階段を下りて十八階だ。
ここでもガーゴイルさんがトイレ工事をしているな。
安全地帯で小休止だ。
【気配察知】を働かせると、『グランドオーダー』は上の安全地帯で休んでいるようだ。
これは盗賊が【気配察知】持ちだな。
あと配信動画でこちらの動向を掴んでいるのだろう。
ネームドモンスターがでたりして苦戦をしていたら、「助ける」と言って割り込んで来てそのまま後ろから斬り掛かるだろう。
半グレが良くやる手だ。
善良なパーティほど引っかかる。
パーティを皆殺しにした後、敵モンスターを倒し、装備品を強奪する。
六階から十階で何度も見たな。
あと、俺たちはこの階詳しいから案内すると言って、罠の部屋に誘い込んで皆殺しにしたりする。
迷宮で怖いのは魔物よりも他人のパーティなんだよな。
一息ついたので立ち上がる。
全員がオヤツのレジ袋を渡してきたので収納袋に入れた。
手ぶらで動けるのは本当に助かる。
大きいリュックをしょっていると疲れるし動きも悪くなるからね。
チアキを前にしてゆっくりと進む。
後ろを見ると『グランドオーダー』の白い光が見える。
典型的な露払いだな。
もっとも体は楽なんだが、狩りの魔石が入らないので採算は悪くなる。
ゴブリンリーダとホブゴブリン三体と出くわす。
二本足だとぐるぐる戦法が良く効く。
難なく全滅させる。
『うしろの『グランドオーダー』は露払い行為だな。なんで苦戦しねえんだとか言ってるぞ』
『うっは、襲う気まんまんだな、問題行動を起こす系のパーティ?』
『まあ、そんなでもないな、真面目でも無く、不真面目でも無く、適当にこなしてる系が『暁』に眼がくらんだ感じだな』
『犯罪歴あれば逆襲できんのになあ』
『コメントあまり付かないから、チクられてるって解ってなさそう』
『地味パはなあ、コメントチェックしないんだよ、付かないから』
「いつも皆さんのコメントで助かっていますよ」
『『『『きにすんな』』』』
うちのリスナーはみんな良い人だなあ。
ドロップは魔石とゴブリンゴールデンカレー、ポーション、あと皮の胸当てが出た。
あんまり品質は良くないな。
収納袋に入れておこう。
ポーションはありがたい。
ハイポーションのドロップは二十階を越えてかららしい。
この階の真ん中には
光も通らない真っ暗な空間だ。
「どどど、どうするのこれ?」
俺は収納袋からロープを取り出した。
鏡子ねえさん、泥舟、チアキ、みのり、俺と繋いでいく。
「て、敵とかでない?」
「出る、が、向こうも条件は一緒だ。ジャイアントバットが出ると少し苦戦するが、まあ大丈夫だ」
「く、暗い中で戦うとか」
「私とタカシは【気配察知】があるからな、あと、私は武器の効果範囲が狭いから誤爆しにくい」
「いいなあ【気配察知】」
「チアキも早く覚えろ」
「やってる~~」
ロープで繋がって電車ごっこみたいになって
何匹か魔物の気配がするが、ねえさんの敵ではないだろう。
ゆっくりと暗闇の中を分け行っていく。
スマホも使えない真の闇だから道を間違えると大変だ。
ねえさんの足取りに迷いは無い。
迷わず魔物の気配がする所に行って、何かの首を折った。
「え、きゃ、何々?」
「ブウブウ」
「え、オークがいるのかしらっ」
「ブブウ」
ゴキャッ!
ハイオークとオークリーダーの群れだった。
ねえさんがロープが届く範囲で関節技無双している。
というか首を折ってるな。
さすがは【
全滅させたので少し立ち止まって経験値に変わるまで待つ。
『グランドオーダー』は
気配で魔石とオークハムを拾って収納袋に入れた。
「先はどっちだ?」
「突き当たりの壁を左」
「うむ」
ねえさんが迷うと全員迷うからな。
気配察知で壁は感じ取れるので、何とか移動できている。
ぽんと
ライトが眩しく感じるな。
「あー、見えるって素晴らしい~~」
「怖かった」
気配察知が無いとちょっと怖いかも知れないな。
この階が
結構厄介なんだ。
『
『十八階から出始める。墓場階とか多くて抜けたと思ったらゾンビに襲われたりで怖いぞ』
『それは雰囲気があるな』
全員のロープを外して前進する。
『グランドオーダー』も
ちょっと歩くと下への階段があった。
下りて行く。
十九階だ。
あと一階下りるとフロアボスのフィールドがある。
もう少しだな。
ビッグバイパーが出たのでねえさんにナメクジバットを渡す。
後ろからオーガーが二匹バックアタックを仕掛けて来た。
さらに、『グランドオーダー』が近寄ってくる。
「加勢するぞ!!」
「いらない、近づいたら殺す」
「ば、何をっ」
ドキューン!!
チアキが魔銃を『グランドオーダー』のリーダーの足に当てた。
「ぎゃっ!!」
オーガーの注意が『グランドオーダー』の方に向いた。
「ちくしょうっ!! てめえっ!! 親切でっ!!」
「親切ならそのオーガーを倒してくれよ」
「て、手を貸せっ!!」
「乱闘中に斬られるからいやだ」
『グランドオーダー』は必死になってオーガーを倒した。
リーダーはカエル軟膏で足の傷を治療している。
「てめえ、そこのチビが俺の足を撃ちやがった!! どうしてくれるんだ、おうっ!!」
「もう、うるせえっ!!」
だだっと鏡子ねえさんが駈け寄ると『グランドオーダー』は恐怖の色を浮かべて逃げていった。
「解りやすいね、タカシ」
「逃げ足だけは速い」
「うー、人間が怖いね、一番」
「そうだよ、みのり」
人が一番悪意があって怖いんだ。