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第180話 迷宮売店で魔石アイロンを買う

 さて、放課後は当然のように川崎迷宮である。

 ここ最近は、『Dリンクス』の狩りと先生方の付き添いとを一日おきにやっているな。

 今日はDリンクスと東海林は電車、先生方は車で移動してきた。

 『創作者クリエイター』のマリちゃんも一緒である。

 みのりはマリアさんと歌と踊りのレッスン、鏡子ねえさんはその護衛だ。


 地獄門の前に行くと、先生方が待っていた。


「今日もよろしく頼むよ」

「はい、お任せください」


 みんなで地獄門をくぐる。

 いつものように微かな硫黄の匂い、そして外と一度ぐらい低い温度で、迷宮に入ったな、という感じがする。


「あら、どこに行くのタカシくん」

「売店でちょっと買い物を」

「おや、何をかうのだい?」


 望月先生が聞いて来た。

 先生は錬金術師アルケミストに転職したので、ローブしか着ることができなくなったので、今の所は白衣だ。

 腰に沢山の試験管をぶら下げている。

 錬金薬らしい。

 これで望月先生は攻撃するのだ。


「先生もローブを買いましょうよ、ちょっとだけだけど耐久力が違いますよ」

「いやあ、悪くてねえ」

「良いんですよ望月先生、装備をケチってはいけませんわよ」

「そうそう、私なんかは、盾に剣と良い物を買いましたから、あなたも買いましょうよ」

「そうですかー、ちょっと見てみるかなあ」


 ぞろぞろとみんなで売店に入る。


「いらっしゃいませー、あらタカシさん、今日はなんでしょう」

「魔石アイロンってある?」

「ええ、ありますよ、一万五千円ですけれど」


 む、結構するなあ。


「買っちゃえ買っちゃえ、タカシ兄ちゃん」

「じゃあ一つください」

「ありがとうございます。付属にゴブリンの魔石が付いてますので、それを入れると、連続で三日ぐらい使えますよ」

「それ、そうとう長くつかえませんか?」

「ええ、普通に使っていたら三ヶ月とか持ちますよ」


 魔石製品は便利だなあ。

 車なんかも魔石車が増えて、魔石家電なんかも出ているので電気の消費量が減っているそうだ。

 そのお陰でガスや石油の消費も下がって、ガソリンなんかも値下がりしている。


 売店のお姉さんがクラシカルな形のアイロンを出して来た。

 戦前とかの炭火を入れるブリキアイロンみたいだな。

 一応レバーが付いていて温度調節もできるようだ。

 Dカードを渡して支払った。


「錬金術師用のローブはありますか?」

「はい、望月先生、こちらになります、迷宮産なのでサイズは自動調節されます。お値段は一万円となります」


 真っ白で綺麗なローブだな。

 これ以上の防御力のローブはレア物になるので、価格が三百万を越える。

 魔術師、錬金術師の選択肢は少ないんだよね。


「では『臨海第三ティーチャーズ』のカードで」

「いや、宮川先生、ここは私が個人で」

「いやいや、望月先生、それは言わない約束ですよ」

「なんか悪いですねえ」


 望月先生はローブを上に着込んだ。

 なかなか良い感じだね。


 ロビーのソファーに座って、俺のブレストプレートに『Dリンクス』のマークを圧着した。


「うわ、曲がった」

「貸してください、タカシさん、まだ動かせます」


 マリちゃんに魔石アイロンをひったくられて位置調整された。

 さすがは『創作者クリエイター』きっちりと位置取りしてくれた。


「あー、マークワッペンいいねえ」

「格好いいな」

「マリねえちゃん私のも付けて付けて」

「はい、チアキちゃん、ブレストプレートをくださいね」

「僕も胴丸につけようかな」

「陣笠に付ければ?」

「うーん、どっちかな」

「あー、いいなあ、『オーバーザレインボー』のワッペンも作りたい」

「今度、『臨海第三ティーチャーズ』と『オーバーザレインボー』のワッペンのデザインしてきますから、見て下さいよ」

「ええ、良いのかい方喰くん」

「それはうれしいよ、方喰さん」


 結局、チアキは俺と一緒の左胸、泥舟は胴丸の上の方に付けてもらった。


「すごい、格好いい!」

「いやあ、良いなあ」


 うん、マリちゃんに付けてもらって良かった。

 俺ではなんか曲がって付くからね。


「なんだか、私なんかのイラストでこんなに喜んで貰えて、すごく嬉しいですよ」

「何を言ってるんだ、凄い才能だから誇らなきゃだめだよ」

「そうですかあ」


 マリちゃんは幸せそうに笑った。


 さて、今日は鉄砲組の泥舟とチアキが五階で特訓なので、魔拳銃をチアキに、魔長銃を泥舟に渡した。

 あとチアキとマリちゃんにムカデ鞭を渡す、竹宮先生には弓だ。

 宮川先生に預かっていた剣と盾、あと防具を渡す。


「それじゃ、行ってきます」

「俺たちは四階に居るから、何かあったら電話してくれ」

「わかった、半グレ来るかな?」

「鉄砲装備はレアだからなあ、来そうな感じはする」

「悪い奴来たら隠れよう、泥舟兄ちゃん、【気配消し】とか【隠密】の練習だよ」

「そうだな、【気配消し】は欲しいね」

「私は早く【気配察知】を生やさないと」


 やっぱりチアキはしっかりしてるな。

 二人は仲の良い兄妹のように階段を降りていった。


「私の今日の目標は、錬金薬での戦闘の練習ですね」

「私は剣戦闘だな」

「私は弓をもう少し当てないと」


 俺と東海林は何かあった時にヘルプをしよう。

 でもまあ、先生方も慣れて来たので危なげはないね。


 さて、一狩り行こうか。

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