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第160話 十四階、十三階、十二階と帰っていく

 魔物を狩り、最短コースを取って階層を上がっていく。

 行きよりも帰りの方が道のりが短く感じるのは何故なんだろうな。

 やはり初見の階層は緊張するからだろうか。


 俺は毎日同じ階層を狩りで回っていたから解るが、道に慣れきるとほとんど距離を感じない、ただ敵の出現だけを警戒して進む事ができるようになる。

 距離の感覚は不思議だな。


 十四階で、オークの群れが出たので戦闘となる。

 この階は『オーバーザレインボー』が先行だったから主に彼らが戦い、『Dリンクス』はサポートに回る。

 危なげなく仕留めて魔力の霧を吸い込み、ドロップ品を拾う。

 また、オークハムと高級豚ブロックが出た。

 良く食糧が出るな。


 先ほどチアキが開けた宝箱は再ポップしていなかった。

 まあ、一日ぐらいは掛かるよな。


 リザードマンが出たが、みのりの【お休みの歌】と東海林の【睡眠】で眠らせてクリア。

 ドロップ品にトカゲバックが出た。

 トカゲ柄のお洒落なハンドバックだ。

 藍田さんが欲しいそうなので渡した。


 十三階の階段を上り、安全地帯で小休止をする。

 ナッツバーを囓って水筒の水を飲んだ。


「『オーバーザレインボー』の実力だと、まだ十四、十五の周回かな。リザードマンが美味しいな」

「そうだね、あまり深い所で周回より十四階で宝箱ポップ狙いも良いかもしれない」


 泥舟とチアキがムカデ鞭で遊んでいる。

 なんだか先っぽの足が動かせるらしく、地面の石とかを拾って手元に持ってくる競争をしていた。

 器用なもんだな。


「毒も任意で出せるかな?」

「あ、ここの足で出す出さないを決定できるみたいだよ」

「凝っている武器だね」

「人気無いのにね」


 低層で初心者がゴブリンとかスライムとかを倒す用に良いかもしれないな。

 先生方は魔銃で倒してばっかりだし。

 初心者向けの良い武器とかないかな。

 あとで通販カタログで見てみるか。


「『Dリンクス』はすぐに二十階フロアボスに行くのかい」

「おうよ、三十階、四十階まではすぐ行けそうだし」


 東海林との会話に鏡子ねえさんが割り込んで来た。


「今度の土曜日にアタックするつもりだ」

「鏡子さんが強いし、タカシも強いからね、先に進んだ方がいいか」

「『オーバーザレインボー』もすぐにこられるさ」

「高田も良い盾取れたし、そのうち霧積の魔剣も戻ってくるだろ、すぐだ」


 そう言って鏡子ねえさんはわははと笑った。


 後醍醐先輩の『迷宮ぶっ潰し隊』が二十階越えだが、なかなか苦戦をしているそうだ。

 四十階から五十階あたりになるとフロアボスアタックに一泊二日ほど掛かるらしい。

 このあたりまでがアマチュア配信冒険者の限界と言われている。

 五十階を越えると迷宮ガチ勢と言われるプロの領域だ。

 成人パーティが増えて、装備や編成なんかも隙が無くなってプロっぽくなるんだよな。


 『Dリンクス』はどこまで行けるかな。

 なんとか百階のサッチャンを越えて、百五十階の魔王様を倒して、異世界のかーちゃんが転生した女の子と会いたいけどなあ。


 まあ、真面目にやっていけば、なんとかなるかもしれない。

 頑張ろぅ。


「さて、行くよ」

「おう」

「はい」

「行こう」

「わかったー」


 『Dリンクス』が立ち上がると『オーバーザレインボー』も立ち上がる。

 十三階は『Dリンクス』が先頭だ。

 複数パーティレイドもなかなか楽しいな。


 帰りはだんだん敵も弱くなっていくからどんどん楽になっていくな。

 十三階はコボルトの群れが二回来た。

 同じ種類がかぶるのは珍しい。

 ドロップの銀塊が嬉しい、高く売れるからね。

 コボルトハンバーガーも出て鏡子ねえさんが食べていた。


 階段を上がって、十二階だ。

 先頭を『オーバーザレインボー』に替わってもらう。

 オーガーとオークの混成が出て、難なく倒す。

 ジャイアントバットの群れをチアキが銃撃で落とした、だんだん当たるようになってきたな。

 両方のパーティとも純遠距離のジョブは居ないから、高田君の投げ斧とチアキの魔銃、樹里さんの短弓、東海林の魔法がたよりだ。

 まあ、飛行敵は最悪【ぐるぐるの歌】で落とせるから楽だけど。


 ジャイアントバットからこうもり傘が出た、霧積が欲しがったので渡した。

 良い傘なので雨の日に便利なんだよね。


 階段を上がり十一階の安全地帯で小休止。

 ここまで来れば十階のポータルまでは目と鼻の先な感じだ。

 帰って来たぞ、という感じがするね。


『安定してんなあ、二パーティの連携が滑らかだな』

『遠距離欲しいな、『射手アーチャー』居ると楽だぜ』

『まあ高校生にしては良いバランスのパーティだよ、両方とも』

『最近高校生パーティをあちこち見てるけど、危なっかしいんだよなあ、全員戦士とか、おまえら死ぬ気かと見ていて突っ込む』

『やっぱ高校生とか中学生とかだと、不良とか気の荒い奴がDチューバーになるから、戦士多いんだよな、東海林の所が珍しい、女子『盗賊シーフ』とかレアすぎ』


 Dチューバー始める奴は、とりあえず戦士なんだよなあ。

 魔法使いとかは呪文スペルを用意するのが難しいし。

 泥舟も魔法使いになれるだけのステータスは揃ったんだけど、槍がもったいなくて困る。

 僧侶が増えないと、未成年パーティの死傷率が高くて怖いよな。

 難しい所だ。

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