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第29話 本部内でのサバイバルバトル

 サヤカたち四人は、逃走ロワイアル本部前に辿り着いた。目の前にそびえる巨大なビルは、まるで要塞のように威圧的で、異様な気配が外壁から滲み出ている。最終決戦の舞台であることは、誰の目にも明らかだった。四人は息を呑み、真剣な眼差しでその光景を見つめる。


「ここが決戦の場……やるからには用心していくぞ!」

「サヤカの言う通りね。決戦の場である以上、後戻りはできない! 気合入れて引き締めないと!」


 サヤカは拳を握り、ガッツポーズで決意を固める。その声に力が宿り、仲間たちを鼓舞する。ヒカリも鋭く頷き、生き残るための闘志を燃やし始める。碧と舞香もまた、真剣な表情でサヤカの言葉に同意し、覚悟を共有した。

 四人は一斉に本部ビルへと足を踏み入れる。目指すは黒幕・グレゴリウス。その首を討つため、彼女たちは迷わず突き進む。


 ※


 ビル内部は、まるで別の世界だった。空気は重く、異様な静寂が漂う。何処からかハンティングマンが現れてもおかしくない緊迫感。床や壁には、いつ発動するとも知れない罠が潜んでいる。レーザーガンの冷たい光や、爆弾の無慈悲な爆風が、彼女たちを一瞬で葬り去る可能性があった。


「罠はレーザーガンと爆弾のみ。でも、レーザーガンはいつ飛び出てくるか分からないし、爆弾も何処かに隠されていますからね……」


 碧は鋭い視線で周囲をキョロキョロと見回す。特訓で磨かれた彼女の感知能力は、敵や罠の位置を完璧に捉えるまでに成長していた。手に握る盾と剣は、彼女の決意の象徴だ。サヤカたちは碧の言葉に頷き、納得の表情で状況を把握する。


「確かにそうですね。多くの罠が仕掛けられている以上、危険度は過去最高となっている。何れにしても覚悟は決めないといけません」


 舞香が冷静に言うが、声には微かな緊張が滲む。グレゴリウスは全てを予測し、幾重もの罠で彼女たちを待ち構えている。油断は死を意味する。


「となると……この状況をどう攻略するかだな……」


 サヤカは眉を寄せ、真剣な表情で思考を巡らせる。どうやってこの死の迷宮を突破し、グレゴリウスの元へ辿り着くか――その答えを探る瞬間、突然、壁に埋め込まれたモニターが点灯。ユキコの顔が映し出され、甲高い声が響く。


「お待たせしました! 只今より第二ミッションについて説明します! 第二ミッションはビル内での戦い。このミッションは生き残りを賭けたサバイバルバトルとなっていて、第二ミッションを突破するメンバーは僅か五名となっています!」


 ユキコの興奮した実況に、視聴者のコメントが画面を埋め尽くす。「厳しくなるとは……」「五名となると、残り十人は脱落か……」「結構厳しいな……」と、緊迫した予想が飛び交う。視聴者の多くは、サヤカ、ヒカリ、碧、舞香、そしてエリカの五人が生き残ると予測。一般人の生存は絶望的と見られている。


「ハンティングマンだけでなく、エリカのブラッドナイフもあり得るわね……ともかく今は生き残る事を優先にして、ハンティングマンを倒さないと!」


 ヒカリの鋭い声に、サヤカたちが頷く。その瞬間、暗闇からハンティングマンが姿を現した。サングラスに隠された目は冷酷に光り、獲物を逃さぬ獣の如く彼女たちに襲い掛かる。その動きは機械的で、一切の躊躇がない。


「ここは私に任せてください!」


 舞香が叫ぶと同時に、大鎌を空間から召喚。流れるような動きでハンティングマンに飛び掛かる。敵も即座に迎撃態勢へ。左手が鋭いアームブレードに変形し、舞香を確実に仕留めようと迫る。サングラスの奥で光る目は、冷徹な殺意に満ちていた。


「最初から一気に攻める!」


 舞香の大鎌がハンティングマンのアームブレードと激突。金属同士がぶつかり合い、火花が飛び散る。ハンティングマンは冷酷な笑みを浮かべ、舞香を鋭く睨むが、彼女は一歩も引かない。特訓で磨いた俊敏な動きで攻撃をかわし、敵の隙を見逃さない。


「見えた! スラッシュゼロ!」


 一瞬の油断――ハンティングマンが次の攻撃を繰り出す刹那、舞香の大鎌が閃く。光のオーラを纏った刃が、敵の胸を正確に切り裂く。ハンティングマンは衝撃に耐え切れず、地面に崩れ落ち、爆発と共に無数のネジと化す。爆煙が収まると、モニターのユキコが即座に叫ぶ。


「素晴らしい! 舞香選手、圧巻の撃破! 二体目のハンティングマンを一瞬で仕留めました! これぞサバイバルバトルの醍醐味!」


 視聴者のコメントが一気に加速。「舞香、めっちゃ強いじゃん!」「これぞ大鎌の舞! かっこよすぎ!」「この四人、絶対最後まで残るでしょ!」と、称賛の嵐。

 舞香は大鎌を肩に担ぎ、ガッツポーズで振り返る。サヤカ、ヒカリ、碧が駆け寄り、仲間たちの士気は最高潮に達する。


「やるじゃないか、舞香! ここまで成長するなんて見事だ!」


 サヤカが拳を握り、笑顔で力強く言う。ヒカリも頷きながら、周囲を警戒。まだハンティングマンが一体残っている。油断は許されない。


「油断は禁物よ。ハンティングマンはあと一人出てくるし、罠もそこら中に仕掛けられてるわ。次の動きも慎重にいかないと」


 ヒカリの言葉に全員が頷く中、碧が冷静に状況を分析。特訓で培った感知能力が、微かな気配を捉える。


「……待って。右の廊下、10メートル先にレーザーガンのトラップ反応。爆弾は今のところなし、だけどハンティングマンがもう一体近づいています」

「さすが碧、頼りになるぜ!」


 サヤカが碧の肩を叩き、四人は右の廊下を避けるルートを模索。舞香は大鎌を握り直し、次なる戦いに備える。


「次は私が先陣を切るわ。ハンティングマンが出てきたら、まとめて叩きましょう!」


 ヒカリの自信に満ちた言葉と共に、四人は再び動き出す。逃走ロワイアルを終わらせるため、ここで立ち止まるわけにはいかない。


 ※


 ビル内の別のエリア。エリカは薄暗い廊下を静かに歩く。ハンティングマンが倒されたことを知り、彼女の唇に冷酷な笑みが浮かぶ。両手を地面に押し当てると、血のオーラを纏ったブラッドナイフが次々と召喚される。その刃は、即死の威力を持つ殺戮の武器だ。


「狙いはサヤカ、ヒカリ、碧、舞香以外の逃走者のみ。さあ、行きなさい!」


 エリカの合図と共に、ブラッドナイフが疾走。血のオーラを纏い、まるで意志を持った獣のようにビル内を駆け巡る。暗い廊下や広間の隅で、逃走者たちの悲鳴が響き渡る。エリカは冷たく微笑み、その惨劇を静かに見守る。


 ※


 別のエリアでは、逃走者の一人、小倉剛おぐらたけしが息を切らして逃げ惑う。一般人の彼には戦闘訓練などなく、ただ生き残るために走り続けるのみ。背後から迫るブラッドナイフの気配に気付き、振り返った瞬間、恐怖で顔が歪む。


「う、うわっ! 何だこれ!?」


 ブラッドナイフは赤い光を放ち、ミサイルのように剛に迫る。彼は咄嗟に横に飛び、壁に身を隠そうとするが、刃は彼の動きを完璧に予測。鋭い一撃が剛の胸を貫き、彼は一瞬で絶命。血だまりが床に広がる。


「剛選手、残念ながら脱落! ブラッドナイフの速さ、恐るべし!」


 ユキコの実況と同時に、視聴者のコメントが加速。「うわ、速すぎだろ!」「剛、可哀想に……」「エリカ、容赦ねえな!」と驚きと恐怖の声が飛び交う。しかし、この地獄はまだ始まったばかり。真の恐怖はこれからやってくるのだ。

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