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第161話 ロビーであの人と再会する

 先頭をまた『Dリンクス』が受け持ち十一階を歩いて行く。

 アタックドックとか、オーク、ゴブリンリーダーなどが出る。

 まあ、鏡子ねえさんと俺で瞬殺である。

 ドロップもなかなか良い。

 ゴブリンリーダーから、ゴブリンカレーゴールドが出た。

 ちょっと良いゴブリンカレーだ。


 上り階段に着いた、ここを上がるとポータルの間である。

 そのまま上ってポータルに触りロビーへと転移する。


 よし、良い狩りだったな。


「おつかれ新宮」

「おつかれさま、東海林」

「いやー、怖かったっす」

「でもオーブクリア出来て良かった」

「やっぱり鏡子さんはたよりになるお」

「【剣術】が生えると、タカシのすごさが解るな」

「ありがとう、霧積」


 口々に今日の感想を言い合った。

 そろそろ夕方なのでポータルで続々とパーティが帰ってくる。

 戦利品の分配があるので、ロビーのソファーに座って、収納袋からドロップ品を出してチェックする。


「高級豚肉ブロックはお持ち帰りだな、結構出たけど」

「今日は私の家でトンカツパーティだよ、みんなも来ない?」

「いいのかお?」

「もちろんっ」

『かまわないわよ、高田くん、『オーバーザレインボー』のみんなにも会いたいわ』

「ママもこう言ってるし」

「ありがたい、寄らせてもらいます」


 東海林が笑顔で言った。

 よし、レイド記念で峰屋邸でトンカツパーティだな。


「オークハムとか、日持ちしない食糧は食べたい人が持って帰ってくれ」

「お土産にいただくお」

「わたしもくださいー」


 みんなに食料品を分配した、ハムとかおせんべいとかは保つからね。


「ええと、高田君が『片牙の盾』を貰って、藍田さんが『トカゲバック』だね、鏡子さんが『トカゲボディスーツ』、東海林くんが【睡眠】の呪文スペルと」


 泥舟がノートにそれぞれの欲しい戦利品を書いてスマホから値段を調べて引いていく、換金所値段が基本だな。


「ムカデ鞭は欲しい人は?」

「はいはーい、二本とも欲しいっ」

「いや、チアキは魔銃あるからいいだろ」

「鍵開けに使えそうだし、何かの役に立ちそう」

「そうか」

「チアキちゃんが『ムカデ鞭』を二本と」


 ドロップ品はよほど珍しい物じゃないかぎり誤差みたいな物だから欲しい人で分配だ。

 お金は魔石換金で手に入るしね。


「しかし収納袋があると儲かるね、『Dリンクス』の出方だと、半分捨てて行く所を全部持って帰れるからね」

「収納袋さまさまだ」


 それぞれ欲しい物をゲットしたので、換金窓口に並び、魔石と不要な装備、食料品の余りを売り払った。


 一人頭六万弱ぐらいとなった。

 十階越えると結構なお金になるな。

 受付のお姉さんに言って、それぞれの口座に入金してもらった。


「すごい儲かったなあ、これに配信料が入るから、もう普通に暮らしていけるね」

「学校は出ておかないとな」

「そうだね、でも退学してプロになってる生徒も多いっていうね」


 まあ、みのりの【豪運】のお陰もあるだろうな。

 平均的なパーティの場合、十一階から二十階までの狩りだと、一人三~四万ぐらいが普通っぽい。

 十階を越すとバイトより儲かるという事だ。

 その分、命は落としやすいのだけれどね。


 三十階のポータルが光り、パーティが出て来た。

 その中の一人と目が合った。


「あら、タカシくん」

「りっちょん……」


 りっちょんはニヤっと笑ってこちらに歩いてくる。

 両目も両手も揃って……、片手は銀色だった。


「今日から復帰したのよ、この前は迷惑を掛けたわね」


 にんまりとりっちょんは笑った。

 他のパーティメンバーは全員外人だった。


「オー、タカシさんっ」

「ミハエル、りっちょんはミハエルのパーティに入ったのか」

「そうでーす、バードをやってもらってまーす」


 大柄な出稼ぎロシア人の配信冒険者はにっこりと笑った。


「バードを始めたんだ、よかったね」

「……、良く無いわ」


 りっちょんは銀色の手でみのりを指さした。

 動かす時にウィーンと作動音のような物が聞こえた。

 機械式の義手なのか。


「本当は私が二番目の『吟遊詩人』バードになるはずだったのに、盗られてしまったわ。レアスキルも、レア楽譜スコアも、全部っ、泥棒されたわっ」

「えー……」


 みのりがあからさまに困ったという顔をした。

 みんなドン引きである。


「絶対にゆるさないわ、タカシくんの隣にいるべきは、私なのよ、必ずDアイドルの頂点に立って、あなたを蹴落としてやるから、覚悟しておきなさいっ」

「は、はあ……」

「タカシのリボンちゃんを攻撃して自滅した奴が何を言ってるんだよ」


 泥舟が鋭く言った。


「なによ、あんたなんか、タカシくんのお情けでパーティに入れてもらってくるくせに、分際をわきまえなさいよっ!!」


 こいつ、ふざけんなよっ。

 と、思って俺が立ち上がろうとしたら、ミハエルが前にでてりっちょんを止めた。


「リツコ、やめなさーい、騒ぎを起こしてはいけませーん」

「……、は、はい、ミハエル……」

「ごめんなさいね、タカシ、リツコはサイボーグ手術の影響でこころが、不安定なのでーす。ゆるしてあげてもらえるとうれしいでーす」

「サイボーグ手術?」

「はい、リツコの右腕はロシアが誇るハイテクのサイボーグ義手でーす、サイボーグ『吟遊詩人』バードとして、ビーイングプロモーションで売り出すのでーす。わが『ウラジの嵐』はリツコを応援するのでーす」


 ビーイングプロモーションはまだつぶれて無かったのか。


 ミハエルたちは一礼して去っていった。


 『ウラジの嵐』は六人パーティだった。

 『吟遊詩人』バードのりっちょん、『重戦士』のミハエル、あと『魔法使い』の女性、『軽戦士』の男性、『僧侶』の男性、『盗賊』の男性と、バランスは良いな。


『おおおお、りっちょん復帰だ!』

『いきなりみのりんに喧嘩売ってきた! タカシをめぐって熱い女の戦いが』

『ぶわははははっ、ライブラリ漁ったのだが、今日の復帰戦、りっちょん、腕からレーザー出してハイオーガーと戦っておるで』

『ええ、戦闘レーザーっておまっ、アルゴンガスレーザー砲か?』

『サイボーグりっちょん!! 義眼も情報衛星とリンクして色々ハックするのか?』

『ゴクウとは懐かしい、というか爺しか見て無いのかここ』

『ふむ、ロシアの科学力とな、不穏な雰囲気じゃな』


「なんだか感じ悪いね、タカシ」

「そうだな、でもまあ、復帰出来て良かったな」

「タカシは甘いよなあ」

「喧嘩売られたよ~、コワイ」

「大丈夫だよ、みのりねえちゃんの方が綺麗だしっ!」


 高出力レーザー砲……、ロシア政府が後ろに付いてるのか?

 ミハエルは、まさか、諜報系の男なのか……。

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