動物であれ、植物であれ。とにかく、この
皆全員、多少の差異はあれど。ほぼほぼ、同一の魔力を有している。そしてその全てが、別の魔力に変化できるという性質を持ち合わせていた。
生まれ持った己の、万変の魔力を。まるで多種多様の絵具を塗り込ませた粘土を捏ね繰り回すようにして行使する。それがこの世界で言う魔法の正体。そういった原理と仕組みから成った、技術と手段。
が、それは汎用魔法に限らず、例えば
……しかし、どんなことであっても。
そもそも先程説明した通り、この
しかし、ごく稀に、未だ僅かではあるのだが────そうではない、そうとは限らない例外がいる。在る。その存在らの魔力は根底から根本的に、全く以て異なっている。それこそ唯一無二で、同じものは一つとしてない。
但し、それらに限ったことではあるが。それらの魔力は従来の魔力とは違い、
だが不変であるが故に、固有の魔力を持つその
そして良くも悪くも、固有魔法はその全てが余すことなく、個々の才能に左右される。早い話、その地形一帯を丸ごと変えてしまう程の超絶大的な破壊力を有した固有魔法もあれば、どう転がっても使い物にならないだろう固有魔法────所謂、外れというのもある。そしてそれは幾ら努力しようが、どれだけ修練に鍛錬を重ねようが、どうこうなりはしない。どうにもならない。どうしようもない。
とはいえ、魔物相手には効かず実力が違い過ぎる者にも通用しないが、逆にその条件に当て嵌まらない人間であれば昏睡させ、その上記憶までも奪い取れるものや。
これらの事実が指し示す通り、
「これでわかったでしょ、君がこうして乗ってていい理由」
「……ええ」
そこで、クラハとユアの会話は途切れた。二人の間に静寂が流れ、より一層馬車の車輪と地面が擦れ合う音、時折小石を轢く音。それに混じる、風に揺られた木々の騒めき────普段であれば気にも留めない様々な音が、やたら耳に届いてくるようになる。
そうして暫しの時間が過ぎて────不意に、またしてもユアがその口を開かせた。
「私こういう無言の時間、あまり好きじゃないんだよね」
「……」
「だから何か話そうよ。てか話すね」
「…………」
「えーっと確か三週間、いや四週間前だったかなあ。少なくとも一ヶ月はギリ経ってない。と、思う」
クラハからの了承を待たず、宣言通り話し始めるユア。そんな彼女を、しかし彼は止めようとはしない。彼にとっては、別に彼女が何か話そうが話さまいが、どうでもいいことなのだから。
「あの時もこうやって旅してたんだー。途中荒野で拾った、
故にクラハはユアの話を聞き流す────
「いやあ新聞で見た時は流石に驚いたよ。まさか本当にあの子が……あの女の子が、
────────ことが、許されなかった。