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第35話 黒幕との戦い

 サヤカはエリカとの激闘を制し、ヒカリ、碧、舞香、千恵の四人と共に黒幕のいる最上階へ向かうことに。エリカに関してはユキコが彼女を引き取り、安全な場所へと避難し終えている。


「いよいよここからが本番。最上階にはグレゴリウスがいるが、奴は何をしてくるのか分からない。戦う覚悟はできているか?」


 サヤカは鋭い眼差しでヒカリたちを見据え、真剣な声で問いかける。

 グレゴリウスはこれまでの敵とは一線を画す強敵だ。一瞬の油断が命取りになる、圧倒的な存在感を持つ相手。死の危険がすぐそこにあることを、誰もが理解していた。


「大丈夫。ここまで来た以上、私は既に覚悟を決めているから。やるからにはグレゴリウスを倒しましょう!」


 ヒカリは拳を握り、力強いガッツポーズで決意を示す。サヤカと出会わなければ、今の自分はここにいなかった。その事実が、彼女の心に燃えるような闘志を灯していた。


「私も覚悟はできている。参戦した以上、絶対にこのゲームを終わらせるわ!」

「私もサヤカたちと出会わなければ、今の私はここにいない。だからこそ、黒幕を倒しに向かう!」

「グレゴリウスを放っておくと大変な事になるからね。ここから先は一致団結あるのみ!」


 碧、舞香、千恵もそれぞれの決意を口にし、その声には揺るぎない意志が宿っていた。ここまで来た以上、黒幕を倒し、この悪夢のようなゲームを終わらせるしかない。


「よし! すぐに最上階へ向かうぞ!」


 サヤカの号令一下、彼女たちは一陣の風のようにその場を駆け抜ける。目指すはグレゴリウスのいる最上階。心に宿る決意を胸に、彼女たちは突き進む。


 ※


 サヤカ、ヒカリ、碧、舞香、千恵の五人は、ついにグレゴリウスの待つ最上階へと辿り着いた。そこは広大な屋外闘技場。荒々しい岩肌の壁に囲まれ、中心には円形の戦場が広がっている。空は暗雲に覆われ、雷鳴が遠くで轟く不気味な雰囲気が漂っていた。


「ここが決戦の場……」

「グレゴリウスは何処にいるのか気になるわね……」


 サヤカたちは鋭い視線で周囲を警戒しながら、敵の気配を探る。すると、突如として轟音と共に空が裂け、グレゴリウスが雷光を纏って降臨した。黒いコートが風に靡き、背中から放たれる漆黒のオーラは闘技場全体を圧倒する。彼の存在感は、まるで嵐そのものだった。


「生き残ったのは貴様らか。よくも私のゲームを次々と台無しにしてくれたな。ハンティングマンまで倒すとは異常過ぎるぞ」

「当たり前だ! こんな殺し合いのゲームは終わらせようと思っているし、アンタが黒幕である以上は倒すのみだ!」


 サヤカはグレゴリウスを指差し、鋭い言葉でその野望を断罪する。多くの命を奪い、逃走者たちの人生を弄んだ男を許すわけにはいかない。この戦いで、必ずやグレゴリウスの野望を打ち砕く。


「多くの皆を殺した罪は許さない……私たちはあなたの野望を終わらせる!」


 ヒカリの宣言が響き渡ると同時に、彼女たちは一斉に武器を構え、戦闘態勢に突入する。千恵は素早く後方へ移動し、援護の準備を整えた。


「なら、私も本気を出すとしよう!」


 グレゴリウスは黒いコートを勢いよく脱ぎ捨て、真の姿を現す。上半身は筋骨隆々の肉体に覆われ、ローマ時代の腰布を纏い、頭には鉢巻き、足元はサンダル、そして両拳には重厚なガントレットが装着されている。古代の拳闘士を思わせる姿だが、その眼光と全身から溢れる殺気は、見た目以上の危険性を物語っていた。


「これがアンタの姿か。だったら……本気で行かせてもらうからな!」

「良いだろう。では、行くぞ!」


 グレゴリウスがガントレットを打ち鳴らすと、地面が激しく揺れ、闘技場全体に衝撃波が走る。彼のオーラはさらに膨れ上がり、空気そのものが重く圧迫する。サヤカたちは一瞬気圧されながらも、互いに視線を交わし、すぐに戦闘態勢を立て直す。


「ヒカリ、舞香、フォーメーションAだ! 千恵、碧は援護を頼む!」

「「「了解!」」」


 サヤカの指示に即座に応じ、ヒカリは軽快なステップで前方に飛び出し、グレゴリウスの注意を引きつける。舞香は巨大な大鎌を振り回し、敵の動きを封じる隙を伺う。碧は一気に高台へ駆け上がり、ロケットランチャーを構えて攻撃のタイミングを計る。千恵は戦術デバイスを操作し、グレゴリウスの動きや弱点をリアルタイムで解析し始めた。


「舐めるなよ、小娘ども!」


 グレゴリウスが地を蹴り、爆発的な加速でヒカリに突進する。その速度はまるで雷鳴が形を成したかのよう。ヒカリは鋭い反射神経で攻撃をかわし、渾身の力を込めたパンチをグレゴリウスの顔面に叩き込む。だが、彼は不敵な笑みを浮かべ、ヒカリの鳩尾に雷のような拳を打ち込んだ。


「うぐっ……!」

「隙あり!」


 ヒカリが痛みに膝を折った瞬間、舞香が背後から大鎌を振り下ろし、グレゴリウスの背中に深々と斬りつける。囮となったヒカリの隙を、舞香が見事に捉えたのだ。


「ぐおおっ!」


 グレゴリウスが一瞬怯んだその刹那、ヒカリは痛みを堪え、跳び上がって強烈なアッパーカットを放つ。それはまさに閃光の如く、光速の一撃である。


「スカイアッパー!」


 轟音と共に拳が炸裂し、グレゴリウスの巨体が宙を舞う。そこへサヤカが飛び込み、両手の鉤爪を光らせ、嵐のような連続攻撃を繰り出した。


「キャットクロー!」  


 鋭い爪がグレゴリウスの顔面を切り裂き、鮮血が闘技場に飛び散る。だが、彼は傷を負いながらも動じず、獣のような咆哮を上げて戦闘態勢を整える。この程度では倒せない――その事実は、サヤカたちに重くのしかかる。


「やってくれたな……ふん!」


 グレゴリウスが両手を掲げると、突如として空が暗くなり、魔術の力が闘技場を包み込む。次の瞬間、巨大な岩が空から降り注ぎ、サヤカたちを無差別に襲う。  


「躱せ!」  


 サヤカの叫びと共に、ヒカリと舞香は驚異的な身のこなしで岩の雨を回避。岩は闘技場の地面に激突し、光の粒となって消滅していく。魔術で召喚された物質は、現実世界に定着せず塵と化すのだ。  

 その光景はドローンカメラによって中継され、スピーカーからユキコの興奮した声が響き渡る。


『現在、最終決戦が行われています! チームサヤカとグレゴリウスの一戦は、現在互角の展開。果たしてその行方はどうなるのか!?』  


 視聴者からのコメントが殺到し、「絶対に負けるな!」「グレゴリウスを倒せ!」とサヤカたちへのエールが闘技場に響き合う。彼女たちを信じる視聴者の声が、戦場にさらなる熱気を加えていた。


(手強い……だが、皆の希望を無駄にするわけにはいかない!)  


 サヤカは心の中で強く誓い、グレゴリウスを睨みつける。風が強さを増し、闘技場に新たな嵐が吹き荒れる中、戦いはまだ始まったばかりだった。

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