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第182回 ほのぼのと先生達の狩りは続く

 四階を歩き回って狩りをする。

 なんとなく初心者が増えている感じもするな。


「ダンジョンブームがまた来たのかな」


 迷宮に来る配信冒険者の数は増減する、派手な事件や派手な成果があると初心者が増えるし、あまり動きが無いと初心者は減る。


「いや『Dリンクス』のせいだろう、新宮は何を言っている」

「うちのせいか?」


 それは思い至らなかった。

 やっぱりどかどかドロップ品を出すからだろうか。


「そうだよ、新宮くん、レアスキルを取ったり、世界で二人目の『吟遊詩人バード』を誕生させたり、凄い罪獣を倒して迷宮を守ったり、世界一のマイケル氏を倒したりで、みんなが『Dリンクス』を注目しているんだよ」

「そうですよ、タカシさん」


 そうなのか、実感が無かったなあ。

 俺たちに影響されてDチューバーを始めているのか。


『タカシは自己評価が低いなあ』

『超偉業を何度も起こしてるのに』

『もっとイキッてもええんやで』


 なんだか照れくさくて嬉しいな。

 そうかそうか。


 五階行き階段の安全地帯で休憩を取る。

 俺たちは戦って無いからあまり疲れていないけど、鉄砲が無い分、先生達はキツかったようだ。

 望月先生の錬金薬も使いやすい冷凍瓶はすぐ無くなっちゃったしね。

 マリちゃんのサポートの鞭が良い感じに働いている。


「爆弾瓶と毒ガス瓶はとっておきにしておいて、平時使える瓶や薬液を増やすべきですね」

「そうだねえ」


 望月先生はナボナを食べながら首を振った。


「竹宮先生は当たるようになってきましたね、良い事です」

「だんだん解ってきたわ」

「宮川先生も安定してきて良いですね、このまま行きましょう」

「戦士になるとこんなに違うのだなあ、おどろいた」


 宮川先生は先日『戦士』ウォーリアにジョブチェンジした。

 全体的に動きが良くなって、盾にも慣れてきたね。


「これで竹宮先生が僧侶になれたら安定するかな?」

「そうですね、生徒を入れて育成する目的なら、『戦士ウォーリア』と『僧侶プリースト』は良い選択かもしれません、望月先生も力を上げる薬とか、動きをよくする薬とかでサポートする物を開発すると良いかもしれませんね」

「バフデバフ薬は迷宮の素材が要るんだよねえ、作ってはみたいんだけど」

「『Dリンクス』が到達したまでの階の素材なら取ってきますよ」

「そうかい、ありがたいねえ」


 望月先生は笑った。

 東海林も気になった所を話はじめた。

 俺はDスマホを出して、泥舟とチアキのライブ配信を見る。


 お、二人とも頑張ってるね。

 森の中に隠れてゴブリン三体の群れに接近中だ。

 匍匐でじわじわ近づいているな。


 十分近づいた所で、チアキが拳銃を三連射してゴブリンの頭に当てた。

 泥舟もゴブリンにヘッドショット。

 生き残ったゴブリンがキョロキョロと泥舟達を探す。

 そこへチアキがまた三連射した。

 三匹のゴブリンが倒れて、泥舟とチアキは笑ってお互いの拳を打ち合わせた。


 おお、なんだか鉄砲組らしい戦い方だなあ。

 やっぱり長銃の方が拳銃の倍ぐらいの威力があるね。


 二人は立ち上がって、森の中を歩き始めた。


「お二人も頑張ってますねえ」


 気が付くとマリちゃんがスマホをのぞき込んでいた。

 おっと、顔が近いよ。


「鉄砲の戦い方を色々やってるみたいだね」


 泥舟は森の木の上に登って枝の上で伏せた。

 狙撃をするっぽい。

 チアキもするすると枝を登る。

 遠くの一匹オークを狙って、発射!

 おっと、弾丸が肩に当たってオークが敵を探している。

 リロードして再発射、今度は頭に当たってオークが倒れた。


『長銃いいね、距離が凄い届くね』


 動画の中のチアキが言った。


『次は交換してやってみよう』

『いいねっ』


 次はチアキが長銃、泥舟が拳銃だ。


「なかなか楽しそうだな」

「そうですねえ、いいですねえ」


 十五分のタイマーがピッと鳴った。

 休憩はお終いである。


「さあ、狩りを続けましょう」

「いこうか」

「ですね」

「もうひと頑張りしましょう」


 空が暗くなってきた、そろそろ夕暮れかな。

 あと一回戦闘したら泥舟達を呼んでロビーに戻ろう。


 角兎が三匹出た。

 先生方はサクサクと倒せた。

 マリちゃんがレベルアップ、三レベルとなったね。


 泥舟達を電話で呼んで、ロビーへと帰還する。

 魔石を換金して、次は悪魔神殿へ。


 今日の悪魔神父さんは、ゴーゴンさまであった。


「あら、タケミヤ、レベルアップしたわね、おいでおいで」

「はい、ゴーゴンさま」


 竹宮先生は神殿の手伝いをしているので悪魔神父さんたちとも仲が良いな。


 ゴーゴンさまはヘビの頭をくねらせながら竹宮先生の体に触った。


「うん、丁度、『僧侶プリースト』にジョブチェンジ可能よ、頑張ったわねタケミヤ」

「ありがとうございますっ、みなさんのお陰ですっ」


 ゴーゴンさまは優しい目をして竹宮先生の下げた頭を撫でた。


「タケミヤが頑張ったからよ、良く信仰心をあげました、さあ、パネルのスイッチを押しなさい」


 ゴーゴン様の前には、『魔術師』『戦士』『射手』のパネルと共に、『僧侶』のパネルが開いた。


『おお、竹宮先生、僧侶プリーストかあ』

『毎日、神殿に居たからなあ』

『やっぱり神様を身近に感じると信仰心があがるんだろうなあ』

『おめでとう、竹宮先生』


 ビロリンとスパチャも投げられた。


 竹宮先生は僧侶のパネルのスイッチを押した。

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