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第51話 Dカードを発行してもらってお昼に行く

「お姉さん、Dカードのパンフレットとかありますか?」

「あ、タカシさんいらっしゃいませ、Dカードが欲しいなら発行しますよ」


 え?


「しょ、書類とか、判子とかは」

「Dスマホに紐付けされた口座を使いますのでDチューバーならば即時発行可能です」


 か、簡単だなあ。

 俺はDスマホをお姉さんに預けた。


「はい、出来ました、鏡子さん、みのりさん、泥舟さんもいかがですか?」

「発行してくれ、預金通帳とか無くて困ってるんだ」

「ええ、キャッシュカード機能もありますし、クレジットカードとしてもVISAと提携してるので使えますよ。あとDIMAZONのお買い物にも使えます」

「お、おお」


 三人ともDカードを作ってもらった。

 ハロウィンっぽいデザインで厨二ぽい絵が描いてある。

 鏡子ねえさんはDスマホも買った、最新機種だ。

 さっそくDカードで払っていた。


「わあ、簡単だー」

「DIMAZONの決済もできるのかあ」

「DIMAZONの注文も迷宮の中でしたら即時配達可能です、食料品の発注とか便利に使っているパーティがありますよ」


 DIMAZONとはダンジョン運営がやっている通販サイトだ。

 けっこう色んな物を売っている。

 しかし、ここは、なんという便利な迷宮なのか。


「配達は誰がしてくれるの?」

「迷宮内では宅配っぽい制服を着たガーゴイルが配達します。敵と間違えて攻撃しないでくださいね」

「便利だなあ。このカードの事を知っていれば狂子の頃もあんなに不便しなくてすんだのに」


 たぶん、狂子さんモードだとカードとか使えないと思うよ。

 Dスマホも持って無かったしね。


 ロビーのインフォメーションカウンターに行った。


「いらっしゃいませ、どんな御用でしょうか……、って、タカシさんっ! ほわーっ、い、いらっしゃいませー」


 カウンターに居た山羊角の女悪魔さんは僕を見て赤面した。

 な、なんでよ。


「おー、タカシリーダーもてもてですねえ」

「そんなんじゃ無いだろう。あのパーティ名を変えたいですけど、ここで大丈夫ですか」

「え、ええ、承ります。ええとタカシさんは、今、『八丁堤C』所属となってますね。現メンバーはタカシさん一人です」

「なんかぞんざいなパーティ名だな」

「クランの占有用パーティだったからね」

「そ、そうなんだ」

「新しいパーティを作りますか」

「はい、名前は『Dリンクス』で」

「わあ、良い名前ですねえ、メンバーは、みのりさん、泥舟さん、鏡子さんでよろしいですか」

「はい、お願いします」


 女悪魔さんはカタカタターンとキーボードを叩いた。


「はい、登録完了です、『Dリンクス』が地の底まで到達できますよう、お祈りしております」

「ありがとうございます」


 よし、色々済んだな。


「タカシ、私はお腹がすいた」


 そういえばお昼がまだだったな。

 一度外に出てマックにでも行くかな。


 と、思った時に、どどどと後醍醐先輩が走ってきた。


「鏡子さんっ、結婚してくれっ!!」


 鏡子ねえさんの見えないパンチが炸裂し、鼻血を吹き出しながら後醍醐先輩はふっとんで転がった。


「くっ、こいつが鏡子さんのパンチ、す、すげえぜっ」

「なんだ、おまえ?」

「うちの学校の先輩、後醍醐さんだよ」

「そうか、結婚は嫌だ」

「きょ、鏡子さんっ、俺はあんたに惚れたっ!! 俺を舎弟にしてくれーっ!」


 後醍醐先輩はロビーの床にリーゼントをぶつけながら土下座を敢行した。


「え、やだ、おまえ気持ち悪い」

「しゅ、瞬殺……、くうううっ」


 後醍醐先輩は漢泣きに泣いた。

 その背中をチヨリ先輩が踏んだ。


「ほほほほ、鏡子さん、あなたもアイドルにならないこと? アクションスターになって映画に出ましょうよ~」

「……、興味無い」

「もう、タカシパーティはどいつもこいつもっ」

「あ、先輩、パーティ名決まりました『Dリンクス』です」

「なんか小洒落た名前ねえ『タカシとオカンとゆかいな仲間達』とかにするかと思ったわ」


 そんな名前のパーティはいやだ。


「リンクス、山猫か、いいぜっ、鏡子さんにぴったりだっ、というか、チヨリいつまで足で踏んでんだっ、ぶっ殺すぞ」

「ああ、ごめんなさい、うっかり」


 後醍醐先輩は立ち上がった。

 うっとりした目で鏡子ねえさんを見ている。

 いらっとした鏡子ねえさんが目突きをして、後醍醐先輩はぎゃあと叫んだ。


「目がー、目がーっ」

「バルスバルス」

「物理でバルスかよ」

「『さあ目を開けて傷を癒やそうよ~~♪』」

「あ、治った、みのりんよありがとう、恩に着るぜ」

「どういたしまして、後醍醐先輩」 


 いつまでもロビーでコントをしている場合では無いな。


「後醍醐先輩、チヨリ先輩、俺たちこれからお昼なんですが、まだなら一緒に行きませんか」

「えー、こいつといくのか?」

「そうか、どこに行くんだっ? タカシ」

「マックでも行こうかと」

「バーキンに行こうぜバーキン、ワッパーキングだ」


 バーキンとはバーガーキングの略でアメリカっぽいハンバーガー屋さんだ。

 川崎には三店舗あって、複合商業施設にも入ってるな。


「バーキン、でっかいのか?」

「でっかいのありますよっ、鏡子姐さんっ! 俺がおごりやすっ!」

「でっかい、ハンバーガーか……」


 なんか、鏡子ねえさんがめっちゃバーキンに惹かれている。



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