間すら持てないことがある。

そんな難しい街の中で、年齢性別関係なく、1人1人と深く対話をするRPをし続けるのはかなり体力も神経も削られる。


それなのに。


堕夜だよという男の子は不器用ながらも対話を続けた。

小指の爪先ほどの小さなピースも見逃さないように、丁寧に言葉を拾い、選び、過去と今を両方見据えながら対話する姿は、その日街の中で一番喋ったのではないかと思う程色んな人と対話を繰り返していた。


彼の紡ぐ言葉は、魂そのものの優しさがあふれ出ているから皆が真剣に向き合って話してくれたのが、また、凄く良かった。

しかも、その人の立場や状況を加味しながら、態度、口調、姿勢を変えるのは相当な根気と把握力と、空気を動かすことが必要。

それを成し遂げていっていたのが本当に凄すぎました。

そんな中でも彼のさらに凄い所は、主人公のように動いているように見せかけて、相手が主人公だとばかりに言葉を引き出す脇役に徹していたことです。


それはまるで、昔悪役という脇役に徹しようと努力を重ねていたヴァンダーマーのように。


悪役でありながらも綺麗で。

真っ直ぐと相手を見つめる。

けれど決して目立とうとはせず相手を優先し。

影に溶け込むように静かな声で対話をする。

例え自分という存在が犠牲になろうとも。

それでいいと柔らかく微笑み、相手に感謝を忘れない。

貴重な時間が対価だと、笑って、静かにその場を後にする。


ヴァンさんとは違って存在感を消すような対話の仕方は、そうそうできるものじゃない。

だからこそ惹かれたし、涙が何度も出た。

なんて凄いストーリーを見せてくれるのかと。

堕夜だよの視点なのに、彼自身のストーリーだけじゃなく、あらゆる人のストーリーをたった1日で見せてくれるなんて人、いたかな?


とくに、最後にライアンさんと対話したのが、物凄く良かった。

MOZUとして対話する人として、一番難しいのが彼だ。

だからライアンさんも言葉を濁していたし、明確な言葉を紡ぐことはなかった。

けれど、そんなライアンさんから、堕夜君は言葉を引き出した。

一番しびれたのは、ライアンさんとの別れ際。

彼の状況も気持ちもわかっているから、敢えて「答えづらければ何も言わずに走り去ってください」と前置きをしたことが、堕夜という男の子の成長を感じさせた。


ライアンさんは過去に囚われるなと言っていたけど、過去があるからこそ今があり、未来を作り上げている。

むしろ過去の失敗や苦い思い出も全て飲み込んで、今の幸せをしっかり噛みしめ大事にしようとして、形に残そうと動く温かさと優しさを持つことが出来ている堕夜だよは、誰よりも愛情に溢れているように感じた。


本当にすごかった。

たくさんの人と対話をしているのに、どんな場面も、そのまま溶けて消えそうなほど存在感を消して、相手を際立たせる対話だったから。


レースのGBC権を堕夜君が手にしたことから始まったこの運命の歯車は、本当に運命力の強さを感じました。

一体、どれだけの人のストーリーを動かすことになるのだろう。

対話の中で、街の状況に関しても情報を手に入れた彼は、どんな飛び方を見せるのだろう。


あまりにも目が離せなさすぎました。

そして、何度も視界が滲みました。


凄すぎるなぁ、すごすぎるよ


恐ろしいRPを目にした気持ちでした。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?