キャシーがお土産物が欲しいというので、竜安寺の近くのベタベタなお土産物屋さんに入った。
「おー、風格もなんにもない、下世話なお土産物屋さん」
泥舟が呆れたように言った。
お店には日の丸のTシャツとか、京都とプリントされている手ぬぐい、忍者服、新撰組の法被などが並んでいる。
下世話な感じだけど、嫌いでは無いな。
『おー、キュート、素敵だわっ』
『がま口とか、扇子とかどう、受けるわよっ』
『わあ、みのりセンス良い!』
いや、良く無いと思うのだが、一周回ってアメリカさん的には有りなのか。
『お菓子はあとで良いお店に行くから駄目よ』
『『はーい』』
俺もナギサさんにお菓子を買うかな。
美春さんが紹介してくれたお店の物が無難だろうな。
おまんじゅうなんかも割と高い。
「タカシ、木刀を買わないの」
「いやあ、高いし」
「お金の事は、もう気にしなくて良いんだ、タカシは稼いでいるんだから、欲しければ買うんだ」
「木刀はなあ【大剣】スキルだしなあ」
「そうなんだ」
「両手で持つ剣はなんでも【大剣】スキルらしい」
「【片手剣】は、ナイフから小太刀ぐらいまでか」
「そうなるな」
短い木刀なら【片手剣】スキルが乗るから良いが、まあ、ここで買わなくてもな。
店の中に入って色々と見て回る。
奧の方には工芸品とか、置物とかが売っているな。
焼き物のお地蔵さんとか、招き猫とかが置いてある。
伝統的な物、可愛くディフォルメした物とか色々だ。
「タカシくんっ、この招き猫をお部屋に飾ろうよっ」
「置き場が無い」
「ぐぬぬ」
最近はテレビも薄型になって上に物を置けないから、こういう物を買っても置き場がないんだよな。
王将のコマとか置いてもなあ。
「タカシの部屋はこざっぱりしているからね」
「みのりが芸能界デビューしてポスターが出たら張るよ」
「ほんとっ! 約束だよっ!」
なんだか思っていた以上にみのりが喜んだ。
なんでだ。
キャシーはなんだか逆上したように買っているなあ。
止めなくて良いのだろうか。
置物コーナーの壁に亀の飾り物があった。
なんか気になるな。
あの大きさ……。
「手盾か?」
「ん? あ、そうかな?」
陰陽道の亀の手盾を拾って、首を付けたり四肢を付けたり、腰に沢山の髭を生やしたりして亀の壁飾りにしたものだろうか。
開運招福とか甲羅に書かれているな。
触って見る。
ああ、金属っぽいな、その上に塗料を塗っているのか。
ひっくり返してみる。
ああ、手盾だ、持ち手が付いてる。
目立った破損も無いな。
お幾らなんだ?
……一万円だな。
飾り物としては高いが、手盾として考えると破格のお値段だ。
「買うの? タカシくん」
「ああ、まあ、そうだな」
俺は亀の飾り物を取った。
「『巡行』だったりして」
「陰陽武器はそれがあるから嫌だよな」
たぶん、数打ちの手盾がどこかに落ちていたのを拾って加工した物なんだろうな。
あとで東郷先生に見せてみよう。
いつ頃の物か解るかも知れない。
籠に山積みされたキャシーの後にレジに並んだ。
「あら、これ……」
おばさんが亀の飾り物を見て眉をひそめた。
「売り物じゃないんですか?」
「いえ、これは、このお店が出来た時からあるのよ、売れる物なのねえ、古いから五千円で良いわよ」
更に破格になったな。
俺は五千円を出して亀の飾り物を買った。
そうか、この手のお土産物屋は陰陽師の人は来なさそうだしな。
俺たちもキャシーがいなければ入らなかったな。
縁というのは異な物だ。
『バックラー?』
『そうみたいだ』
『掘り出し物?』
『それは解らない』
後ろ頭がチリチリした。
【危険察知】だ。
「タカシーっ!!」
遠くの垣根の上から半グレの『
三本。
腕が良い『
カキンカキンカキーン!
俺は知らない間に亀の飾り物を握りこんで跳ね返していた。
「うそだろっ、俺の【狙撃】がっ」
「【オカン乱入】」
『
「あ、あ、ちがうんです、俺はっ、そのっ」
「問答無用やっ!!」
半グレ『
「タカシ、危なかったな」
「ありがとう、かーちゃん」
かーちゃんは気絶した半グレの襟を掴んで引きずってきた。
遠くで半グレ仲間が全速力で逃げているのが見えた。
『タカシ、あんたそれ……』
「表権能ついてるね、これ」
「そうだな、たぶん[自動防御]」
「ええの手に入れたなあ、どうしたん?」
「そこで売ってた」
「えー、そんな事あるん?」
「凄いわっ、さすがタカシくんねっ!! 運が良いわっ!」
……たぶん、みのりの【豪運】のせい、だと思うけどなあ。
「丁度良いわ、一度お家に戻って東郷先生に見せましょうよ」
『わ、私も行っていい?』
『いいわよ、キャシー、おいでなさいな』
『ありがとう、ミハルっ!』
しかし、うっかりかーちゃんを呼んでしまった。
今日はあと一回しか呼べないぞ。
当のかーちゃんは女性陣と楽しそうにおしゃべりしているな。
「『巡行』じゃないか?」
「そうなのかな?」
とりあえず、専門家に見せよう。