働いているガーゴイルさんたちに一礼して安全地帯を出て歩き出す。
十六階はセンチネルセンチピードの間があるがそっちの方には行かずにまっすぐに進む。
にょろにょろとした気配と共に大ナメクジが二匹とガスクラウドが現れた。
ガスクラウドとはガス状の魔物で空中をふわふわと飛んで移動する。
「ねえさんはナメクジを、ガスクラウドは俺が」
ダキューン!
チアキの魔銃が火を吹きガスクラウドが少し震えた。
魔力弾だから効果ありか。
鏡子ねえさんは大ナメクジを殴り倒している。
泥舟は下がってみのりのカバーだ。
みのりは難しい顔でなにやら唱えた。
『我が友を襲う邪悪を焼き尽くせ ファイヤーボール!』
パシュッとみのりの手から火炎弾が発射されてガスクラウドに着弾爆発して奴は四散した。
さすが『
ねえさんも難なくナメクジを退治し終わった。
四散したガスクラウドから魔力霧が発生し、魔石とドロップ品が落ちた。
「枕出た」
「まくら?」
「すやすや枕って書いてある」
ビニール袋に包まれたそれは、枕だった。
ふわふわの新素材で出来た次世代の寝心地だそうだ。
……収納袋に入れておこう。
「枕あとでくれー」
「いいよ、新居の枕合わないの?」
「いや、なんか寝心地良さそうだから試す」
『枕出るのか』
『まあ、ここら辺で出るかさばる物は捨てて行くパーティ多いからな』
『リュックに入らないからなあ、枕か』
『布団とか出ないのか?』
『寝袋だったら、何かが出したはずじゃが』
『ハイマミーのレアだよ』
『ああ、マミー型に引っかけてあるのか』
なんでも入れるよな、迷宮のドロップ係。
大ナメクジからは岩塩とナメクジ兜が出た。
ネタ装備っぽいなあ。
べとべとしている。
かぶりたくないものだ。
先に進むとヴァーチャー二匹と遭遇した。
【ぐるぐるの歌】を掛ける間もなく、鏡子ねえさんがジャンプして蹴り落とし、チアキが連射して落とした。
飛行系は素早いけど脆いね。
チアキが当てるようになってきたので楽になった。
ドロップ品は焼き鳥パックが出た。
ねえさんとチアキが囓りながら歩く。
「うまいうまい」
「うまいうまい」
「チアキ、ねえさんに付き合っていると、太るぞ」
「げっ」
「大丈夫だ、死ぬほど走れば太らない」
「げ~~」
ほがらかに笑いながら十七階への階段に着いた。
階段を下りると、別パーティが休んでいた。
特に挨拶は交わさず通り過ぎようとした。
「『Dリンクス』はフロアボスか?」
「ああ、そうだよ」
「俺たちが先行だ、先を譲れ」
「あんたらもか、先に着いた方が先行だ、三十分ぐらい待て」
「ちっ」
目付きが暗い二十代の五人パーティだな。
戦士が二人、盗賊が一人、魔法使いと射手で五人だ。
俺たちは先に進んだ。
「チアキ気を付けろよ、襲ってくるかもしれない」
「たいした奴らじゃないよ、盗賊もあまり腕が良さそうじゃ無いし」
「用心は重要だ」
「そうだね」
これからはあのパーティと追い越したり追い越されたりして進む感じになるだろう。
だが、焦ると事故の元だ、慎重に行こう。
『今のは『グランドオーダー』セミプロ配信冒険者だな』
『あまりパッとしないパーティだな』
『悪い噂も良い噂も聞かないな、モブパーティだ』
ふむ、リスナー情報は為になるな。
【気配察知】を働かせる。
『グランドオーダー』が動きだしたな。
こちらに魔物を戦わせて露払いにして、二十階近くで追い越すつもりか。
まあ、バックアタック避けにはなるから良いが。
十七階を進む。
「前方、なんか居る」
「蛇?」
「蛇だな、四匹か、あ、タカシ、ナメクジバットを出してくれ、特効を試そう」
「はい、ねえさん」
「鏡子は鈍器スキルないだろ」
「振れば大丈夫だ」
まあ、そうだけどな。
俺は最後尾で『グランドオーダー』を警戒する。
向こうも止まったな。
「うりゃあああっ!!」
ナメクジバッドを振り上げて鏡子ねえさんがビックバイパーの群れに突っ込んでいった。
パカーン!
ナメクジバットはバイパーに当たり吹っ飛ばした。
なんだか、当たった部分からジュウジュウと煙を吐いて溶けている、のか?
バイパーがねえさんに向けて飛びかかり噛みつこうとしたが、蹴り上げられた。
ダキューン!
空中のバイパーをチアキが仕留めた。
その間にパンパンとねえさんがバットを振りバイパーの頭を吹き飛ばした。
「おー、蛇相手に良いなあ。ぬるぬるしてるけど」
ナメクジバットはバットという名前なんだが、なんだか、固体じゃなくて軟体っぽいんだよね。
イカみたいな感じの柔らかさだ。
だから振り回すと鞭みたいにしなる。
変な武器だ。
『ナメクジバットが使われるのを初めて見た』
『もとよりスラッグのレアドロップだから、あまり出ない』
『感触が気持ち悪いので、捨てる武器トップテンに入るからなあ』
蛇類は剣だと倒しにくいので意外に良いかもな。
打撃でも難しい。
うちは収納袋のお陰で何でも持って行けるから。
蛇が魔力に変わり、魔石がでてドロップ品が出た。
「うおー、蛇ガラボディスーツゲットだぜーっ!」
着替えが増えて何よりだ。
ボディスーツの洗濯はクリーニングに出さなきゃならないので大変らしい。
そしてスネークスティレットが出た。
カエル系特効かな。
スティレットというのは西洋の針短剣で、刃がついておらず、毒を貯める溝だけがある暗殺道具だ。
『スネークスティレットはトード系特効の毒を自動発生させて、一撃死が狙えるぞよ』
『カエルはあんま強いの居ないからなあ』
『剣効くしなあ』