コボルトからは、魔石、コボルトハンバーガー、銀塊、銀色のバックラー、【ヒール】の経典が出た。
『銀塊は美味しいな、しかし良く出るな』
『4/5でアイテムドロップしている、さすがみのりんだ』
『かぶり経典が惜しいな、藍田ちゃんが持って無い奴が良かった』
『まだ十二階だからのう、
「銀のバックラーを貰うよ」
「ああ、いいよ、チアキちゃんのか?」
「そうだ」
俺はチアキに銀のバックラーを渡し、元の俺のお下がりバックラーを引き取った。
少しだけ防御力が高いようだ。
「あ、ありがとう……」
「盾も練習しておくと良い、生き残りの可能性が高くなる」
「わかったっ」
チアキは銀のバックラーを装備して力強くうなずいた。
俺としては怖いから[自動防御]の権能がある『浦波』を持たせたいのだが、俺が倒れるよりチアキが倒れた方がパーティの損害は少なくて済むという鏡子ねえさんの冷たい理論もうなずけるから困ったものなんだな。
というか、みのりの分も欲しいし、『浦波』が三枚欲しいな。
さて、狩りを再開だ。
ヒュージスパイダー三匹。オーク四、ハイオーク一。オーガー二匹などを倒しながら十三階への下り階段へ到達した。
ドロップ品は魔石、蜘蛛煎餅、オークハム、高級豚肉ブロック、オーガーの角、鬼ころし(酒パック)であった。
ねえさんが鬼ころしにストローを入れて飲もうとしてたのでひったくって収納した。
「酒酔い探検は駄目」
「ぐぬぬう」
蜘蛛煎餅をバリバリ食べながら呻かないで欲しいね。
ちなみに蜘蛛煎餅は蜘蛛っぽい形の煎餅だ。
蜘蛛は入って無い。
さて、下り階段を降りる。
今回の潜降は十六階のセンチネルセンチピードの間が目的地だからなるべく寄り道をしない直降となる。
十三階だ。
「ここから『Dリンクス』は初見階だね、慎重に行こう」
「そうだな、では先頭を頼むよ東海林」
「解った、途中罠があるから、チアキちゃん頼めるかな」
「わかりましたーっ」
「あーしは観察して技を盗むっすよー、チアキ師匠っ」
「うん、解りやすく解除してみるよ」
樹里さんが先頭となり、二パーティーレイドは進んで行く。
風景はこれまでとそんなに変わらない。
岩肌の洞窟でグネグネと蛇行して枝分かれしていく。
あちこちに落とし穴があるんだが、先行のパーティが旗を立てたりビニールテープを付けたりと目印を付けてくれている。
だが、みのりが危なっかしいので目は離さない。
「おおっと」
案の定、落とし穴の近くで倒れそうになったので抱き留めた。
「あ、ありがとう、タカシくん」
「ああ、気を付けろ」
「敏捷度のパラメーターを上げないとなあ」
「生粋のバードだから、ほとんどが魅力と器用度に行ってるんだよね」
「す、すいません」
「まあ、それで呪歌の通りは凄いから差し引きゼロだから気にすんな」
「うんっ!」
道中、グレートドッグ×3、マミー×2、ハイオーク×2、ドラゴンフライ×3が出て来た。
どれも『オーバーザレインボー』が危なげなく倒しているね。
高田君の初手投げ斧で一体を潰せるのが大きい。
ドラゴンフライというのはでかい蜻蛉なのだが、火を吐く。
チアキが一匹、魔銃で撃ち落とした。
途中、路上に罠があった。
床を踏むと壁から矢が出るタイプだ。
チアキが端の床を七つ道具で剥がして、機構を針金で縛って殺した。
トントンと足踏みして安全を確かめる。
「おお~~、凄いっす、チアキ師匠」
「ありがとうっ」
チアキはなんだか誇らしげだ。
『おお、十三階も楽勝だな』
『やっぱり、なにげに『オーバーザレインボー』も腕があがってるな』
『キスミーも頼りになるようになったな、偉いぞ』
「うるせえ、俺は元々強ええっ」
霧積、リスナーと喧嘩をするのはやめるんだ。
ドロップ品は魔石と、グレートドッグホットドッグ、マミー(飲料1リットルパック)、高級豚肉ブロック、トンボ鉛筆(箱入り一ダース)、あと犬から【元気の歌】の
「むぐむぐ、ブロック肉はどうすんだ、売る?」
「「「売るなんてとんでもない」」」
グレートドッグホットドッグを囓る鏡子ねえさんが女子たちから総突っ込みを受けた。
「持って帰ってトンカツを作ってもらうのですわ~」
「あーしはトンテキにしてもらおうっと」
『まあまあ、みのり持って帰ってきてね、トンカツにしましょう』
「ママっ、また見てるのねっ」
『ほほほ、もちろんよ、タカシ君、チアキちゃんもどうかしら』
トンカツはちょっと心引かれるな。
「じゃあ、『Dリンクス』は峰屋邸で打ち上げにするかー」
『鏡子ちゃん、ごはん沢山炊いときますからね』
「わーいっ」
「トンカツ」
「トンカツ」
俺とチアキが声を揃えてしまった。
『家庭の連絡じゃのう』
『まあ、こういうのも高校生パーティの醍醐味だよね』
十四階の階段を下りて、小休止だ。
みんなしゃがみ込んだり岩に座ったりして行動食を食べたり、水を飲んだりした。
「マミー貰っていいかお?」
「あいよ、高田くん」
「ありがと、タカシくん」
「あ、私も飲みたいっ」
「あーしもあーしもっ」
「はいはい、チアキちゃんは?」
「も、もらう……」
チアキは高田くんを警戒しながら水筒のコップにマミーを注いでもらって、美味そうに飲んだ。
「ああっ、みんなに注いだら、僕の分がないおっ」
「あはは、あーしのをちょっと分けるっす」
「わたしのも」
「はいはい」
高田君は女子達から少しずつ水筒コップにマミーを分けて貰ってご満悦であった。
なかなか良い感じだな。