さて、放課後は当然のように川崎迷宮である。
ここ最近は、『Dリンクス』の狩りと先生方の付き添いとを一日おきにやっているな。
今日はDリンクスと東海林は電車、先生方は車で移動してきた。
『
みのりはマリアさんと歌と踊りのレッスン、鏡子ねえさんはその護衛だ。
地獄門の前に行くと、先生方が待っていた。
「今日もよろしく頼むよ」
「はい、お任せください」
みんなで地獄門をくぐる。
いつものように微かな硫黄の匂い、そして外と一度ぐらい低い温度で、迷宮に入ったな、という感じがする。
「あら、どこに行くのタカシくん」
「売店でちょっと買い物を」
「おや、何をかうのだい?」
望月先生が聞いて来た。
先生は
腰に沢山の試験管をぶら下げている。
錬金薬らしい。
これで望月先生は攻撃するのだ。
「先生もローブを買いましょうよ、ちょっとだけだけど耐久力が違いますよ」
「いやあ、悪くてねえ」
「良いんですよ望月先生、装備をケチってはいけませんわよ」
「そうそう、私なんかは、盾に剣と良い物を買いましたから、あなたも買いましょうよ」
「そうですかー、ちょっと見てみるかなあ」
ぞろぞろとみんなで売店に入る。
「いらっしゃいませー、あらタカシさん、今日はなんでしょう」
「魔石アイロンってある?」
「ええ、ありますよ、一万五千円ですけれど」
む、結構するなあ。
「買っちゃえ買っちゃえ、タカシ兄ちゃん」
「じゃあ一つください」
「ありがとうございます。付属にゴブリンの魔石が付いてますので、それを入れると、連続で三日ぐらい使えますよ」
「それ、そうとう長くつかえませんか?」
「ええ、普通に使っていたら三ヶ月とか持ちますよ」
魔石製品は便利だなあ。
車なんかも魔石車が増えて、魔石家電なんかも出ているので電気の消費量が減っているそうだ。
そのお陰でガスや石油の消費も下がって、ガソリンなんかも値下がりしている。
売店のお姉さんがクラシカルな形のアイロンを出して来た。
戦前とかの炭火を入れるブリキアイロンみたいだな。
一応レバーが付いていて温度調節もできるようだ。
Dカードを渡して支払った。
「錬金術師用のローブはありますか?」
「はい、望月先生、こちらになります、迷宮産なのでサイズは自動調節されます。お値段は一万円となります」
真っ白で綺麗なローブだな。
これ以上の防御力のローブはレア物になるので、価格が三百万を越える。
魔術師、錬金術師の選択肢は少ないんだよね。
「では『臨海第三ティーチャーズ』のカードで」
「いや、宮川先生、ここは私が個人で」
「いやいや、望月先生、それは言わない約束ですよ」
「なんか悪いですねえ」
望月先生はローブを上に着込んだ。
なかなか良い感じだね。
ロビーのソファーに座って、俺のブレストプレートに『Dリンクス』のマークを圧着した。
「うわ、曲がった」
「貸してください、タカシさん、まだ動かせます」
マリちゃんに魔石アイロンをひったくられて位置調整された。
さすがは『
「あー、マークワッペンいいねえ」
「格好いいな」
「マリねえちゃん私のも付けて付けて」
「はい、チアキちゃん、ブレストプレートをくださいね」
「僕も胴丸につけようかな」
「陣笠に付ければ?」
「うーん、どっちかな」
「あー、いいなあ、『オーバーザレインボー』のワッペンも作りたい」
「今度、『臨海第三ティーチャーズ』と『オーバーザレインボー』のワッペンのデザインしてきますから、見て下さいよ」
「ええ、良いのかい方喰くん」
「それはうれしいよ、方喰さん」
結局、チアキは俺と一緒の左胸、泥舟は胴丸の上の方に付けてもらった。
「すごい、格好いい!」
「いやあ、良いなあ」
うん、マリちゃんに付けてもらって良かった。
俺ではなんか曲がって付くからね。
「なんだか、私なんかのイラストでこんなに喜んで貰えて、すごく嬉しいですよ」
「何を言ってるんだ、凄い才能だから誇らなきゃだめだよ」
「そうですかあ」
マリちゃんは幸せそうに笑った。
さて、今日は鉄砲組の泥舟とチアキが五階で特訓なので、魔拳銃をチアキに、魔長銃を泥舟に渡した。
あとチアキとマリちゃんにムカデ鞭を渡す、竹宮先生には弓だ。
宮川先生に預かっていた剣と盾、あと防具を渡す。
「それじゃ、行ってきます」
「俺たちは四階に居るから、何かあったら電話してくれ」
「わかった、半グレ来るかな?」
「鉄砲装備はレアだからなあ、来そうな感じはする」
「悪い奴来たら隠れよう、泥舟兄ちゃん、【気配消し】とか【隠密】の練習だよ」
「そうだな、【気配消し】は欲しいね」
「私は早く【気配察知】を生やさないと」
やっぱりチアキはしっかりしてるな。
二人は仲の良い兄妹のように階段を降りていった。
「私の今日の目標は、錬金薬での戦闘の練習ですね」
「私は剣戦闘だな」
「私は弓をもう少し当てないと」
俺と東海林は何かあった時にヘルプをしよう。
でもまあ、先生方も慣れて来たので危なげはないね。
さて、一狩り行こうか。