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第173話 十八階、十九階を行く

 階段を下りて十八階だ。

 ここでもガーゴイルさんがトイレ工事をしているな。


 安全地帯で小休止だ。

 【気配察知】を働かせると、『グランドオーダー』は上の安全地帯で休んでいるようだ。

 これは盗賊が【気配察知】持ちだな。

 あと配信動画でこちらの動向を掴んでいるのだろう。


 ネームドモンスターがでたりして苦戦をしていたら、「助ける」と言って割り込んで来てそのまま後ろから斬り掛かるだろう。

 半グレが良くやる手だ。

 善良なパーティほど引っかかる。

 パーティを皆殺しにした後、敵モンスターを倒し、装備品を強奪する。

 六階から十階で何度も見たな。


 あと、俺たちはこの階詳しいから案内すると言って、罠の部屋に誘い込んで皆殺しにしたりする。

 迷宮で怖いのは魔物よりも他人のパーティなんだよな。


 一息ついたので立ち上がる。

 全員がオヤツのレジ袋を渡してきたので収納袋に入れた。

 手ぶらで動けるのは本当に助かる。

 大きいリュックをしょっていると疲れるし動きも悪くなるからね。


 チアキを前にしてゆっくりと進む。

 後ろを見ると『グランドオーダー』の白い光が見える。

 典型的な露払いだな。

 もっとも体は楽なんだが、狩りの魔石が入らないので採算は悪くなる。


 ゴブリンリーダとホブゴブリン三体と出くわす。

 二本足だとぐるぐる戦法が良く効く。

 難なく全滅させる。


『うしろの『グランドオーダー』は露払い行為だな。なんで苦戦しねえんだとか言ってるぞ』

『うっは、襲う気まんまんだな、問題行動を起こす系のパーティ?』

『まあ、そんなでもないな、真面目でも無く、不真面目でも無く、適当にこなしてる系が『暁』に眼がくらんだ感じだな』

『犯罪歴あれば逆襲できんのになあ』

『コメントあまり付かないから、チクられてるって解ってなさそう』

『地味パはなあ、コメントチェックしないんだよ、付かないから』

「いつも皆さんのコメントで助かっていますよ」

『『『『きにすんな』』』』


 うちのリスナーはみんな良い人だなあ。


 ドロップは魔石とゴブリンゴールデンカレー、ポーション、あと皮の胸当てが出た。

 あんまり品質は良くないな。

 収納袋に入れておこう。

 ポーションはありがたい。

 ハイポーションのドロップは二十階を越えてかららしい。


 この階の真ん中には暗黒領域ダークゾーンがある。

 光も通らない真っ暗な空間だ。


「どどど、どうするのこれ?」


 俺は収納袋からロープを取り出した。

 鏡子ねえさん、泥舟、チアキ、みのり、俺と繋いでいく。


「て、敵とかでない?」

「出る、が、向こうも条件は一緒だ。ジャイアントバットが出ると少し苦戦するが、まあ大丈夫だ」

「く、暗い中で戦うとか」

「私とタカシは【気配察知】があるからな、あと、私は武器の効果範囲が狭いから誤爆しにくい」

「いいなあ【気配察知】」

「チアキも早く覚えろ」

「やってる~~」


 ロープで繋がって電車ごっこみたいになって暗黒領域ダークゾーンに踏み込む。

 何匹か魔物の気配がするが、ねえさんの敵ではないだろう。


 ゆっくりと暗闇の中を分け行っていく。

 スマホも使えない真の闇だから道を間違えると大変だ。

 ねえさんの足取りに迷いは無い。

 迷わず魔物の気配がする所に行って、何かの首を折った。


「え、きゃ、何々?」

「ブウブウ」

「え、オークがいるのかしらっ」

「ブブウ」


 ゴキャッ!


 ハイオークとオークリーダーの群れだった。

 ねえさんがロープが届く範囲で関節技無双している。

 というか首を折ってるな。

 さすがは【拳闘士グラップラー】だ。


 全滅させたので少し立ち止まって経験値に変わるまで待つ。

 『グランドオーダー』は暗黒領域ダークゾーンの前で待ってるな。

 気配で魔石とオークハムを拾って収納袋に入れた。


「先はどっちだ?」

「突き当たりの壁を左」

「うむ」


 ねえさんが迷うと全員迷うからな。

 気配察知で壁は感じ取れるので、何とか移動できている。


 ぽんと暗黒領域ダークゾーンを抜けた。

 ライトが眩しく感じるな。


「あー、見えるって素晴らしい~~」

「怖かった」


 気配察知が無いとちょっと怖いかも知れないな。

 この階が暗黒領域ダークゾーンが初めて出る所で、これからはたまに出てくる。

 結構厄介なんだ。


暗黒領域ダークゾーンは怖いな』

『十八階から出始める。墓場階とか多くて抜けたと思ったらゾンビに襲われたりで怖いぞ』

『それは雰囲気があるな』


 全員のロープを外して前進する。

 『グランドオーダー』も暗黒領域ダークゾーンに入ったな。


 ちょっと歩くと下への階段があった。

 下りて行く。


 十九階だ。

 あと一階下りるとフロアボスのフィールドがある。

 もう少しだな。


 ビッグバイパーが出たのでねえさんにナメクジバットを渡す。

 後ろからオーガーが二匹バックアタックを仕掛けて来た。

 さらに、『グランドオーダー』が近寄ってくる。


「加勢するぞ!!」

「いらない、近づいたら殺す」

「ば、何をっ」


 ドキューン!!


 チアキが魔銃を『グランドオーダー』のリーダーの足に当てた。


「ぎゃっ!!」


 オーガーの注意が『グランドオーダー』の方に向いた。


「ちくしょうっ!! てめえっ!! 親切でっ!!」

「親切ならそのオーガーを倒してくれよ」

「て、手を貸せっ!!」

「乱闘中に斬られるからいやだ」


『グランドオーダー』は必死になってオーガーを倒した。

 リーダーはカエル軟膏で足の傷を治療している。


「てめえ、そこのチビが俺の足を撃ちやがった!! どうしてくれるんだ、おうっ!!」

「もう、うるせえっ!!」


 だだっと鏡子ねえさんが駈け寄ると『グランドオーダー』は恐怖の色を浮かべて逃げていった。


「解りやすいね、タカシ」

「逃げ足だけは速い」

「うー、人間が怖いね、一番」

「そうだよ、みのり」


 人が一番悪意があって怖いんだ。

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