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第156話 謎かけ扉を抜けて十六階へ

 『天蓋の中心にて長く尾を引く者の真の名を答えよ』


 大きく重厚な扉にこのような銘板が掛かっていて、ひらがなを打ち込む機器が付いていた。


「ひらがな?」

「アメリカだとアルファベット、別の国だとその国の文字のキーボードらしい」

「答えは、ええと『すいせい』?」

「ブブー、『ほっきょくせい』」

「なんでっ!?」

「しらん」


 俺たちはリドルの大扉の前で一休みしている。

 ここは安全地帯だ。


『なんで『ほっきょくせい』なんだろう』

『おおぐま座の尻尾から引っ張るからか?』

『このリドルは三千年ほど前の地球は北半球の北極星pole starのりゅう座のトゥバンを表しておる、黄金の林檎を守っておった龍じゃな。トゥバンはりゅう座の尻尾にあるんじゃ』

『そんなの解るかーっ!!』

『リドルとはそういうものよ』


 コメントチェッカーに余さんの解説が入った。

 さすが博識だなあ。

 なるほど、地軸は傾いているから時期によって北極星はずれるんだな。


 というか、逆になんで解けたかな、多分、天蓋の中心で当てずっぽうで入れたな。

 この迷宮が出来た頃、三千年前のリドル。

 たぶん、異世界でも該当する極地星の名を当てる天文クイズなんだろう。

 そのまま翻訳して来たのかな。


 泥舟がポンポンポンとボタンを押して『ほっきょくせい』と入力すると、ガタンと音がして大きな扉が開き始めた。


「なぞなぞで一週間停滞かあ、ダンジョンは厳しいなあ」

「まあ、ここは間違えても罰則無いから。五十二階のリドルドアだと間違えると魔物が湧くから、開くまで三十人ぐらい死んだらしいよ」


 悪辣な仕掛けだなあ。


 俺たちは扉をくぐり、通路を進んだ。


「オークっす、オーク二、オークリーダー一、ハイオーク一」


 とりあえず初手、高田君の投げ斧。

 オークリーダーが盾で受けて跳ね返した、魔法の斧はキリキリ回って高田君の手に戻る。

 東海林の火炎弾、霧積の突撃で、オーク、ハイオークを倒したが、オークリーダーが倒れない。

 なにげに強い個体だな。

 ネームドかもしれない。


 高田君が片手剣に切られた、すかさず藍田さんが【回復】をかける。


「ありがとうだおっ」

「がんばってっ」


 ドキューン!


 チアキの銃撃が足に入った。

 オークリーダーの動きが鈍る。

 霧積が振り回すように大剣をないでオークリーダーの胸板を切り裂いた。


 オークリーダーはニヤリと笑って倒れた。

 高田くんが手斧でとどめを刺した。


「はあはあ、強敵だったお」

「格としてはハイオークの方が上なのになあ、強い個体か」


 東海林がスマホをいじくっていた。


「ああ、これ片牙だ、ネームドのオークリーダー」

「そりゃあすごいっすっ」


 迷宮の魔物にはちょっと有名な奴がいて、そういう奴はネームドと言って少し強いんだ。

 ドロップ品も良い物を期待できる。


 『オーバーザレインボー』は肩で息をしていた。

 やっぱり強敵と戦うと消耗が早いな。


「【プロテクト】を掛けるべきだったかなあ」

「そうだね、敵が強そうだったら追加で掛けてもいいだろう」

「ごめんね高田くん」

「初見だからしょうがないおっ、ドンマイだおっ」


 こっちのパーティではチアキが当てただけだな。


「よくやったチアキ」

「だんだん魔銃慣れて来たっ」

「くそー、ネームドかあ、帰りに出るかなあ」

「もう、ねえさんは、そんな早く再ポップはしないよ」


 オークたちが粒子になって消えて行く。

 みんな藍田さんに倣ってぱたぱたと手を動かした。


 気になるドロップ品は……。

 魔石、オークハム、赤いオーク帽、豚の貯金箱(五百円硬貨入り)、そして片牙からは、丸盾であった。


「あ、意外に良さそうな盾だお」

「高田の盾変えるか?」

「そうするお、タカシくん、良いかな?」


 うちのパーティには丸盾使いはいない。

 チアキもバックラーまでだな。

 俺はスキルの関係でバックラー系オンリーだ、というか『浦波』があるから交換はなさそうだ。


「良いよ、高田君使いなよ」

「やったおんっ、『Dリンクス』と一緒だとドロップが派手で楽しいお」

「よし、オーク帽もかぶれ」

「それはいやだお、霧積くん」


『『片牙の盾』じゃな、【重量軽減】と【盾術補助】が付いておる、良い物じゃな』

『おお、【盾術補助】は良いねえ』


 余さんは物知りだなあ。

 盾術補助というのは、【盾術】が無くても【盾術Lv.1】程度の補助が付く物だ。

 浅い階では破格のアイテムだな。


「盾術苦手だったから助かるお」

「というか、もっと盾使え、【手斧】だけじゃなく」

「すぐ忘れてしまうお」


 さて、鏡子ねえさんに食べられないうちにオークハムと貯金箱を回収した。

 オーク帽かあ。

 赤いニット帽で、豚さんの耳がついているちょっとカワイイ帽子だ。

 寒くなったら良いかもな。


「オークセーターと合わせるとクリスマスカラーだわ」

「運営は遊んでいるよね」


 さて、オークたちを撃破したので、まっすぐ進んで十六階への下り階段だ。


「げげげ、ムカデ部屋が近づいてくる」

「いやっすねえー」

「いやだわー」


 諦めるんだ、女子達。


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