晩ご飯を食べに行こうとなったがキャシーは断ってきた。
『ごめんね、パーティのみんなと食事に行く約束なのよ』
『それではしょうが無いね、キャシー』
『今日は楽しかったわ、タカシ、みのり、デイシュー、ミハル、また遊びましょうね』
『また遊ぼうね、キャシーちゃん』
『しばらく日本に居るの?』
『なんか
『じゃあ、今度川崎においでよ、案内するよ』
『いいわね、楽しそうだわ。では、バーイ』
キャシーはヘルメットをかぶり、バイクのエンジンを吹かして乃木邸を出て言った。
「Dチューバーにはいろんな子がいるのだなあ」
「敵だ~~」
鏡子ねえさんは判断が二元論すぎて困るな。
乃木先生は俺たちを高級焼肉店につれて行ってくれた。
鏡子ねえさん大喜びであった。
「美味い美味い、肉が溶ける」
「鏡子くんはよく食べるねえ」
「本当に孫のようだわい」
東郷先生が鏡子ねえさんを見る目が孫を見る目になってるな。
しかし、高級なだけあって、どの肉も美味しいな。
「タカシくん、もう一度『浦波』を見せてくれるかね」
「良いですよ」
東郷さんに収納袋から『浦波』を出して渡した。
「素晴らしいなあ、ワシはまだオヤジに足下も及ばない」
「まあ、先代の愛が籠もっているからな、諦めろ」
「短矛の方はどこにあるんですか?」
「白虎の家の倉だな、戦闘中に折れてしまって、表権能も無くなっておるぞ」
「白虎くんはカマドさんの血筋を?」
「そうじゃな、宗家の次男坊と夫婦になって一男一女を産んで、白虎と麒麟が孫にあたるぞ」
陰陽師の家も結構複雑な感じだな。
「短矛なら泥舟も使えたかもしれないのに」
「いや、
「違う武器種なんだ」
東郷先生が両手で押し包むように『浦波』を返してきた。
やっぱり凄い物なんだなあ。
大事に使わせてもらいます。
焼肉を食べおわったので、乃木先生の車でホテルまで送ってもらった。
今日は『ホワッツマイケル』の襲撃は無かったな。
キャシーと知り合ったけど。
「はー、食べた食べた、焼肉はいいな」
「美味しかったね、鏡子おねえちゃん」
「毎日焼肉でもかわまないぞ」
健康的に毎日焼肉は色々と駄目だろう。
「それでは、装甲脚絆が出来たら連絡するよ」
「凄いのを作ってやるから楽しみにしておれよ鏡子」
「楽しみにしてるよ、東郷じいちゃんっ」
「色々お世話になりました」
「こちらこそ、色々な事を教えてもらった、こんど東郷と二人で難波迷宮へ行って見ようと思う」
「そうじゃな、『生産者』になるんじゃ」
それは凄い事になりそうだね。
美春さんを見ると、口に人差し指を当てているから、『素材研』の事はまだ秘密なんだな。
親子で協力して、新素材を使って、新しい退魔弓とか作れば良いのに。
「みんな、また来てね、鏡子さん、次回は京都観光しましょうね」
「おうっ、観光したおすっ!! 奈良の鹿も倒す!!」
倒したら駄目だと思うが。
陰陽鍛冶さんたちと別れて、俺たちはホテルに入った。
鏡子ねえさんがうーんと伸びをした。
「今日は採寸されて疲れた、みのり温泉いこー」
「いこういこう、ここの温泉大好きっ」
みんなでエレーベーターに乗って五階で降りる。
俺たちも男部屋に入って、ほっと一息。
「キャシーは台風みたいな子だったね」
「自分が、意外に英語をしゃべれるのがびっくりした」
「なんか、
「ああ、そうなのか」
それはありそうな話だ。
とりあえず、冒険配信者をやっていて得をしたなあ。
泥舟の入れてくれたお茶でおまんじゅうを食べる。
ああ、ほっとする味だな。
「明日は『ホワッツマイケル』が来そうだな」
「難波に来るね」
「八人に囲まれたら大変だから、さっさと迷宮の中に入るか?」
「キャシーも来るのかなあ」
「ジョン爺さんは強敵だな、『浦波』の[自動防御]でM2の魔法弾を受けられるかな」
「せっかくの『浦波』が削れてしまうよ」
それは困るな。
「人数がこちらは四人、向こうは八人、キャシーも、パティさんも、マイケルもいる。勝ち目が無いなあ」
「あとは『
「勝ち目がねえ」
「鏡子さんが暴れこめば……。二対一で倒されるよねえ」
「みのりの【スロウバラード】もマリア・カマチョに対抗されそうだな」
「マリア・カマチョさんは動画の歌PVを見るもので、戦うもんじゃあないねえ」
「ミリオンセラーの歌姫だしなあ」
捕まる前にダンジョンに入る。
四対六なら、まあ……。
「四対六でも無理だな」
「無理だね、困ったね」
困ったなあ、川崎にとっとと帰りたくなってきたぞ。