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第33話 エリカとの決戦

 サヤカたちは西棟の6Fに到着し、エリカが潜む部屋を捜索していた。千恵からの報告で、彼女が中央棟にいることが判明している。


「この辺りには罠はないけど、エリカとの戦いは油断禁物だからね」

「ええ。前から気になったけど……あなた、臭くない?」


 千恵の報告にヒカリは頷くが、彼女の体臭が気になり、思わず足を止める。サヤカたちも同様に動きを止め、強烈な臭いに顔をしかめた。


「風呂は一週間に一回だからね」

「だから臭いのね……ほら、身体を拭くから少し服を脱ぎましょう」


 碧は千恵の上着とTシャツを脱がせ、ブラだけの上半身を露出させる。濡らしたスポンジを手に、ゴシゴシと千恵の身体を拭き始めた。


「ひゃっ! くすぐったいよ〜」

「ほら、動かないの」


 千恵は笑いながら身をよじるが、碧は優しくたしなめながら汚れを拭き取る。ヒカリと舞香は、微笑ましい光景を温かく見守っていた。


「なんだか姉妹ですね」

「ええ。この展開もありかもね」


 舞香の言葉にヒカリが同意する中、サヤカは盛大にため息をつく。最終決戦を前に、こんなことをしている場合かと苛立ちを隠せない。


「まったく……ほら、さっさと行くぞ。あいつとの決着が待っているから……ん?」


 サヤカは千恵たちに注意しようと視線を向けるが、目の前の光景に驚愕の表情を浮かべる。

 なんと、千恵の胸は爆乳クラス。誰もが目を奪われるほどの迫力だ。サヤカは自分の胸に手を当て、軽く揉みながら比較してしまう。彼女の胸は標準サイズで、到底及ばない。


「むう……」


 サヤカは頬を膨らませ、思わず後ろを向く。ヒカリと舞香は苦笑いを浮かべるしかなかった。


「決戦前の一息なのにも関わらず、胸がデカいとは……これは羨ましいったらありゃしない……」


 ユキコのボソッとした実況に、視聴者コメントが大盛り上がり。「なんてデカいんだ!」「見れてよかった!」「神様ありがとう!」と感謝の嵐。テレビで流すには際どい内容だが、視聴者にとってはラッキー以外の何物でもない。


 ※


 千恵の身体拭きが終わり、サヤカたちは中央棟の部屋前に到着。エリカが潜む扉の先に、決戦の舞台が待っている。彼女の行動は予測不能。油断は許されない。


「じゃあ、開けるぞ」


 サヤカの合図で、扉がゆっくりと開く。そこにはエリカが待ち構え、両手にブラッドナイフを握り、冷酷な笑みを浮かべていた。


「ようやく来ましたね……ですが、この戦いがあなたたちの終着点となります。覚悟は宜しくて?」


 エリカはブラッドナイフを構え、戦闘態勢に。サヤカたちも一斉に陣形を整え、鋭い視線でエリカを睨みつける。


「覚悟するのはそっちの方だ。これ以上の悪行は終わらせる!」

「では、始めましょう! 最高の死の舞踏を!」


 エリカの号令と同時に戦闘が始まる。彼女は素早い動きでブラッドナイフを投擲。鋭い刃が空を切り、サヤカたちに襲いかかる。しかし、舞香が一歩前に出ると、大鎌を振り回し、ナイフを弾き飛ばした。金属がぶつかり合う甲高い音が部屋に響く。


「そう簡単にナイフは投げさせない! 千恵さん!」

「任せて! スキル封印!」


 舞香の合図で、千恵がデバイスを操作。複雑な術式が発動し、エリカのブラッドナイフが光を失い、封印される。彼女の術も無効化され、動きが一瞬止まる。


「ブラッドナイフを封じるとは……ですが、これだけではなくてよ?」


 エリカは余裕の笑みを崩さず、両手から眩い光の球体を生成。前回の逃走ロワイアルで子供たちとマーダークラウンを葬った大技だ。


「シャインジャッジキャノン!」


 光の球体が轟音とともに放たれ、サヤカたちに迫る。その破壊力は部屋全体を飲み込む勢いだ。しかし、ヒカリが前に飛び出し、両手を突き出す。


「カウンターバリア!」


 ヒカリの前に光のバリアが展開。光の球体が激突し、爆発的な衝撃波が部屋を揺らす。だが、バリアは耐え抜き、球体をエリカへと跳ね返す。光が彼女に直撃し、爆発が巻き起こる。


「キャッ!」


 エリカは悲鳴を上げ、爆風に吹き飛ばされ壁に激突。前のめりに倒れ込む。部屋に煙と埃が舞い、一瞬の静寂が訪れる。


「やったのかしら?」

「いや、まだだ。奴はここで終わるような相手じゃない。次の手を仕掛けてくる!」


 碧の問いに、サヤカが鋭く答える。すると、エリカが勢いよく立ち上がり、瞳を爛々と輝かせてサヤカたちを睨む。まだ戦意は衰えていない。


「やってくれますわね……ここから先は……死あるのみです!」


 エリカはムエタイの構えを取り、拳に赤いオーラを纏う。その姿はまるで獣のよう。空気が一変し、殺気が部屋を支配する。


「格闘技で勝負か……なら、ここから先は一対一だ!」


 サヤカも中国拳法の構えで応じ、鋭い眼光でエリカを捉える。ヒカリたちは後退し、戦いを見守ることに。


「一対一か……こうなると私たちは邪魔しない方が良いかも……」

「そうですね……巻き込まれたら殴り飛ばされますし」

「私もそうします……」

「私もそうするよ。けど……この戦いは一筋縄では行かない。あの姿こそ、エリカの本当の戦い方だと思う」

「「「えっ?」」」


 千恵の呟きにヒカリたちが疑問を抱いた瞬間、サヤカとエリカが同時に飛び出し、激しい戦闘が始まる。拳と蹴りが交錯し、衝撃波が部屋を揺らす。パンチが空気を切り裂き、キックが床を砕く。火花が散り、互角の攻防が繰り広げられる。


「そこですわ!」


 エリカが戦闘スタイルをシュートボクシングに切り替え、強烈なアッパーをサヤカの顎に叩き込む。衝撃は空気を震わせ、サヤカは天井へと吹き飛ぶ。


「サヤカ!」

「がは……!」


 サヤカは天井に激突し、床へと墜落。しかし、落下の瞬間、彼女は目を見開き、両足で着地。瞬時に中国拳法の構えを取り直す。その反応速度は人間離れしており、危機察知能力の高さが伺える。


「な!? 今のパンチは強烈だったのに……!」


 エリカは呆然とし、冷や汗を流す。常人なら気絶する一撃を耐え、なおかつ完璧に着地するサヤカの姿は、彼女の予想を遥かに超えていた。


「私はこんなところで倒れる理由にはいかないからな。エリカ、アンタの過去については気になる部分もあるが、本当の地獄はこれからだ。二度と悪さできない様にしてやる!」


 サヤカは鋭い眼光でエリカを睨みつけ、再び構えを取る。部屋に緊張が走り、両者の間に火花が散る。サヤカは一歩踏み出し、拳に力を込める。エリカもまた、赤いオーラをさらに強く燃え上がらせ、応戦の構えを見せる。

 ここからが本当の戦いだ。サヤカの拳が風を切り、エリカのキックが空気を裂く。二人の動きは目で追えないほど速く、部屋中に衝撃音と火花が響き合う。床がひび割れ、壁に亀裂が走る。互いに一歩も引かず、全力の攻防が続く。

 エリカの拳がサヤカの顔をかすめ、サヤカの蹴りがエリカの脇腹を捉える。両者の息遣いは荒々しく、汗と血が飛び散る。観戦するヒカリたちは息を呑み、戦いの行方を見守る。


「サヤカ、負けるな!」

「エリカをここで止めなきゃ……!」


 千恵の叫びが響く中、サヤカは一瞬の隙を見逃さず、エリカの懐に飛び込む。中国拳法の流れるような動きで、連続のパンチを叩き込む。エリカはガードを固めるが、サヤカの拳は止まらない。


「これで……終わりだ!」


 サヤカの拳がエリカの胸に直撃。衝撃波が部屋を揺らし、エリカは後方へと吹き飛ぶ。だが、彼女は倒れず、壁に手をついて踏みとどまる。


「まだ……終わらない……!」


 エリカの目が再び光り、戦いはさらに激化する。この戦いの結末は、どちらかが倒れるまで終わらない――。

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